AI搭載車に脱炭素カー、噂のクルマまで! 専門家が現地取材で勝手にジャッジ! 「ジャパン モビリティショー2025」で見つけた"やりすぎカー"BEST10
イチオシスト
今年のジャパンモビリティショー(10月29日~11月9日開催)には、過去最多となる500超の企業・団体が集結。東京ビッグサイトで徹底取材した自動車研究家の山本シンヤ氏が、独断と偏見で選んだ"やりすぎカー"ベスト10を発表!
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【1位はまさに〝やりすぎ〟の2台!】
【第1位】トヨタ センチュリークーペ 鳳凰の炎をまとった唯一無二のショーファークーペ。日本の象徴カーが、ついにブランドとして独立、進化した
――それでは山本シンヤ選考委員長、JMS(ジャパンモビリティショー)2025で見つけたやりすぎカー、1位から発表をお願いします!
山本 実は1位が2台あります。トヨタのセンチュリークーペとIMVオリジンです。どちらも〝やりすぎの極み〟で甲乙つけ難い。
――まずセンチュリークーペ、どこがやりすぎ?
山本 センチュリーはトヨタの中でも別格の存在ですが、これまで立ち位置が曖昧でした。そこで豊田章男会長が「ブランドとして確立すべき」と独立を決断し、セダン、SUVに続き、今回クーペが登場。もはや〝唯一無二の日本車〟の象徴と言っていい。
――センチュリーがブランド化された背景には、どんな経緯があるのでしょうか?
山本 センチュリーは、1967年にグループ創始者・豊田佐吉氏の生誕100年を記念して誕生した、トヨタの中でも特別な存在。豊田家が深く関わってきたモデルで、膨大なトヨタ車のラインナップの中で唯一、〝乗る人を選ぶクルマ〟です。
――確かに、一般的なトヨタ車とは一線を画しています。
山本 私は以前から「トヨタ・センチュリー」ではなく、「トヨ〝ダ〟・センチュリー」だと思って見ていました。それくらい、トヨタという企業の枠を超えた存在だった。それが今回、ブランドとしての役割を明確に得たことで、ようやく〝居場所〟が定まったと言えるでしょうね。
――デザインも攻めています。
山本 見た目はパーソナルクーペですが、実はショーファーカー。セダンはタキシード、SUVはビジネススーツ、そしてクーペはパーティドレス。ボディカラーのオレンジは「鳳凰復活の炎」をイメージしているそうです。
――インテリアも独特です。
山本 助手席はフルリクライニング式でリアウインドーレス。運転席との間には織物風の仕切りがあり、シート地は西陣織。伝統と革新が融合!
――パワートレインは?
山本 詳細は非公開ですが、私の予想ではFR縦置きレイアウトで、V8・4リットルツインターボ+モーターのPHEVで、〝静〟と〝動〟の両立が可能になっているかと。

【第1位】トヨタ IMVオリジン 未完成で出荷、現地で完成という意欲作。社会課題に挑んだ新たな提案だが、このギア感だけでたぎりまくる
――同率1位のトヨタIMVオリジンはどんなクルマ?
山本 「Mobility for all」の思想に基づき、クルマの原点に立ち返ったモデル。トヨタは土台だけを提供し、上部構造は現地ニーズに応じて自由にカスタマイズ可能。つまり、未完成の状態で出荷され、ユーザーが組み立てて完成させる。
――新興国ではバイクの過積載も多いですしね。
山本 荒れた路面を走れるタフさ、修理しやすい構造、そして価格もバイク並みに抑える必要がある。IMVオリジンは〝走る、曲がる、止まる〟に絞ったシンプル構造で、社会貢献の側面も強い。
【ギンギンEVに、6輪カー爆誕!】
【第3位】スバル パフォーマンス-E STI コンセプト 低重心思想をEVで極限まで追求。スバルらしさを濃縮還元した、次世代の走りのフラッグシップ。男心を刺激
――1位が2台だったので、お次は第3位です。
山本 スバルのパフォーマンス-E STI コンセプトです。
――スバルのEVですね。
山本 はい。これまでスバルはトヨタと共同でEVを開発してきましたが、スバルの藤貫哲郎CTO(最高技術責任者)が「スバルらしさは、やっぱり背の低いクルマ」と指示。低重心思想をEVでやりすぎにも程があるほど突き詰めています。
――具体的には?
山本 三元系円筒型バッテリーを採用し、電動システムを徹底的に低く配置することで室内スペースを確保。重心は従来比で15%以上も低い!
――走りは?
山本 新しい車体剛性の考え方を採用した次世代SGP(スバルグローバルプラットフォーム)に、前後ツインモーター式AWDを搭載。開発者は「スバル史上最高のハンドリング」と自信満々です。
――スタイリングも激アツ!
山本 これまでのスバル車はフロントオーバーハングが長かったですが、このモデルは違う。グリルレスではないフロントフェースも〝スバルらしさ〟を残しつつ、BRZとの共通性も感じます。
――市販化の可能性は?
山本 開発者いわく、「すでにテストカーが走っていますよ」とのこと!

