愛のかたちと命のつながりをモチーフに、失踪と心臓移植の現実を重ねて描く 「たしかにあった幻」予告
イチオシスト
2026年2月6日より劇場公開される、河瀨直美監督の最新作「たしかにあった幻」の、予告編と場面写真が公開された。
予告編では、先進国の中でドナー数が最下位の日本で、コーディネーターとして臓器移植への理解と移植手術の普及に尽力するフランス人のコリー(ヴィッキー・クリープス)の姿が描き出されている。「命の終わりより、その先にどう生かすべきかを考えるべきでは?」と訴えかけるコリーだが、西欧とは異なる死生観や倫理観の壁は厚く、医療現場の体制改善や意識改革は容易ではない。孤独と無力感にさいなまれながらも、屋久島で運命的に出会った青年・迅(寛一郎)との日々が彼女の心を支えていた。しかしある日、迅は突然姿を消してしまう。最愛の息子を亡くし、一周忌を迎えた今も罪悪感に囚われるめぐみ(尾野真千子)と、元刑事の亮二(北村一輝)の助けを借り、コリーは迅の家族が暮らす岐阜を訪ねることになる。
さらに予告編では、急死した息子の心臓をドナーに提供するという決断を迫られた父親(永瀬正敏)の「もう戻ってこんとでしょ」という痛切なつぶやき、心臓病を抱えて移植を待つ少年・久志の母・由美(岡本玲)が漏らす「喜んでいいんかな…」という複雑な思いなど、ドナー(臓器を提供する側)とレシピエント(臓器を受け取る側)のどちらにも存在する、深い葛藤と祈りが収められている。
場面写真では、心臓移植を待ちながら入院する少年・久志、少女・瞳と一緒に過ごすコリーの姿や、神の島と呼ばれる屋久島で出会った迅との日常を重ねる穏やかなひとときなどが切り取られている。
「たしかにあった幻」は、小児臓器移植実施施設を舞台に、命のともしびを照らす”愛”の物語。フランスからやってきたレシピエント移植コーディネーターのコリーが、脳死ドナーの家族や臓器提供を待つ少年少女とその家族と関わりながら、命の尊さと向き合う。同時に、突然失踪した恋人の行方を追うコリーの姿を通じて、愛と喪失、希望を描く。「あん」ではハンセン病を抱える女性、「光」では視力を失っていく男性、「朝が来る」では特別養子縁組の夫婦を取り上げ、社会的偏見や喪失の中で、他者との関係性を通して救われる”愛のかたち”を描いてきた河瀨監督が、本作でも命と愛の意味を問いかける。
【作品情報】
たしかにあった幻
2026年2月6日(金)テアトル新宿ほかロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© CINÉFRANCE STUDIOS - KUMIE INC - TARANTULA - VIKTORIA PRODUCTIONS - PIO&CO - PROD LAB - MARIGNAN FILMS – 2025
記事提供元:映画スクエア
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
