これがハイブリッド!? 24年ぶりの復活で速攻試乗!! ホンダ6代目プレリュードの走りにキョーガク!
ホンダ独自のハイブリッド技術が進化を遂げ、走る喜びを高次元で磨き上げた6代目プレリュード。日常での使いやすさも追求したという
"デートカー"として一世を風靡したホンダの2ドアクーペ・プレリュードが、2001年の生産終了から24年の時を経て、ついに復活! 令和の時代に2ドアクーペを復活させた"真意"とは?
時代錯誤か、それとも未来への布石か。自動車研究家・山本シンヤ氏が新型プレリュードに速攻試乗し、その"走りの本気"を徹底検証。さらに新型プレリュードの課題にも迫ってみた。
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■ホンダが本気で造った2ドアクーペの実力とは!?――9月5日、ホンダの2ドアクーペ・プレリュードが、24年ぶりに復活しましたね。
山本 そうなんです。今回登場したのは6代目で、2001年に5代目の生産が終了して以来の再登場となります。
――価格は617万9800円です。どうみますか?
山本 ネットでは「高すぎる!」との声もありますが、SUVやミニバンが主流の今、背の低い2ドアクーペを出したこと自体を評価すべき。ただ、月間販売目標は300台と控えめで、ビジネスとして成り立つのか心配です(笑)。
抑揚のある滑らかなボディラインが実に美しい。ボディサイズは全長4520mm×全幅1880mm×全高1355mm
左右のリアコンビランプを一文字でつないだテールランプが目を引く
――そんな話題の6代目プレリュードに早速試乗されたとか。
山本 はい。今回は量産モデルで、静岡県伊豆市の「自転車の国 サイクルスポーツセンター」で試乗しました。5kmのロードコースはアップダウンのあるワインディングを模したレイアウトで、サーキットとは違う総合力が試される道です。
――乗ってみた印象は?
山本 率直に言って、非常に良かったです。完成度の高さはもちろん、ホンダのハイブリッド戦略の〝本気〟を実感しました。
ホンダ独自のハイブリッドシステムを搭載。ハイブリッド感が全然ない
――パワートレインは2リットル+2モーターの「e:HEV」と、新開発の「Sプラスシフト」の組み合わせです。
山本 e:HEVは効率だけでなく、官能性にもこだわったシステムで、このプレリュードは、ハイブリッド嫌いの人でも納得できる仕上がりです。何も知らずに乗ったら、ハイブリッドだと気づかないかもしれません。
――マジか!?
山本 多くのハイブリッド車は燃費重視で、エンジン回転と加速感のズレがドライブフィールを損ないます。でもプレリュードは、加速時にエンジンと駆動系が直結しているような感覚があり、エンジンの伸びやレスポンスも良好。
さらに回転数を段階的に制御することで、多段トランスミッションのような加速感が味わえます。減速時もアクセルオフで回転数を維持し、ダウンシフトまでしてくれる。制御の完成度はGRヤリスのDAT並みです。
――へぇー!
山本 さらに、エンジン回転数と完全に同期した心地よいサウンドも加わり、まるでフルバランスされたスポーツエンジンのようなフィーリング。世界で最も官能的なハイブリッドと言ってもいい。
ブレンボ社製の大容量ブレーキなど高性能パーツを搭載し、優れた制動力を誇る
――フットワークにはシビック・タイプRの技術も使われているとか。
山本 よりワイドで低いディメンション(車両寸法)に加え、性能一辺倒ではない絶妙なセットアップ。かつてのアコードユーロRやオデッセイ・アブソルート、アヴァンシア・ヌーベルバーグを思い出す乗り味です。タイプRが短時間で旋回を完結させるのに対し、プレリュードは滑らかさを重視したハンドリングですね。
――絶賛ですね!
山本 街乗りではスッキリ感、ワインディングではリアルスポーツ並みの旋回性能、高速ではレジェンドクーペのような安定感。機敏すぎず、鈍感でもない絶妙なバランスで、「爽快」を超えて「すがすがしさ」を感じました。
――デザインはトヨタのプリウスに似ているという声もありますが?
山本 実際には、初代プレリュードのロングノーズ・ショートデッキのプロポーションをしっかり継承しています。
内装は、ドライバーだけでなく助手席のゲストにも快適な時間を提供するため、シートの形状などにも配慮
リアシートの背もたれを倒すと、ゴルフバッグ2個を収納できてしまう
――内装はどうでした?
山本 レイアウトはシビックに似ていますが、独自性も感じられます。カラーコーディネートやセンターコンソールの処理はスペシャリティカーらしい雰囲気。ただ、メーターはもう少し凝ってもよかったかも。価格も大事ですが、もっと〝スペシャリティ感〟を出してほしい。
――具体的には?
山本 走りは十分なので、ボディカラーやインテリア、装備などのソフト面が重要です。
――総括すると?
山本 プレリュードはマーケティング主導ではなく、エンジニアの「やりたいからやる」が詰まった一台。だからこそ、ホンダのハイブリッドシリーズの象徴として育てていくべきです。今は軽スーパーハイトワゴンやミニバン、SUVが主流の時代。そんな中で2ドアクーペを出すのは、時代錯誤に見えるかもしれません。
――確かに。
山本 でも、「売れなかったから3、4年でやめます」は絶対にダメ。トヨタもセリカ復活の話がありますし、ライバルがいないと市場は盛り上がりません。日産もシルビアを出せばいいのに(笑)。
――プレリュードを育てよと。
山本 ホンダはCR-Zや2代目NSXでハイブリッドスポーツを提案しましたが、途中で挫折しました。今度こそ芯を持って続けてほしい。復活は素晴らしいことですが、やるからには本気で取り組んでほしいですね。
撮影/山本佳吾
記事提供元:週プレNEWS
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