【第4位】レクサス LSコンセプト ラグジュアリーセダンから6輪のラグジュアリースペースへ。走るリビングを具現化した、レクサスの近未来提案
――今回度肝を抜かれたのが、第4位に入ったレクサスのLSコンセプトです。なんと6輪の乗用車!
山本 量産メーカーでは初ですね。これまでのLSはラグジュアリーセダンでしたが、ラグジュアリースペースへと進化させた提案です。
――なぜ6輪?
山本 後輪を4つにすることで、後方スペースをフラットに確保できる。乗員がリラックスできる空間をつくるためのやりすぎですね。大開口スライドドアも、ショーファーカーに本当に求められる機能を形にした結果です。
――インテリアもエグい。
山本 上品さと華やかさが共存する〝走るリビング〟。品格も磨かれており、まさに新しいラグジュアリーの形です。
――走りを予想すると?
山本 詳細は未公表ですが、ステアバイワイヤ(電気信号のみで操作を行なうシステム)+後輪操舵+小径タイヤで、取り回し性と乗り心地を両立。サスペンションも革命的な設計の予感です!
――量産時はもっと普通に?
山本 多くの人がそう思っているようですが、私は「ほぼこのまま出る」と予想しています。ズバリ、やりすぎの頂点です!

【第5位】ダイハツ K‐OPEN 山本氏いわく「まだ発売時期と価格は読めませんが、耳にしている感触を踏まえると、次期コペンは軽のFRで出る」
――第5位はダイハツのK-OPEN。これは軽のオープンカー・コペンですね。
山本 はい。前回のJMSで公開したビジョンコペンはFR(後輪駆動)レイアウトの普通車枠でしたが、今回は軽自動車枠での提案です。ユーザーからの「コペンは軽であってほしい!」という声にダイハツがしっかり応えました。
――走りの予想は?
山本 直列3気筒ターボを倒して搭載。駆動系は軽トラ(ハイゼット)用を活用しています。すでにプロトタイプが走行テスト中ですね。

【第6位】ホンダ スーパーワンプロトタイプ 遊び心と走りの楽しさを詰め込んだ、ホンダらしさ全開の超ギンギン軽EV。気になる発売は2026年を予定とのこと
――続いて第6位はホンダのスーパーワンプロトタイプ。SNSでも話題!
山本 はい。「シティターボⅡブルドッグみたい」といわれる見た目のインパクトも含めて注目度は高いです。ホンダのEV戦略は「小さいクルマから」ですが、遊び心も忘れていません。
――具体的には?
山本 Nシリーズの軽量プラットフォームをベースに、ブリスターフェンダーでワイドな姿を実現。BOOSTモードでは仮想シフト+サウンド演出で、まるでエンジン車のような熱い走りを体感できます。
――実は試乗済みとか?
山本 チョー楽しいです。軽量なのに安定感があり、ヒョンデのアイオニック5Nに続いてほしいと思ったEVです。
――どこがやりすぎ?
山本 軽EVでここまで走りにこだわったのは珍しい。問答無用でやりすぎ!
【マツダ、BYDにシャープがランクイン!】
【第7位】マツダ ビジョンクロスコンパクト 久しぶりに小さくて元気なマツダのクルマが帰ってきた。感性とAI、そして走る歓びを詰め込んだ次世代コンパクト
――第7位はマツダのビジョンクロスコンパクトです。
山本 マツダが描くスマートモビリティの未来像を体現したモデルですね。人の感覚をデジタル化した「人体・感性モデル」と、共感型AIを融合させている点が技術的なポイントです。
――かなり先進的な内容です。
山本 ただ、僕が評価したいのは〝サイズ感〟。マツダ2の後継に見えるでしょ?
――確かに。
山本 マツダは最近、大型化路線でしたが、「小さくて元気なマツダも必要!」という熱き思いが感じられる。AIとの共感、感性のデジタル化などもしっかりやるけど、「やはり大事なのはクルマでしょ」というマツダらしい哲学が詰まった一台です。

