4年前に死んだ殺人鬼から、魔の着信が鳴り響く 待望のサイコスリラー続編 『ブラックフォン 2』
イチオシスト
飯塚克味のホラー道 第139回『ブラックフォン 2』
連続殺人鬼に誘拐された少年が、死者からの電話で勇気づけられ、逆襲に転じ、犯人を倒すという展開が斬新だった『ブラック・フォン』(2021)から早4年、同一キャスト、スタッフと言う嬉しい組み合わせで続編がやって来た。前作で、イーサン・ホーク演じる連続殺人鬼グラバーを殺してしまったので、一体どうやって続きを展開させるのかと思ったら、なるほどそう来たかと思わせる内容になっていて、納得できる話がない限り続編の必要はないとしていたスコット・デリクソン監督の決断に拍手を送りたくなってきた。
映画の冒頭は、とあるキャンプ場から始まる。氷に覆われた湖、その湖畔と思しき場所に電話ボックスがあり、ベルが鳴り始める。舞台は変わり、前作ではあどけなさが残っていたフィン、その妹でサイキック能力があるグウェン、そしてグラバーの魔の手により亡くなったロビンの弟アーネストが登場する。フィンは17歳、グウェンは15歳に成長している。前作ではいじめられていたフィンだが、昔、誘拐されていた話を興味本位で聞こうと近寄ってきた連中には鉄拳制裁をするほど、たくましくなっていた。だが電話のベルは今もフィンを苦しめ続け、受話器を取ると向こう側から助けを求める声が聞こえていた。そんなフィンがある日、受話器を取ると、倒したはずのグラバーの声が聞こえてくる。そう、グラバー自身、死んだことで向こう側から電話をかけられる存在になっていたのだ。
冒頭にも書いたがスタッフ、キャストは継続している。監督のスコット・デリクソンはデビュー作の『ヘルレイザー/ゲート・オブ・インフェルノ』(2000)こそ残念な出来だったが、エクソシストと裁判劇を組み合わせた『エミリー・ローズ』(2005)からは本領発揮。『地球が静止する日』(2008)や『ドクター・ストレンジ』(2016)のような大作を手掛けつつ、イーサン・ホークと組んだ『フッテージ』(2012)や『NY心霊捜査官』(2014)など、ホラーファンの期待を裏切らない作品を連発している。
グラバー役のイーサン・ホークについては説明不要だろう。フィン役のメイソン・テムズや、グウェン役のマデリーン・マックグロウが実質的な主人公だが、前作からの成長を感じさせ、かつて『ハリー・ポッター』シリーズで感じた、子役が同じ役柄で外も中身も育っていく様子を楽しませてくれる。
今回、面白く感じられるのは、前作では妻の自殺に悩み、アル中だった父親の過去や、母親の死の真相、そしてグウェンに引き継がれた超能力の由来など、家族のドラマがしっかり描かれていく点だ。
また出し惜しみしないデリクソン監督の演出も絶好調。後半は意外な形で現れ、若者たちを悩ませるのだが、誰もがあの有名な悪夢を題材にした映画を思い出すはずだ。また先が読めないミステリー的な展開も観客を喜ばせてくれ、最後まで気を抜けない映画になっている。劇中にはピンク・フロイドの楽曲も流れ、80年代的な雰囲気作りにも余念がない。
全米では10月17日に公開され、初登場1位の大ヒット。3週目には再び1位に返り咲くなど人気ぶりを見せ、興収トータルは7480万ドルに達している。海外では5300万ドルを稼ぎ出し、トータル1億2780万ドルとなって、更なる続編の噂も出ている。
本作成功の秘訣は、無理に話を展開せず、作り手が納得いくまで内容を推敲したことだろう。最近、思うように成績が出せなかったブラムハウスだが、初心に戻った本作の成功で自信を取り戻したはず。今後の作品も楽しみだ。日本のホラーファンは、まずは本作を劇場で観て、大いに楽しんでもらいたい。
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飯塚克味(いいづかかつみ)
番組ディレクター・映画&DVDライター
1985年、大学1年生の時に出会った東京国際ファンタスティック映画祭に感化され、2回目からは記録ビデオスタッフとして映画祭に参加。その後、ドキュメンタリー制作会社勤務などを経て、WOWOWの『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出を担当した。またホームシアター愛好家でもあり、映画ソフトの紹介記事も多数執筆。『週刊SPA!』ではDVDの特典紹介を担当していた。現在は『DVD&動画配信でーた』に毎月執筆中。TBSラジオの『アフター6ジャンクション』にも不定期で出演し、お勧めの映像ソフトの紹介をしている。
【作品情報】
ブラックフォン 2
2025年11月21日(金)劇場公開
配給:東宝東和
© 2025 Universal Studios. All Rights Reserved.
記事提供元:映画スクエア
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