【ぐるぐる反芻思考】ネガティブ思考が止まらない!精神科医が語る原因と今日からできるケア
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イチオシスト
ライター / 編集
イチオシ編集部 旬ニュース担当
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「なんであんなこと言ってしまったんだろう」「あの人に嫌われたかもしれない」「あの時ああしていれば…」――そんな後悔やネガティブな考えが頭の中を延々と回り続けてしまう“ぐるぐる反芻思考”。抜け出したいのに止まらないこの状態に、悩んでいる人は少なくありません。
いわゆる"考えすぎ"とは何が違うのでしょうか。反芻しやすい人にはどんな傾向があるのか、そしてそこから抜け出すには何が必要なのか。「精神科医のお悩み相談クリニック」院長・芳賀高浩先生に話を聞きました。
【動画】“思考のクセ”を把握しリスク回避!「円卓コンフィデンシャル」
画像:PIXTA
――“ぐるぐる反芻思考”とは、どのような状態を指すのでしょうか。
「普通の思考には、考えを広げ、反論を挟み、最後に自分なりの答えへ落とし込んでいく起承転結のような流れがあります。しかし“ぐるぐる反芻思考”の場合、同じ場所をループするように、同じ内容だけを繰り返し考え続けてしまいます。
たとえば上司に叱られた時、本来なら『叱られた→理由は何か→改善点→次はどうするか』と考えが進むはずですが、反芻思考の状態では考えの広がりや自己の反論もなく、同じ部分をぐるぐる回り続け、建設的な思考ができません。
いわゆる"考えすぎ"との違いは、考えを深掘りできているかどうかです。熟慮は横にも縦にも思考が展開しますが、反芻思考は深掘りも広がりもなく、浅いところをただ回り続ける。表面的には同じことを考えているようでも、内側で起きている思考の質は全く異なります」
――"ぐるぐる反芻思考"に陥りやすい人は?
「実は、人生のどの場面でもずっとぐるぐる考え続けている人はほとんどいません。反芻思考に陥るのは、精神エネルギーの容量が少ない時や、消耗が早い時。その人の特性というより、精神エネルギーの残量によって起こることが多く、メンタルのバッテリー不足ともいえます。
たとえば体調が悪い時は、誰でも反芻思考に陥りやすくなります。痛みや不快感があると、思考を整理する余裕が奪われ、自分の考えに反論することもできなくなり、思考がぐるぐる回り続けます。つまり、その人の資質よりも、その時の心のエネルギー状態が大きく影響していると考えられます」
――考えを反芻することは悪いことなのでしょうか?
「ものごとを深く考えること自体は、問題解決や学びにつながる場合もあります。しかし、“ぐるぐる反芻思考”は精神エネルギーが落ちている時に現れる一種の“症状”のようなものです。
大切なのは、"この状態が永遠に続くわけではない"と理解すること。心のエネルギーが回復すれば、同じテーマを考えていても自然と整理された思考や深みのある考えに変わっていきます。つまり、反芻してしまう自分を責める必要はなく、一時的な心の疲れやバッテリー不足のサインとして受け止めることが重要です」
――"ぐるぐる反芻思考"自体が心身に悪影響を及ぼすことはありますか?
「同じ考えを繰り返すうちに、突然極端な思考が浮かぶことがあります。たとえば、『あの人に叱られた→嫌われたかもしれない→自分には価値がない』というループの末に、『消えてしまいたい』『相手を消してしまえばいい』といった、本人も驚くような飛躍した考えが出てくることがあります。
これは、心の中で議論したり考えを整理したりする余裕が完全に失われている状態で、注意が必要です」
画像:PIXTA
――自己肯定感の低さと関係はありますか?
「自己肯定感が低いと、ほんの些細なことでも『自分はダメだ』『うまくできなかった』と思いがち。普通なら気にならないことにも過剰に引っかかってしまい、精神エネルギーがどんどん消耗されてしまいます。
反芻してしまうのは、性格や意思の問題ではなく、心のエネルギーの“燃費が悪くなっている状態”だから。自己肯定感を少しずつ高めることで、精神エネルギーの消耗を抑え、頭の中のループを減らし、考えを建設的に広げやすくなります」
――“ぐるぐる反芻思考”に陥ったとき、自分でできる対処法はありますか?
