隣のコースから飛んできたボールで左目を失明 ”独眼竜”のドラコン2階級チャンピオンが語るドラコンの面白さとは?
ドライビングコンテスト、略してドラコン。巨体の漢たちが、正確性度外視で飛距離を追い求める世界……というイメージがあるかもしれないが、実はそういうわけでもない。JPDA(日本プロドラコン協会)が開催している“ドラコン”では階級制を導入していることもあり、小さな女性からシニアまで、幅広い選手が出場している。また、決められた幅の中に収めなければ記録にならないこともあり、飛距離はもちろん、精度も求められるのだ。9月6日(土)、東名カントリークラブにて開催されたJPDA静岡大会にて、“独眼竜”と呼ばれ300ヤード超えのショットを連発していたドラコンプロ、森野貴大に話を聞いた。
森野が”独眼竜”と呼ばれているのは、左目を失明しているから。「2021年に、ラウンド中の打球事故で失明しまして……隣のコースから飛んできたボールが直撃したんです。本当に突然の出来事でした」。もともとは”競技ゴルフ”に出ていたものの、失明を機にティーチングとドラコンに転向したという。
「ドラコンは重量級の人がやる競技」というイメージがあった森野だが、JPDAが階級制を導入していると知り、「アプローチやパットは両目のときとかなり感覚が変わりました。けど、ティショットは片目でも感覚があまり変わらずに打てたんです。飛ばしには自信があったし、やってみようと思いました」と門を叩いた。
JPDAの試合は、3ラウンドの合計飛距離によって勝敗が決まる。1ラウンドの制限時間は1分10秒(試合によって異なる場合もある)。この短時間のうちに3球を打ち、規定範囲内に入った最長飛距離のボールが記録となる。規定範囲内に収まらなければそのラウンドの記録は0になっていまい、かなり不利になる。「ただ飛ばすだけじゃダメ。精度が高いだけでも勝てない。風を読むことも必要だし、スピン量のコントロールも求められる。総合力が必要で、すごく緊張感があります」と、この競技の虜になった。
また、対戦相手との駆け引きにも面白さがあるという。「僕は絶対に最初に打ちます。対戦相手に『俺は入れたぞ』ってプレッシャーをかけるんです。実は、以前タイトルマッチで自分がやられて、焦って負けてしまった。それから自分がやるようになりました。選手によって駆け引きの仕方は違うので、そこを観察するのも楽しいと思います」と、ただ飛ばすだけでなく、心理戦も繰り広げられているそうだ。
この日、森野は4試合に出場して2勝を挙げ、最長飛距離は325ヤード。スイングを見て気になったのが、そこまで”ドラコンっぽく”ないことだ。「やはりこのルールは枠に入れることも大切です。関節を緩めてドラコンっぽく打つ方が飛びますが、僕はコースの延長だと思って打っています。そっちの方が自分がプレーヤーとしてやってきた経験が生かせるんです。
また、左目が見えくなったことで「ドローが打ちにくい」というが、「背骨の軸を7~10度くらい右に傾けることで、視野を確保して打っています。打ちやすいフェードは枠内を確実に捉えたいときに、他は基本的にドローで打ちます。距離を稼ぐ上では、ランも稼げるドローが圧倒的に有利なので」と、ハンデを背負いながらも工夫して戦っている。現在、森野は無差別級と-76kg級の2階級でチャンピオン。11月に行われる「ドラコンプロ タイトルマッチ2025 Season.2」でのタイトル防衛にも期待したい。
■森野貴大
1993年生まれ。2021年に打球事故で左目を失明したことを機にドラコンの世界へ。JPDAのオープン無差別級、オープン-76kg級の現チャンピオン。
<ゴルフ情報ALBA Net>
記事提供元:ゴルフ情報ALBA Net
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。