どん底からルヴァンとリーグとの二冠達成へ──「Jリーグで一番面白い」と評判の柏レイソルが新時代を切り拓くカップを目指す【2025 JリーグYBCルヴァンカップ決勝/柏プレビュー】
イチオシスト
今シーズン、明治安田J1リーグで優勝争いを繰り広げている柏レイソルが、YBCルヴァンカップでも順調な勝ち上がりを見せた。1stラウンドではアスルクラロ沼津、福島ユナイテッドFC、レノファ山口FCを下し、プレーオフラウンドで東京ヴェルディ、プライムラウンド準々決勝では横浜F・マリノスを、ともにホーム&アウェイ2試合合計で5−1という快勝を収め、準決勝へと進出した。
柏レイソル・古賀太陽 (C)Jリーグ迎えた川崎フロンターレとの準決勝、アウェイでの第1戦を1-3で落とし、ホームでの第2戦も試合開始早々に先制点を奪われて合計1−4という敗色濃厚の苦しい状況に追い込まれた。しかし、柏はそこから怒涛の反撃へと転じていく。後半に入って立て続けに得点を奪い返すと、最後は細谷真大の決勝弾で合計5-4という劇的な逆転勝利を飾り、2020年大会以来5年ぶりの決勝進出を決めたのである。
ルヴァンカップとJリーグの二冠を狙う柏だが、1年前は青息吐息だった。リーグ戦で下位に沈み、最終順位は2年連続の17位。辛くもJ1残留こそ果たしたものの、シーズンオフにはマテウス サヴィオが浦和レッズに、日本代表DFの関根大輝がフランスのスタッド ランスに移籍。主力選手二人が抜けたことを受けて、今シーズン開幕前には柏を“降格候補”に挙げる有識者も少なくはなかった。
だが、2025年のJリーグが開幕すると、柏は昨シーズンとは全く違う顔を見せた。
昨シーズンまでの堅守速攻型から、ボールを保持して相手ゴールを狙う攻撃的なポゼッションサッカーへ劇的な変化を遂げ、1試合の平均ボール保持率は60%に達し、1試合平均のパス本数は600本を超える。これはいずれもJ1リーグトップの数字だ。さらに総得点55は川崎F、京都サンガF.C.に次ぐリーグ3位。また、攻撃だけに偏ることなく、無失点試合もリーグ最多の17試合に上る。長短のパスをつなぎながら相手の守備を切り崩し、ボールを失ったとしても前線からの素早い守備で即座に奪い返して再び攻撃へと転じる。攻守においてアグレッシブな柏のサッカーは「Jリーグで一番面白い」と評判が高い。
ここまで劇的にチームが変わった要因は、今シーズンから指揮官に就任したリカルド ロドリゲス監督の存在にある。1月の新チーム立ち上げから1カ月という短い期間でポジショナルプレーとハイプレスという攻守両面における戦術を落とし込み、J1が開幕を迎えた2月には、すでに高い完成度のサッカーを見せるまでに仕上がっていた。
開幕から上位戦線に食い込んだ柏は、第35節終了時点で首位の鹿島アントラーズに勝点差1の2位につけ、ルヴァンカップとともにリーグ優勝を射程に捉えている。好調を維持するチームからは日本代表にも選出され、昨年のパリ五輪でも活躍した細谷を始め、7月のEAFF E-1サッカー選手権には、古賀太陽、垣田裕暉、久保藤次郎の4選手がSAMURAI BLUEに選ばれた。
今回、ファイナルで対戦するサンフレッチェ広島とは、今シーズンのリーグ戦で2度対戦してともに引き分け。ホーム、アウェイとも拮抗した試合だったことを考えれば、ルヴァンカップ決勝も紙一重の戦いとなるだろう。予想される試合展開としては、ボールを支配して攻め込む柏が自慢のパスワークで広島の激しいプレッシングをかわし、リーグ最少失点を誇る相手の堅い守備をどう崩すか。柏が直近の公式戦3試合で11得点を挙げているとはいえ、広島の堅守を崩すのは容易ではない。
そうなると、勝負のカギを握るのは、リカルド監督の采配である。柏の総得点55のうち、20得点は試合終盤の70分以降に挙げており、なおかつ途中出場の交代選手がトータルで17得点を決めている。「現代サッカーで勝負を決めるのは途中出場の選手」という哲学を持つ指揮官は、戦略的に交代のカードを切り、そして勝利を手繰り寄せる術に長ける。
柏が勝てば12年ぶり三度目のルヴァンカップ制覇。この12年間、タイトルから遠ざかったばかりか、2018年にはJ2に降格を味わい、ここ数年は下位に沈む苦しいシーズンを強いられてきた。アカデミー出身の古賀は、小中学生時代に連続してタイトルを勝ち取る強いトップチームの姿を見て育った。
「強いレイソルを取り戻したい」
古賀のこの言葉にも象徴されるとおり、チームを再建したリカルド監督の下でルヴァンカップのタイトルを勝ち取り、勝利に彩られた新たな時代を築く。
文=鈴木 潤
【制作・編集:Blue Star Productions】
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記事提供元:Lemino ニュース
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