「いちばん効果的なのは、心の“容量を増やすこと”と“燃費を改善すること”です。
容量を増やすとは、十分な休息や睡眠、バランスの良い食事など、生活習慣を整えて心と体のエネルギーを回復させること。こうしたケアを行うことで心の余裕が生まれ、自然と反芻しにくい状態を作れます。特に睡眠不足は心のキャパシティを大きく削ってしまうので、しっかり眠ることが大切です。
燃費を良くするとは、同じ量の精神エネルギーでより効率的に思考できる状態を作ることです。具体的には、カウンセリングで思考のクセを見直したり、日記やメモで頭の中を整理したり、自己肯定感を少しずつ高めることが効果的です。頭の中で同じ考えがループするのを防ぎ、建設的に思考を進められるようになります。
また、認知行動療法(CBT)も有効です。CBTは自分の考え方や行動のパターンに気づき、ネガティブな思考の偏りを修正して、現実的で建設的な考え方に変えていく方法。科学的なエビデンスもあり、“燃費の悪さ”にアプローチして、反芻思考のループを減らすのに役立ちます。その他、必要に応じて薬物療法を併用することもあります」
――SNSが普及した現代では、"ぐるぐる反芻思考"に陥る人が増えていると言われています。
「SNSは常に情報が溢れ、自分の評価や他人との比較が絶えず行われます。こうした状況は精神エネルギーを大きく消耗させるうえ、自分の考えを深めたり整理したりする時間も奪われます。そういった背景が、“ぐるぐる反芻思考”に陥る土壌を社会全体で作っていると考えられます」
――最後に、"ぐるぐる反芻思考"に悩んでいる方へのアドバイスをお願いします。
「"ぐるぐる反芻思考"は、心のエネルギーが低下しているサイン。それ自体を無理にやめようとするより、まずは心のエネルギーを回復させることに意識を向けることが大切です。
たとえば熱が出たとき、『熱だけどうにかすればいい』とは思わないですよね。インフルエンザかもしれないし、肝炎かもしれない、あるいは別の原因かもしれない。原因を見極めて対処することが重要なように、反芻思考も"症状"として捉えて、背景にある疲労や生活習慣、心の状態に目を向けることが必要です。休息をとったり、睡眠や食事を整えたり、リラックスする時間を作るだけでも、思考のループを防ぐ効果があります」
【芳賀高浩 プロフィール】

「精神科医のお悩み相談クリニック」院長。内科専門医、精神科専門医、精神保健指定医。
内科医としての勤務を経て精神科へ転向し、以後は総合病院を中心に臨床経験を積む。これまでに2,000人以上の自殺未遂患者の診療に携わるなど、自殺予防領域での経験が豊富。現在は外来診療を中心に活動している。
自身のYouTubeチャンネルでは、臨床経験に基づく精神医学の知識を視聴者に寄り添ったわかりやすい形で発信しており、その実用性の高い内容が注目を集めている。
2025年8月、「私のなかの希死念慮ちゃん ~精神科医が教える『死にたい』との付き合い方~」(彩図社)出版。

(取材・文/みやざわあさみ)
いわゆる"考えすぎ"とは何が違うのでしょうか。反芻しやすい人にはどんな傾向があるのか、そしてそこから抜け出すには何が必要なのか。「精神科医のお悩み相談クリニック」院長・芳賀高浩先生に話を聞きました。
【動画】“思考のクセ”を把握しリスク回避!「円卓コンフィデンシャル」
"ぐるぐる反芻思考"は心のバッテリー不足
画像:PIXTA――“ぐるぐる反芻思考”とは、どのような状態を指すのでしょうか。
「普通の思考には、考えを広げ、反論を挟み、最後に自分なりの答えへ落とし込んでいく起承転結のような流れがあります。しかし“ぐるぐる反芻思考”の場合、同じ場所をループするように、同じ内容だけを繰り返し考え続けてしまいます。
たとえば上司に叱られた時、本来なら『叱られた→理由は何か→改善点→次はどうするか』と考えが進むはずですが、反芻思考の状態では考えの広がりや自己の反論もなく、同じ部分をぐるぐる回り続け、建設的な思考ができません。
いわゆる"考えすぎ"との違いは、考えを深掘りできているかどうかです。熟慮は横にも縦にも思考が展開しますが、反芻思考は深掘りも広がりもなく、浅いところをただ回り続ける。表面的には同じことを考えているようでも、内側で起きている思考の質は全く異なります」
――"ぐるぐる反芻思考"に陥りやすい人は?
「実は、人生のどの場面でもずっとぐるぐる考え続けている人はほとんどいません。反芻思考に陥るのは、精神エネルギーの容量が少ない時や、消耗が早い時。その人の特性というより、精神エネルギーの残量によって起こることが多く、メンタルのバッテリー不足ともいえます。
たとえば体調が悪い時は、誰でも反芻思考に陥りやすくなります。痛みや不快感があると、思考を整理する余裕が奪われ、自分の考えに反論することもできなくなり、思考がぐるぐる回り続けます。つまり、その人の資質よりも、その時の心のエネルギー状態が大きく影響していると考えられます」
――考えを反芻することは悪いことなのでしょうか?