【第8位】BYD ラッコ 空力不利ながら日本市場のドル箱である軽スーパーハイトで勝負に出た。本気で挑む、戦略的すぎる中国発軽EV
――第8位は中国BYDが放った噂の日本専用軽EV!
山本 驚いたのは「ラッコ」という大胆な車名。BYDは海獣ネーミングが得意ですが、ラッコは軽にピッタリ!
――なぜ軽市場に参入?
山本 BYDジャパンの劉学亮社長は「日本はEVに最適な環境だと思っています。われわれのビジネスももちろん大事ですが、それ以上にまずはEVの普及に協力したい」と語っていました。その思いを最もわかりやすく形にしたのが、日本人の〝ゲタ(日常の足)〟とも言える軽自動車をベースにしたEVなんです。
――ラッコのやりすぎは?
山本 ラッコは、軽自動車の中でも特に人気のある軽スーパーハイトワゴンというジャンルで勝負している点です。EVは航続距離を伸ばすために、空力性能や車重の軽さにこだわるのが常識。スーパーハイトワゴンはどちらも不利ですが、あえて挑む姿勢がやりすぎ。
ちなみに展示車はコンセプト感ゼロで、すぐ市販できそうな完成度です。発売は2026年の夏を予定!
――価格も期待できそう?
山本 〝戦略的な価格〟になるとの噂です。BYDの本気度が伝わってきましたよ。

【第9位】シャープ LDK+ 走るより止まっている時間が主役。家電発想で生まれた、動くリビング空間。果たして需要はあるか!?
――どんどんいきます。第9位はシャープのLDK+。
山本 〝家電メーカーがクルマを造るとこうなる〟という提案ですね。走るより〝止まっている時間〟に価値を置いたクルマ。車内を自宅の延長として使う発想ですね。回転式ソファ、プロジェクター、スクリーンで映画やゲームも楽しめる。台湾のホンハイが車両を担当。
――EV市場への参入は?
山本 2027年度に自社ブランドで参入予定です。
【三菱、マツダが特濃試作カー大放出】
【第10位】三菱 エレバンスコンセプト 三菱の秘伝技術を煮込みに煮込んだ、スーパー全部盛りPHEVがSUVスタイルで登場! 市販化はあるのか!?
――第10位は三菱のエレバンスコンセプトです。
山本 とにかく中身がスゴい。三菱のPHEV技術の集大成です。カーボンニュートラル燃料対応の高効率エンジン、フロントにインホイールモーター、リアにデュアルモーターAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)のクアッドモーター4WDを搭載!
――技術ギガ盛りですが、ぶっちゃけ市販化できます?
山本 以前、デュアルモーターAYC搭載のテストカーに乗ったことがありますが、あのランサーエボリューションXを超える驚きの旋回性能とトラクション(駆動力を地面に伝える力)性能に驚きました。これにフロント・インホイールモーターで4輪フル制御ですから......とんでもない走りになるはず!
――このクルマの正体は?
山本 次世代パジェロか、アウトランダーの未来形です。

【欠点】マツダ ビジョンクロスクーペ ロータリー×PHEVで510馬力を誇る。走るほどにCO2を減らすという。「これは欲しい!」というマツダファン多し
――次点はマツダのビジョンクロスクーペ。マツダの夢とも言えるロータリーエンジン搭載のフラッグシップが、ついに姿を現しましたね。
山本 今回は4ドアクーペという新しいスタイルで登場しました。流麗なデザインも魅力ですが、注目すべきは2ローターのロータリーターボエンジンとモーターを組み合わせたPHEV。最高出力はなんと510馬力です。
――航続距離は?
山本 モーターだけで160km、エンジン併用で最大800km走れる設計です。さらに驚くのは、微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料と、マツダ独自のCO2回収技術「モバイルカーボンキャプチャー」を組み合わせることで、〝カーボンネガティブ〟を実現!
――つまり、走るほどにCO2を減らすわけですか?
山本 計算上、走行時に排出されるCO2よりも多くを回収できる。やりすぎ!
撮影/山本圭吾 週プレ自動車班
記事提供元:週プレNEWS
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