【3秒筋トレ】で毎日続く!中村雅俊先生が“筋肉年齢が若返る究極タイパメニュー”をナビ!
イチオシスト

健康法やダイエット法があふれる現代において、誰もが口にする「運動しなきゃ」という言葉。しかし、いざ実践となると「時間がない」「きついのは嫌だ」といった言い訳がつきまとい、結局は続かないのが現実だ。
この課題に立ち向かうのが、理学療法士の中村雅俊先生。去年「たった3秒筋トレ 世界最短時間で10歳若返る」(講談社)を出版し、そのシンプルな筋トレ法が、さまざまなメディアで話題に。
従来の筋トレと何が違うのか。私たちの健康寿命にどう貢献するのか。中村先生に、その理論と実践法を聞いた!
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常識を覆す「3秒筋トレ」誕生秘話 筋トレの常識はウソ?「上げる」より「下ろす」方が効く理由

――世の中にはたくさんの健康法がありますが、結局、続かないのが問題です。
先生は「誰でも続けられる」という点を重視して、この「3秒筋トレ」を生み出したそうですね。
「おっしゃるとおり“続かない”ことが一番問題なんですよね。続いていたら、こんなに毎年ダイエット本が出るはずがないので(笑)。
私は理学療法士としてリハビリの仕事をしていますが、病気になってから治すというのは非常に効率が悪い。人間は老化もするし、病気にもなります。だからこそ、病気になる前から自分の筋肉年齢を意識し、“いかに長く自由に動ける体を維持するのか”を考えなければならない。『3秒筋トレ』は、そんな発想のもと生まれました」
――運動の必要性は誰もが理解しているのに、なかなか実践できない…誰もが抱える悩みです。
「『運動は大切ですか?』と聞けば、みなさん『大切!』と元気よく答えます。でも、『運動をしていますか?』と聞くと、たいていの人は『時間がない』『きついのは嫌だ』『汗をかきたくない』など、言い訳が山ほど出てくる(笑)。そんな言い訳が発生しないように、まずは運動のハードルを下げることが必要だと考えました」
――そこで生まれたのが、従来の筋トレの常識を覆す中村先生の理論。特に「ゆっくり下ろす方が筋力アップしやすい」という事実を知り、衝撃を受けました。
「筋トレの研究を見ていくと、“ダンベルなどを上げるよりも下ろす方が効果がある”ということが分かりました。しかも、下ろす動作の方が疲れにくく、力も出やすい。今まで、筋トレと言えば上げる方を頑張っていたと思いますが、実は下ろす方がトレーニング効果が高いということが分かったのです」
――誰もが長続きするように、「上げる⇒下ろす」の筋トレではなく、「上げる」を省略し、「下ろす」という1つのプロレスに絞った筋トレで十分だとも。
「その通りです。通常の筋トレは“上げて下ろす”という2つのアクションが必要ですが、半分でいいのかもしれないと思いました。実際に行った研究では、上げて下ろす動作と、下ろすだけの動作で、効果が一緒でした」
――なぜ“下ろす”方が効くのでしょう。
「筋肉は基本的に“縮む”ことしかできません。持ち上げる時は筋肉が縮むので、ストレスがない。しかし、重力に逆らってゆっくり下ろそうとすると、筋肉は伸ばされながら力を出すことになります。これは筋肉や脳にとって非常に大きなストレスとなり、このストレスが大きい分、トレーニング効果が大きいと言えます」
――その中で「3秒」という秒数が選んだことにも意味が?
「他のトレーニング法では10秒などもありますが、10秒で下ろすのはすごくしんどい。苦しすぎると続かないので、まずは一番カウントしやすい3秒にしました。実践する際は、“1、2、3、4、5”と5カウントで数えてもらうと、だいたい3秒くらいになります。続けることが目的です」
大切なのは「脚の筋肉」
――先生は、理学療法士として人々の健康に携わる中で、何が最も問題だと感じていますか。
「今の日本では、本当の寿命と健康寿命に約10年もの差があることです。健康寿命は、自立して生活できる期間、介護や支援を必要とせずに活動できる期間を指しますが、この10年間、誰かしらの助けが必要になるというのはなかなか厳しい。私は、この期間をできるだけ短くしたいと思い、日々活動しています。
『3秒筋トレ』は、特に脚のトレーニングが多いのですが、当然ながら、歩けなくなるとどこにも行けなくなりますよね。高齢者がよく口にするのが『暇あり、金あり、足なし』という言葉。暇もお金もあるのに、足がないからどこにも行けないと。
人生の最後まで自分の足で歩き、好きなことができる…それが一番いいと思っています。
また、倒で股関節付近の骨を骨折すると、その後の生活が困難になるとも言われています。
手術の翌日からリハビリをしますが、それでもガクッと体力は落ちてしまう。転倒を防ぐためにも、足腰を鍛えることは非常に重要です」

