【ピエール瀧の「萌え萌やしソバ探訪録」】10杯目「昭和レトロ感あふれる、これが昔ながらのもやしソバだ!」
今回は川崎市の「ミカワヤ」さんへ
「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。
作業服姿の労働者が多いイメージのある街・川崎。だからこそ、こんな居心地のいいお店が必要なんですね。そして、そんな「ザ・昭和の町中華」のもやしソバは、なんとピエール瀧さんの"アレ"でした!
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――今回は神奈川県川崎市の「ミカワヤ」さんに来ています。隣が銭湯の「星乃湯」です。
ピエール瀧(以下、瀧) お、「ザ・昭和の町中華」という感じで、最高の店構え。
――実はドラマ『ドクターX』や映画『ある男』のロケ地になったお店なんですよ。雰囲気ありますね。
瀧 なるほど。ここは川崎でも産業道路に近い立地でしょ。昼時は作業服で頭にタオルを巻いてる人たちでにぎわってる感じが想像できるね。
――早速、おじゃましましょう。
(♪~チリンチリン)
瀧 いいねえ。ドアを開けると鳴るアナログタイプの鈴。この音を聞くとなんか腹が減るよね。そしてテーブルも年季が入っているけどきれいにしてある。しかも、8人用の長テーブルだよ。珍しい。
――メニューもたくさんあります。
瀧 この赤地に白の文字っていうお品書きがいいよね。そして、この店にはもやしソバ(800円)とサンマーメン(830円)がある。
店主の宮勇作さん(以下、宮さん) いらっしゃいませ。
瀧 こんにちは。もやしソバとサンマーメンの違いはなんですか?
宮さん もやしソバはもやしメインなんですけど、サンマーメンはもやし、白菜、シイタケ、タケノコなどの野菜が入っています。
瀧 じゃあ、サンマーメンと野菜ラーメン(830円)の違いは?
宮さん サンマーメンはあんかけなんですよ。で、野菜ラーメンは醤油ラーメンの上に炒めた野菜がのっているんです。
瀧 なるほど。あれ? 淡々メン(780円)ってメニューがありますけど、ああいう字を書くんですか? 普通は担々麺ですよね。
宮さん ああ、あれは私の前に店をやっていた人が面白がって書いたんですよ。店の軒先に「ちゅーか」って平仮名で書いてあるんですけど、それも前の人が面白がってやったみたいです。
瀧 ということは、ご主人は2代目ということですか?
宮さん 実は姉夫婦が1970年くらいにこの店を始めたんです。で、バブルの頃に店が忙しくなったので、私が田舎から出てきて手伝っていたんです。その後、姉夫婦が別の場所に店を出すから、おまえがこの店を継ぎなさいってやり始めたのが91年です。その頃からもやしソバ、サンマーメン、淡々メンはありました。
瀧 そうなんですね。じゃあ僕はいつもどおりもやしソバをいただきます。そして、せっかくなんで淡々メンもお願いしちゃいましょう。
――僕はオムライスで!
瀧 えっ? 麺じゃないの?
――はい。ミカワヤさんはオムライスもおいしいと評判なんです。
宮さん うちの淡々メンはよくある真ん中に肉がのってるのじゃなくて、卵とニンニクと唐辛子を使ったやつですけどそれでいいですか?
瀧 はい。川崎のタンタンメンは、そういうタンタンメンだと教えてもらってますから大丈夫です。
宮さん では少々お待ちください。
――瀧さん! 衝撃のタンタンスープ単品(550円)がありますよ。
瀧 卵とニンニク味のスープっていうことになるんだろうけど、550円という値段からすると、どんな量で出てくるんだろうね?
宮さん お待たせしました。もやしソバです。
「もやしソバ」(800円)
瀧 具だくさんですね。もやし、細切りのニンジン、ニラ、細切りの豚肉が入っています。キリッとした醤油味で、とろみは強め。この連載を始めたときに「無意識にもやしソバを頼んじゃう」って言ったけど、そのときに漠然と頭の中で描いていたもやしソバの味がこれだよ。これは本当にうまい!
――瀧さんの考えるもやしソバの具現化ですね。
瀧 で、淡々メンは辛さが強く出ているんだけど、あっさりしている。こっちもうまいよ。そして、評判のオムライスもひと口いただいて......。これもケチャップの味が濃いめで昔ながらのオムライスという感じ。最近のオムライスってトロトロ卵だったり、オシャレで上品になってきたじゃん。でも、そうじゃなくてクラシックな味。最近はこういうのが少なくなってきてる気がするな。
昔ながらのオムライスも堪能
――僕はこっちのオムライスのほうが好きです。
瀧 なんか、もやしソバも淡々メンもオムライスも「これを食べて午後の仕事を頑張ってね」と言われてるような気がする。ホームの安心感って感じ。
「『これを食べて仕事を頑張ってね』と言われてるような気がする」と瀧
――瀧さん、そこに「麺類+350円でライスと餃子のセットできます」って書いてあります。
瀧 単品で足りない人は、セットをつければいいと。
――あと、メニューに「肉大盛り200円増し」って書いてありますよ。ご飯大盛りはよく見ますけど肉大盛りは珍しくないですか?
宮さん うちは昔から労働者が多い店だから、肉系のメニューがよく出るんですよ。それで「肉を大盛りにできる?」ってよく聞かれたもんだから、じゃあ、メニューに入れとこうって思ったんです。
瀧 なるほど。なんかこんな言い方が正しいのかわかんないですけど、自分ちの近所にあったら気兼ねなく通ってると思います。それもパジャマ姿で。
宮さん 隣のお風呂屋さんのお客さんもよく来るんですよ。
瀧 ああ。旦那さんが先に銭湯から出て、この店でビールを飲みながら奥さんを待ってるパターンとかですか? 奥さんの髪が濡れてて「お待たせ」って店に入ってくるような。
宮さん はい。そのパターンは多いです。
瀧 でも、銭湯の隣にこのお店があるのは、お客さんからしたらすごくありがたいことですよね。
宮さん だからうちは、午後を準備中にしてることがほとんどないんですよ。銭湯が3時から開くので、早いお客さんは4時前からやって来るんです。
瀧 おっちゃんたちが「早くビール飲ませろ!」って(笑)。
宮さん そうなんです(笑)。
瀧 最高じゃないですか!
店主の宮勇作さんと
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■ミカワヤ
神奈川県川崎市川崎区追分町15-2
044-344-1988
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO
記事提供元:週プレNEWS
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