【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第44回 離れて思う日本のすごさ、素晴らしさ
板倉が語る! 離れて思う日本のすごさ、素晴らしさ
8月にオランダ1部の名門アヤックス・アムステルダムへ。欧州生活も6年以上となった板倉滉が、しみじみと感じる日本の便利さ、素晴らしさ、そして日本代表スタッフの素晴らしさを語り尽くす!!
■欧州で心から欲する日本のアレアヤックス・アムステルダムでのデビューとなったオランダ1部リーグ(以下、エールディヴィジ)の第2節、ゴーアヘッド・イーグルス戦(8月17日)。僕としては試合にいい入り方ができたと思っている。
けれど、結果は2-2のドロー、77分には負傷交代となってしまい、第3節のホームゲーム、ヘラクレス戦(8月24日)も大事を取って欠場。幸先のいいスタートとはならなかったが、大事なのはシーズンを通してチームに貢献できるかどうか。チームやファンの期待に応える活躍をしていきたい。
FCフローニンゲン(19〜21年)にいた時期も、オランダの首都であるアムステルダムにはちょくちょく来ていた。目当ては市内にある焼き肉店。和牛専門を売りにしているだけにかなりのレベル。当時、ホームシックによる寂しさをA5和牛のタンやカルビで埋めていたのが懐かしい。
僕ら〝海外組〟は、日本で当たり前だったモノがないという壁にぶつかることが多々ある。特に海外に住み始めた頃は次々と直面して、何度も心が折れそうになった。
例えば、日々の生活面でいえばトイレまわり。まず、ウォシュレットを備えた便器なんてものはない。もちろん温かい便座もない。ヨーロッパの寒さは厳しい分、ますます身にこたえる。トイレットペーパーも硬い紙ばかり。日本を訪れた外国人観光客がまずトイレの素晴らしさに驚くというが、その気持ちが海外に来て理解できた。
そして、お風呂。ボタンひとつ押せば、自動的に風呂が沸く機能が一般家庭に普及しているのは、おそらく日本だけなんじゃないか。たぶん、追いだき機能のスイッチに対する飢え具合は誰にも負けない(笑)。ささいなことだけど、生活環境の充実具合で日本に勝る国はないと思う。僕は帰ってくるたび、ストレスのなさに感心する。
■日本に帰国したら、真っ先に向かう場所ホスピタリティ、細かい気配りというのも、日本は世界一だと思う。僕は細かいことを気にしないタイプなのだが、ホテルなどで段取りが悪く、無駄に何時間も待たされたり、リクエストが長時間後回しにされたりすると、さすがに気になってくる。「いったい、どうなっているんだ」と。
でも海外においてはそういうケースもけっこう多い。たいていの人たちが自分の仕事とそうでない部分の線引きをはっきりさせていて、必要以上に働くことをしない。わからなくはないんだけど「やることはやってよ」というのが正直なところだ(笑)。
その点、日本はすごい。身近なところでは、日本代表スタッフの皆さん。僕ら選手はいろいろ無理をお願いしちゃっているのだが......。僕が記憶する限り「それはできません」と言われたことは一回もない。
それこそ、招集を受けて移動する際の諸々の手配、車移動、チャーター便など、微に入り細に入り完璧に応えてくれる。U-18の頃からお世話になっているけど、ストレスを感じたことはない。さらには、身内の観戦チケット手配、急遽宿泊することになった場合のホテルの確保に至るまで、すべてこなしてくれるのだ。
日本ではすべての環境が整っていて、自分は恵まれているなと、海外に来ると心から感じることができる。
食事に関しても、やはり日本はハイレベル。帰国後、僕は真っ先に日本ならではの食を楽しむことに決めている。なぜか羽田空港で最初に食べたくなるのは、𠮷野家の牛丼。これは海外組はみんな同感してくれるはず。
まとまった日本でのオフに、必ず足を運ぶのは焼き鳥やふぐ料理のお店だ。焼き鳥に使われる高品質の炭と絶妙な〝焼き技〟は、日本でしか味わえない。ふぐ料理は、てっさ(ふぐ刺し)に始まり、焼き、唐揚げ、鍋、そして雑炊という流れも日本ならでは。
代表のみんなで集まって食事することも多い。だいたい急に集合がかかるのだが、行くのはほとんど焼き肉店。6月、7月は(南野)拓実君といることが多くて、ほかにトミ(冨安健洋)や(田中)碧、タケ(久保建英)と集まって焼き肉をつついた日もあった。
こんな感じで、離れて思う日本の良さは挙げ出したらキリがないし、恋しくなることだって多い。でも、僕はアヤックスに移籍したばかりだし、まだまだヨーロッパを主戦場にして戦い続けるつもりだ。そこで大事なのが、気の持ちようだ。移り住んだ先々で楽しさを見つければいい。
アムステルダムは人口90万人に対して自転車が100万台もある〝自転車の町〟だというので、僕も早速バイクみたいなごっつい電動式自転車を購入した。それをビュンビュン走らせるのは息抜きになる。慣れない環境の中にも楽しみを見つける心がけは、海外生活に限らず、自分を助けてくれるだろう。
板倉 滉
構成・文/高橋史門 写真/アフロ
記事提供元:週プレNEWS
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