「たまたま重なった」地元&メジャーでの初V プロ9年目・金澤志奈は悲願達成に涙
<ソニー 日本女子プロ選手権 最終日◇14日◇大洗ゴルフ倶楽部(茨城県)◇6840ヤード・パー72>
プロ9年目、30歳。金澤志奈が女子プロゴルファーNo.1決定戦でツアー初優勝を果たした。メジャー大会、そして実家から車で30分のコースで挙げた初タイトル。「どの試合でもいいから、とにかく優勝したかった。たまたま地元でのメジャー。重なってうれしいです」。普段は感情を表に出さず、クールな印象を与える金澤だが、今回ばかりはうれし涙があふれた。
高校を卒業後、「学生時代は痩せていたし、技術面でも劣っていたので」と、申ジエ(韓国)のコーチでもある日本ツアー1勝の金愛淑(キム・エイスク)の助言もあり、大学に進学。2016年に「日本女子学生」を制し、その翌年にプロテストを受験して一発合格を果たした。2020-21シーズンに初シードを獲得。その後は初優勝を期待されながらも、なかなか勝利に恵まれなかった。
今年は2位が2回に、3位も2回。トップ10には6回入っていた。「去年までは『優勝できるのかなあ…』っていう思いだった。今年に入ってからは優勝争いもしたし、最終日が課題だったけれど、伸ばせるようになって自信がつきました」。今年は“優勝”の二文字を意識しながらのプレースタイルにチェンジ。この日も力強い眼差しで戦った。
首位と1打差を追いかける立場で、最終組でスタート。後退する佐藤心結と桑木志帆に対し、前半で1バーディ・ボギーなしと伸ばして、2打のリードを奪って後半に向かった。15番をボギーとして桑木と並び、緊張感が増したが、16番からの上がり3ホールは“寄せワン”で難なくパーをセーブ。「(アプローチは)得意です。飛ばないので、小技がどうにかならないと戦えないゴルフ人生。外しても寄せる自信はあります」。桑木とのプレーオフに突入した。
18番で行われた1ホール目は、「“緊張する勝ちたい、緊張する勝ちたい”って気持ちが忙しかった」と心境を明かす。ティショットを右に大きく曲げて「うわっ」と焦ったが、幸運にも木に当たったボールがラフへ。「そこからは“勝つ”という思いでプレーしました」。ボギーとした桑木に対し、カラーから寄せてパー。最後まで“らしさ”が光った。
地元ということもあり、多くのファンが応援に駆け付け、最後までプレーを見守った。「初日からすごい声援でした。たくさんの方が応援に来てくださって、すごく力になりました。この4日間、曲げてもラッキーが多かった。ラッキーパーもけっこうあったので、地元の応援があってのことだと思います」。大声援が天まで届いたのか、ゴルフの神様も金澤にほほ笑んでくれたようだ。
「私が楽しめばファンの方も楽しんでくれるかなと思って」と、今週は笑顔でコースを歩くことを心掛けた。だが、優勝を決めて18番グリーンを下りるとき、尊敬するジエの姿を見つけて、涙があふれた。「緊張がほぐれました。ジエさんも待っていてくれたので、こみ上げるものがありました」。多くの人に囲まれ、やっとその中心に立つことができた。
年齢を重ねる中で、自身のプレースタイルにも変化が生まれてきた。「飛ばないし、ショットにも自信がないし、安全な方を狙っていくタイプだった。若い選手や飛ぶ選手がたくさん出てきて、そういうスタイルでは通用しない。自信がついて、攻めのスタイルでいけるようになった」。次の目標は「複数回優勝」。愛くるしい笑顔を見せて優勝会見を終えると、すぐにファンのもとへ向かってサイン対応。感謝の言葉を伝えた。(文・笠井あかり)
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