「ものごとを深く考えること自体は、問題解決や学びにつながる場合もあります。しかし、“ぐるぐる反芻思考”は精神エネルギーが落ちている時に現れる一種の“症状”のようなものです。
大切なのは、"この状態が永遠に続くわけではない"と理解すること。心のエネルギーが回復すれば、同じテーマを考えていても自然と整理された思考や深みのある考えに変わっていきます。つまり、反芻してしまう自分を責める必要はなく、一時的な心の疲れやバッテリー不足のサインとして受け止めることが重要です」
――"ぐるぐる反芻思考"自体が心身に悪影響を及ぼすことはありますか?
「同じ考えを繰り返すうちに、突然極端な思考が浮かぶことがあります。たとえば、『あの人に叱られた→嫌われたかもしれない→自分には価値がない』というループの末に、『消えてしまいたい』『相手を消してしまえばいい』といった、本人も驚くような飛躍した考えが出てくることがあります。
これは、心の中で議論したり考えを整理したりする余裕が完全に失われている状態で、注意が必要です」
"ぐるぐる反芻思考"から抜け出すためのメンタルケア
画像:PIXTA――自己肯定感の低さと関係はありますか?
「自己肯定感が低いと、ほんの些細なことでも『自分はダメだ』『うまくできなかった』と思いがち。普通なら気にならないことにも過剰に引っかかってしまい、精神エネルギーがどんどん消耗されてしまいます。
反芻してしまうのは、性格や意思の問題ではなく、心のエネルギーの“燃費が悪くなっている状態”だから。自己肯定感を少しずつ高めることで、精神エネルギーの消耗を抑え、頭の中のループを減らし、考えを建設的に広げやすくなります」
――“ぐるぐる反芻思考”に陥ったとき、自分でできる対処法はありますか?
「いちばん効果的なのは、心の“容量を増やすこと”と“燃費を改善すること”です。
容量を増やすとは、十分な休息や睡眠、バランスの良い食事など、生活習慣を整えて心と体のエネルギーを回復させること。こうしたケアを行うことで心の余裕が生まれ、自然と反芻しにくい状態を作れます。特に睡眠不足は心のキャパシティを大きく削ってしまうので、しっかり眠ることが大切です。
燃費を良くするとは、同じ量の精神エネルギーでより効率的に思考できる状態を作ることです。具体的には、カウンセリングで思考のクセを見直したり、日記やメモで頭の中を整理したり、自己肯定感を少しずつ高めることが効果的です。頭の中で同じ考えがループするのを防ぎ、建設的に思考を進められるようになります。
また、認知行動療法(CBT)も有効です。CBTは自分の考え方や行動のパターンに気づき、ネガティブな思考の偏りを修正して、現実的で建設的な考え方に変えていく方法。科学的なエビデンスもあり、“燃費の悪さ”にアプローチして、反芻思考のループを減らすのに役立ちます。その他、必要に応じて薬物療法を併用することもあります」
――SNSが普及した現代では、"ぐるぐる反芻思考"に陥る人が増えていると言われています。
「SNSは常に情報が溢れ、自分の評価や他人との比較が絶えず行われます。こうした状況は精神エネルギーを大きく消耗させるうえ、自分の考えを深めたり整理したりする時間も奪われます。そういった背景が、“ぐるぐる反芻思考”に陥る土壌を社会全体で作っていると考えられます」
――最後に、"ぐるぐる反芻思考"に悩んでいる方へのアドバイスをお願いします。
「"ぐるぐる反芻思考"は、心のエネルギーが低下しているサイン。それ自体を無理にやめようとするより、まずは心のエネルギーを回復させることに意識を向けることが大切です。
たとえば熱が出たとき、『熱だけどうにかすればいい』とは思わないですよね。インフルエンザかもしれないし、肝炎かもしれない、あるいは別の原因かもしれない。原因を見極めて対処することが重要なように、反芻思考も"症状"として捉えて、背景にある疲労や生活習慣、心の状態に目を向けることが必要です。休息をとったり、睡眠や食事を整えたり、リラックスする時間を作るだけでも、思考のループを防ぐ効果があります」
【芳賀高浩 プロフィール】

「精神科医のお悩み相談クリニック」院長。内科専門医、精神科専門医、精神保健指定医。
内科医としての勤務を経て精神科へ転向し、以後は総合病院を中心に臨床経験を積む。これまでに2,000人以上の自殺未遂患者の診療に携わるなど、自殺予防領域での経験が豊富。現在は外来診療を中心に活動している。
自身のYouTubeチャンネルでは、臨床経験に基づく精神医学の知識を視聴者に寄り添ったわかりやすい形で発信しており、その実用性の高い内容が注目を集めている。
2025年8月、「私のなかの希死念慮ちゃん ~精神科医が教える『死にたい』との付き合い方~」(彩図社)出版。

(取材・文/みやざわあさみ)
記事提供元:テレ東プラス
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