コロナ禍後にテキヤ業界にヤクザが戻ってきた理由とは? 平成には暴排条例で一掃されるも‥‥。
イチオシスト

一時は業界から一掃された暴力団関係者が、テキヤ稼業に舞い戻る動きが続いているという
「へい、いらっしゃい!」
コワモテの外見から意外なほどの愛想を振り撒き、トウモロコシを炭火に焚べるパンチパーマのお兄さん。忙しく動かす手元を見ると、袖口から刺青がのぞく‥‥。平成初期まで全国各地の縁日や地方祭でみられたテキヤの平均像は、そんなところではないだろうか。
しかし、平成も終盤に差し掛かると、そんな昔気質のテキヤを目にすることはほとんどなくなった。2011年までに全国の都道府県で暴排条例が制定されたことが直接の原因だ。自治体や寺社、商店街なども、暴力団と繋がりのあるテキヤの出店を認めることができなくなったのだ。
2022年には、テキヤ系暴力団の代表格で、浅草を拠点に明治時代に創立された姉ヶ崎会(旧・姉ヶ崎一家)が解散に至ったことも象徴的だ。それがここ数年、テキヤで暴力団員が活動を活発化させているという。
【頻発する摘発】今年10月、新潟県上越市主催の祭りに虚偽の申請をして露店2軒を営業したとして、六代目山口組系暴力団組長の男(50)ら7人が詐欺の疑いで逮捕された。出店申請は、ともに逮捕された女性名義で行われていたが、実質的には暴力団組長の男が経営していたという。
また、2024年には、暴力団関係者が経営すると知りながら、露店の出店に便宜を図った疑いで、静岡県西部街商協同組合露天商組合の理事長が逮捕されているなど、類似の事件が頻発しているのだ。

斜陽産業たるテキヤ業界に再参入する暴力団組員の事情とは?
しかし、「最近、摘発されているのは氷山の一角」と話すのは、とあるテキヤ関係者だ。
「暴排条例による規制が始まった当時は、決まった組織が決まった露店を動かして営業をしていたので、警察やイベント主催者が『誰がヤクザで誰がカタギか』を把握するのは簡単だった。しかし、暴力団が露店営業に関われなくなった今、全国を回るテキヤの素性を掴むのは難しいです。
カタギの名義で出店申請されれば、実際には誰が経営しているか、普通はわからない。昔みたいに、『いかにもヤクザ』という格好で露店に立つヤツもいませんしね」(テキヤ関係者)
【テキヤ回帰に垣間見えるヤクザの困窮】暴力団員の「テキヤ回帰」には、業界の苦境も一因しているという。テキヤ事情を取材する某紙社会部記者が話す。
「2020年からのコロナ禍で出店できるイベントが壊滅。一般の飲食業界と違って協力金も受け取れず、フードデリバリーで凌ぐこともできませんでした。
コロナ禍終息後、地方祭や縁日はかつての規模には戻らず、フェスなどの民間イベントはご当地グルメやB級グルメなどの出店者が幅を利かせ、『焼きそば』や『綿菓子』など、誰でも作れる商品を武器に全国を行脚する昔ながらのテキヤのビジネスモデルは成り立たなくなった。同時に高齢化も進み、廃業するテキヤも増え、コロナ前と比べたら半減したといもいわれています。
つまりプレイヤーが減って参入しやすくなった古巣に、一度離れた暴力団員が舞い戻ってきたという見方もできる」(某紙社会部記者)
しかし、切った張ったの渡世人である彼らが、わざわざ儲からない業種に再参入する意味はなんなのか。
「それだけ追い込まれているということだよ」と明かすのは、60代の元暴力団員の男性。
「ヤクザのしのぎの代表格だった管理売春はSNSや出会い系サイト、立ちんぼ行為による個人売春に置き換わり、博打は海外のオンラインカジノに食われ、ダフ屋行為も転売ヤーや個人転売に太刀打ちできない。残ったのは、誰も手をつけたがらないテキヤだった、ということ。
といっても、昔のように組ぐるみで関与しているのではなく、テキヤの経験のある高齢の暴力団組員が、逮捕のリスクに怯えながらも糊口を凌ぐためにやっている程度。私の同世代の現役組員は、『露店の設営と撤収が体にこたえる』といいながら、生活費のためにテキヤを続けている」(元暴力団員の男性)
文/吉井透 写真/photo-ac.com
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