――自分の脚の筋力が弱っているかどうか、判断基準はありますか。
「“椅子から片足で立てない”状態であれば、かなり筋力が弱っていると判断します。太ももの筋肉は、体を持ち上げたり階段を上ったりするのに非常に重要。筋肉の貯金は裏切りません」
――筋力のピークはいつ頃なのでしょう。
「20~30代がピークで、あとは下がっていきます。特に30~40代は何も困らないので危機感がありません。でも、何もせずにその状態を放っておくと、後で取り返すのが大変です。
〝貯金ならぬ貯筋“が大切で、筋肉もお金と同じように、何もしなければ少しずつ減っていきます。ですが、お金と筋肉の大きな違いは、お金は使うとなくなりますが、筋肉は使うことで増えるということ。若い頃から筋肉貯金をしておくと、40~50代になってから同じことをしても、楽に動けます。楽だとまた体を使い、さらに筋肉がつくという好循環が生まれます」
――運動を続けるモチベーションとして、体重計の数字を気にする人も多いですが…。
「体重をモチベーションにするのはいいと思いますが、そもそも運動はカロリーをそんなに消費しないんですよ。体重計の数字よりも、体の中身が大切。筋肉が増えると、体重は変わらなくても、お尻が上がったり引き締まって見えたりします」
「言い訳」を消し去る実践法 運動の「タイパ」を上げる!
――「私はウォーキングをしているから大丈夫!」という人も多いですが、これについては、どう考えますか?
「ウォーキングは、血流を良くしたり、血糖値を下げたりする有酸素運動としては非常に優れています。しかし、筋肉が強くなるほどの負荷ではないため、筋肉をつけるという点ではタイパが悪いと思います」
――筋肉をつけるには、やはり筋トレが必要なのですね。週に何回が適切ですか?
「WHOは週に2回以上を推奨しています。人間の体は刺激が入っても元に戻ってしまうので、戻りきる前にまた刺激を入れることで、徐々に強くなっていきます。週に1回だと、良くなって戻っての繰り返しで、なかなか蓄積されません」
――「3秒筋トレ」は、自宅でどう実践すればいいのでしょう。失敗しやすいポイントはありますか?
「失敗しない最大のポイントは、“言い訳できる要素を全部消す”ことです。家でできるので着替えなくてもいい、必要なのは椅子だけ。回数も、最初は10回を朝昼晩で分けてもいいので、これなら言い訳ができなくなります(笑)」
――実際の動作で注意すべき点は?
「最初に登場する“椅子座り”の場合、足を肩幅に開いてゆっくり座る。細かいフォームは気にしすぎなくていいです。一番大事なのは、“1、2、3、4、5”と声に出しながら、ゆっくり下ろすこと。5つカウントすると、たいてい3秒になるはずです」
――デスクワークで座りっぱなしの人へのアドバイスはありますか?
「体にとって一番良くないのが、ずっと座りっぱなしでいること。30分に1度が理想ですが、トイレや飲み物を取りに行く際など、1時間〜1時間半に1度は席を立つことを心掛けましょう。そして、座る時は意識的に“ゆっくり座る”。この3秒筋トレを紛れ込ませるだけで、立ち座りという日常動作もトレーニングになります」
――最後に、読者へメッセージをお願いします。
「運動は、決して特別なものではありません。『よし、やるぞ!』と気合を入れなくても、歯磨きのように生活の隙間で実践できる運動が一番いい。そして、トレーニングは1度きりではなく、“続けること”が大切です。“未来の自分への投資になる”ということを伝えていきたいです」
▲「たった3秒筋トレ 世界最短時間で10歳若返る」(講談社)
【中村雅俊 プロフィール】
1987年、長崎県生まれ。西九州大学リハビリテーション学部 准教授/理学療法士 長崎大学医学部卒業、京都大学大学院 医学研究科博士課程修了後、同志社大学スポーツ健康科学部助教、新潟医療福祉大学リハビリテーション学部講師を経て、2022年より現職。
新潟医療福祉大学時に行った「3秒筋トレ」の効果についての国際論文を2022年に発表。「ニューヨーク・タイムズ」紙で取り上げられて話題になるほか、「ガッテン!」(NHK)、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)、「ひるおび!」(TBS)など数々のメディアで取り上げられる。
フィジカルトレーニングに関する精力的な研究により、ストレッチに関する論文数は世界ランキング1位。その傍ら、リハビリのプロとして一般の方々のケアにもあたる。
(取材・文/蓮池由美子)
記事提供元:テレ東プラス
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