市川紗椰が愛してやまない『スター・トレック』のオススメ回を紹介! 「未来社会の理想像やAI、多文化共生」をテーマに
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「『新スター・トレック』」について語る。
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大好きすぎて語るのが恐れ多い『スター・トレック』シリーズ。勇気を出して『新スター・トレック』を紹介します。1987〜94年に放送されたテレビドラマ第2作で、原題は『Star Trek:The Next Generationm』。タイトル後半を略した「TNG」と呼ばれています。
全テレビ番組の中でも私の好きな番組トップ3に入ります。「もし人類が今よりもっと賢く成熟し、宇宙に広がっていけるとしたら?」という夢を本気で描いた、哲学と冒険を融合させた宇宙叙事詩。ただのSFアクションではなく、未来社会に向けた哲学的な問いを投げかけてくるのが、この作品のすごさです。
TNGは、24世紀を舞台に宇宙艦エンタープライズDの航海を描いた物語。冒険にとどまらず、「善と悪の曖昧さ」「人工知能と人間の境界」「外交的駆け引き」「時間や空間のパラドックス」などのテーマを通して、政治・哲学・倫理・人間性を深く掘り下げます。30年以上前の作品ながら、未来社会の理想像やAI、多文化共生というテーマは現代にも響きます。6シーズンもありますが、1話完結型が多いので、気軽に見始められる。その中から、オススメの回をいくつか。
まず見てほしいのは「人間の条件」という回。アンドロイドのデータ少佐が「人間なのか、それとも所有物なのか?」という裁判にかけられます。法廷で語られるのは人工知能と人間の境界、そして、尊厳と自由は何かというテーマ。スター・トレックの哲学性を象徴する傑作回です。
言葉が通じない相手との交流を描いた「謎のタマリアン星人」も名作です。この回では、ピカード艦長が「比喩でしか話せない異星人」と孤立します。描かれるのは、言語と文化の違いをどう乗り越えるか、という普遍的なテーマ。見ているこちらも胸が熱くなります。
ヒューマンドラマ的な回の代表は「超時空惑星カターン」。ピカード艦長が一瞬のうちに、異星での「ひとりの人生」を丸ごと体験します。はかなくも美しい物語で、見終わった後、自分の人生の重さを静かに考えてしまいます。
宇宙的スリル・サスペンスが光る回ですと、TNG中で最大の脅威である機械生命体「ボーグ」関連回がすさまじいです。「無限の大宇宙」回ではボーグが初登場し、人類の無力さを突きつけます。「浮遊機械都市ボーグ」では、ピカード艦長がボーグに同化される衝撃展開があり、シリーズ最大のクライマックスが。そして「ボーグ〝ナンバー・スリー〟」では、ボーグの個性と人間性を問うドラマへと発展します。
ほかにも、異なる歴史のエンタープライズ号が現れ、世界線が変わってしまう並行世界ものの傑作「亡霊戦艦エンタープライズ〝C〟」だったり、まだワープ技術を持たない文明との接触を描く知的ドラマ「ファーストコンタクト」、データの首が19世紀の地球で発見される!?という、タイムトラベルと歴史のパズルを楽しめる「タイム・スリップ・エイリアン」などがオススメ。
今回は紹介できませんでしたが、キャラクターたちもとにかく魅力的! ライカー副船長の気取った立ち姿は見どころです。
●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。データに"ガチ恋"してた時期あり。Netflixでぜひ。公式Instagram【@sayaichikawa.official】
記事提供元:週プレNEWS
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