【ドジャースvsブルージェイズ】 "PS最適化"ド軍が2年連続世界一へ挑む!
イチオシスト

NPBもMLBもいよいよ2025年シーズン最終決戦へ――。伝説の瞬間は生まれるのか!?
■投打が噛み合い、短期決戦仕様に〝二刀流〟大谷翔平による、あまりにも衝撃的な「1試合3本塁打&10奪三振」の離れ業で2年連続のワールドシリーズ(WS)進出を決めたドジャース。
ここまでのポストシーズン(PS)を9勝1敗で勝ち上がったチーム状態について、MLBにも精通するお股ニキ氏はこう表現する。
「PS進出チームはどこもそうですが、特にドジャースは先発投手のレベルが非常に高く、球の強度、球速、変化、配球、洗練度、投げミスの少なさが際立っている。さらに、守備や攻撃でも細かい野球ができていて、遂行力の高さを感じます」
ただ、レギュラーシーズン(RS)終盤には5連敗を喫するなど苦戦。PSでは何が切り替わったのか?
「かつてのドジャースは、大味な一発攻勢でRSは勝てるのに、短期決戦で求められる繊細な野球に対応できないという印象が強かったです。しかし、本当に強い球団は臨機応変に大技小技を縦横無尽に繰り広げられるもの。今のドジャースは攻守両面でPSに最適化されたチームになっています」
その最適化具合を、投手、野手ごとに掘り下げよう。先発投手ではブレイク・スネル、山本由伸、タイラー・グラスノー、そして大谷の4投手がPSで好投し続けた。
「ここまで先発4人が高水準でそろうのは、歴史上でも類を見ないレベル。大谷、スネル、グラスノーは、RSをフル稼働していない分、PSではフレッシュな状態を保てている。あたかもチームが意図的に『ピーキング』(短期決戦に向けた最適化)を成功させたかのような構図です。
そんな中、ひとりだけRSを通してローテを守り抜いた山本がPSでメジャー初完投を決めたのは見事の一言です」

さらに、RSで足を引っ張っていた印象すらある救援陣も、ここにきて劇的な改善を見せている。
「若さと勢いのあるエメット・シーハン、160キロ超の速球とフォークでクローザーに君臨する佐々木朗希、球団ひと筋のレジェンドであるクレイトン・カーショーという、本来なら先発ができる実力者を戦略的にブルペンへと配置転換。
その分、今季不調のリリーバーを外すなど、役割を明確化させる采配が的中。弱点とされたブルペンを、今や強みへと変貌させました」
野手陣では、RS前半に絶不調だったムーキー・ベッツが復調。さらに、トミー・エドマンやキケ・ヘルナンデス、マックス・マンシーといった、勝負強さと野球IQを兼ね備えたベテラン勢がPSに向けて戻ってきたことが大きい。
「彼らベテランは勝負強い打撃だけでなく、要所要所の好守でチームに貢献。また、守備や走塁に課題のあるテオスカー・ヘルナンデスも、それを補うほどの勝負強い打撃力を発揮しています。
彼らのような『仕事人』の能力が加わることで、力一辺倒ではない、多角的な攻撃と守備を展開できるようになりました」
衝撃の1試合3発を放つまではPSで不調だった打者・大谷だが、四球を選び、申告敬遠を引き出すことでチームに貢献。それ以上に、大谷という存在そのものがチームに大きな恩恵をもたらしていたという。
「大谷不調の要因は、フィリーズ戦ではメジャー屈指の左腕3枚をぶつけられ、ブリュワーズ戦でも本来は中継ぎの左腕を『1番・大谷』対策としてオープナーでぶつけられたから。
結果的に大谷は打てなくとも、その後を打つベッツやテオスカー・ヘルナンデスら右打者が打ちやすくなる状況をつくり出していました。大谷の影響力が大きいからこそ、相手の継投から戦略まで狂わせてしまうのです」
■連覇のその先へ! 大谷のさらなる野望WSで対戦するブルージェイズは、大谷がエンゼルスからFA移籍する際に最後まで迷った、とされる因縁の球団でもある。今季はどんな戦力をそろえたのか?
「因縁という意味では、2021年にエンゼルス時代の大谷と本塁打王争いを演じたブラディミール・ゲレーロ・ジュニアは日本のファンにもおなじみのはず。今季PSでは6本塁打を放ち、ア・リーグ優勝決定シリーズMVPに。ナ・リーグ優勝決定シリーズMVPの大谷との主砲対決は必見です」
ア・リーグ優勝決定シリーズ最終戦で決勝本塁打を放ったジョージ・スプリンガーも要注意の右打者。PS通算23本塁打という〝10月男〟として有名だ。
「今季のスプリンガーは36歳にして非常に調子がいい。打率.309だけでなく、ゲレーロ・ジュニアの23本塁打を抑え、チーム1位となる32本塁打をマーク。1番打者として打線を牽引しています」
投手陣では、サイ・ヤング賞3度を誇る41歳のマックス・シャーザーが健在だ。今季は5勝5敗と力は落ちたが、その気迫はいまだ衰え知らず。
さらに、もうひとりのサイ・ヤング賞右腕で、8月にトミー・ジョン手術から復帰したばかりのシェーン・ビーバーも控えている。そんな中、最も警戒したいのは、22歳のルーキーながら、今季PSで2勝を挙げている右腕トレイ・イェサベージだという。
「イェサベージはシュートする独特な軌道のスライダーとスプリットを操る投手です。ただ、ビーバーやイェサベージを筆頭に右投手が多く、フィリーズのような強力左腕が少ないことは、大谷にとっては好材料と言えます」
そんな投手陣をまとめるのは正捕手のアレハンドロ・カーク。身長173㎝、体重111㎏の選手だ。
「今のMLBで正捕手を務めるような選手は、フレーミング技術はもちろん、データを駆使した配球でも際立っています。ドジャースのウィル・スミス、ベン・ロートベットとの捕手対決にも注目です」
今世紀初のWS連覇に期待がかかるドジャース。ただ、大谷が見据えているのは、その先に続くさらなる野望だ。
「ドジャース1年目に掲げた『WS10連覇』はリップサービスではなく、本気の目標でしょう。今年連覇できれば、夢の10連覇へと続く『ドジャース超黄金期』が本当に見られるかもしれません」
文/オグマナオト 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
