松山英樹が呼んだ横浜での熱気 問われる“ポストヒデキ”の存在
<ベイカレントクラシック Presented by LEXUS 最終日◇12日◇横浜CC(日本)◇7315ヤード・パー71>
連日多くのギャラリーが訪れ盛り上がりを見せた「ベイカレントクラシック Presented by LEXUS」。ZOZOチャンピオンシップの“後釜”として行われた第一回目はどのような課題が見えたのか。
前身大会は千葉県印西市で行われたが、数年前から他開催地を模索していた。というのも、ギャラリー数の確保はもちろんのこと、来日する選手の“体験”も大会を評価する基準となる。だからこそ、PGAツアーには都心近くの会場でトーナメントを開催したい意図があった。
PGAツアーアジア太平洋社長のクリス・リー氏によれば、選手による評価は上々。優勝を果たしたザンダー・シャウフェレ、コリン・モリカワ(ともに米国)も、プロアマで横浜でのプレーを心待ちにしている様子だった。
「横浜をできるだけ散策したい。午後や夜には出かける時間もあるし、東京にも近いので足を延ばすこともできる。見どころも多いですから日本を思い切り楽しみたい」(モリカワ)
「日本の新しい都市に来るのはうれしい。みんなこの大会に戻ってくるのをすごく楽しみにしている」(シャウフェレ)
今後の開催において大物選手を呼び込むには、選手の“体験談”というのも重要。そういう観点から見ても、横浜での開催は非常にポジティブな結果であったと言える。
とはいえ課題も少なくない。ギャラリー数は非公表だが、リー氏によれば「目標に達していない」と集客面で課題を残した。平日にギャラリーを呼び込みたいと、昨年大会から平日のチケット代を30%下げて販売。その効果もあり平日の集客には一定の成果があったとしながらも、悪天候の影響があったとはいえ、土日のギャラリー数には満足していない。
また、コースの“導線”部分も改善すべき点だ。最終日、松山英樹も心配そうにこうコメントしていた。「ケガをしている人がいなければいいんですが」。
連日多くのギャラリーが松山の組についたが、傾斜が強く細い道が続く同コースにおいて、かなりの渋滞も発生した。さらにホールは片側のみの観戦。16番から17番ホールは距離があり、選手の通り道をギャラリーが横断するため、交通整備を行いながらの観戦となった。そこでも多くのギャラリーが密集し、最終18番での優勝シーンを見届けられなかった人も多かった。
リー氏は「ファンの経験というのがPGAツアーで一番大事なポイント」と話す。来年に向けて導線改善は急ピッチで対応すべき点だ。
また、目標に届かなかったギャラリー数であるが、その多くが松山の組についた。松山は間違いなく大会の盛り上がりに一役買っていたが、今後も大会を継続していくうえで、もし松山が出場できなかった場合、ギャラリー数を担保できる保証はない。
日本開催のPGAツアーにおいて、やはり強い日本人選手は求められる。リー氏も松山の影響力を感じ、「他の選手も積極的にマーケティングしなければいけない」と危機感を持っていた。
そうした危機感は、松山自身も感じているのかもしれない。9月には自身の名を冠したアマチュア向けの予選会も実施。その表彰式では「10年以上PGAツアーで戦い、年下の選手がPGAツアーに来られない状況が続いていたので、早くこういう大会を開催したいと思っていた」と語った。
さらに大会の会見では「来年以降も、今年は1日競技でしたが、2日間、3日間の大会にできたらと思います」と、今後も予選会を実施していく意向を示しており、後身の育成を真剣に考えていた。
“ポストヒデキ”が問われるが、今大会で4位に食い込んだ金谷拓実を含め5人が米ツアーに参戦しており、同予選会を勝ち抜いたアマチュアの小林大河も堂々たるプレーを見せていた。
リー氏は「5人がPGAツアーで活躍していることはポジティブなこと。このフィールドをキープできればうれしい。日本はそういうポテンシャルがある選手がいる」と、次世代の日本人選手への期待感も示していた。
課題はありながらも、多くのギャラリーが国内外のトッププレーヤーの技に息をのんだ。プレーに魅せられ、笑顔になった、そんな時間が都心エリアの横浜で提供された。“日本の秋にPGAツアーがある”という風景が、これからもこの国のスポーツ文化として根付いていくことを願いたい。(文・齊藤啓介)
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