"在日不良ベトナム人"=「ボドイ」の犯罪が悪質化している!
今月13日、密売価格で約52億円相当の乾燥大麻約1t余りを東京港に密輸したとしてベトナム人3人が逮捕された。写真は押収された大麻
技能実習生として来日するも職場から逃亡、やがて日本の闇の中で生きるようになったベトナム人、通称「ボドイ」(ベトナム語で「兵士」の意味)。彼らによる窃盗などの犯罪は、かつてより大規模に、巧妙になってきた。
中国や東南アジア諸国の"悪い人たち"とネットワークをつくりつつあるボドイ犯罪の今を、ルポライターの安田峰俊氏が追った。
■銅価格の高騰とともに盗難件数も急増近頃、日本の地方社会を震撼させているのが、電力供給や通信回線などわれわれの生活に幅広く使われる「銅線」の窃盗問題だ。
今月、滋賀県近江八幡市のマンション建築現場から銅線7.5㎞(100万円相当)が盗まれた。前月には福岡県の複数の農園でも同様の被害が起きている。
今年5月以降、神奈川、茨城、長野、福島など各県で野球場のナイター設備の銅線ケーブルが次々と盗まれ、高校野球地方大会への影響が懸念された。
また、昨年9月には群馬県嬬恋村の万座温泉スキー場が300万円以上相当の銅線盗難に遭い、リフト5機のうち4機が稼働不能に。同冬は営業の大幅縮小を余儀なくされている。
太陽光パネル施設の銅線ケーブルの被害も大きい。警察庁の調べでは、昨年の全国の太陽光発電施設における金属ケーブル窃盗の認知件数は7054件で、前年から1693件増。
相次ぐ窃盗により保険会社の保険金支払額が急増し、保険料も高騰した。そのことが事業者の収益を圧迫、太陽光パネル産業全体が岐路に立たされているという。
摘発例を見る限り、銅線窃盗は発生件数、被害金額共に外国人犯罪者によるものが明らかに目立っている(もちろん、日本人の摘発例もゼロではない)。
例えば今年7月、神奈川県川崎市の工事現場の銅線約2.9t(350万円相当)を盗んだ容疑で摘発されたのはベトナム人の若者2人。彼らのグループは、関東を中心に6都県で約50件の銅線窃盗に関与した可能性があるとされる。
また、今年6月に太陽光パネル施設の銅線窃盗の疑い(被害総額1.2億円相当)で逮捕されたのはカンボジア人、昨年6月に銅線3t(539万円相当)の窃盗で摘発されたのもカンボジア人とベトナム人だった。
逮捕者の多くは20代、30代の東南アジア系の若者で、職場から逃亡した元外国人技能実習生だ。こうした人々は、ベトナム人の場合は「ボドイ」(「兵士」の意)と呼ばれる。
フェイスブックなどに掲載された〝依頼〟に応じ、面識がない者同士が集まり窃盗を行なうケースが多い。いわば外国人版のトクリュウ(匿名・流動型)犯罪だ。
銅線が狙われる理由は、近年進んでいる銅価格の世界的な値上がりである。埼玉県内でスクラップ回収業を営む外国籍の50代男性・原口氏(仮名)はこう話す。
「過去の経験上、銅価格が1㎏1000円に近づくと窃盗が増え始めます。最近だと、コロナ下の2021年にこのラインを突破しました。その後も高騰が続き、今年7月時点の価格は1㎏1430円と、非常に高い数値を記録しました」
銅価格の高騰は、ウクライナ侵攻に伴うロシア産銅の供給の滞りや、EV(電気自動車)の世界的普及に伴う銅線需要の増大などが理由とみられている。
過去、銅価格が比較的高値(1㎏800円台)だった07年頃にも、外国人グループが銅製の寺の鐘やエアコンの室外配管を盗む事件がしばしば起きた。現在の銅価格は当時と比べても倍近くに上がっていて、当然、手段を選ばぬ「調達」の需要が生じる。原口氏は言う。
「現在、太陽光パネル施設や野球場がよく狙われるのは『盗難されたことがすぐに発覚しない』と判明したからです。普通の電線を切ると停電ですぐにバレますが、これらの施設は翌日から数日後まで被害がわからず、アシがつきにくいんです」
■盗難された銅線を買い取るのは中国人ただ、気になるのは盗まれた銅線の行き先である。
「一部の中国人経営の金属ヤード(金属スクラップ保管場)が、見境なく買い取っているのです」
警察関係者はそう話す。
事実、今年2月には栃木県小山市のヤードの経営者と社員(いずれも中国籍)が、複数の外国人窃盗団による盗品の銅線を買い取った容疑で摘発された。
また、7月にも神奈川県相模原市で、中国人経営者が運営するN社のヤードの工場長と従業員(いずれも中国籍)が、同様の容疑で逮捕されている。
こうした事件について、前出の原口氏は、「中国人経営のヤードが5~6年前から一気に増えた」ことを背景に挙げる。それは銅価格の高騰傾向と軌を一にした動きだ。
「現在、金属ヤードの8割は中国系という感じです。関東では特に千葉県北部に多いですね。山の中の土地を1000~2000坪も買い、大規模に運営する例も増えています」
千葉県某所にある中国人経営のヤード内部。店外には「銅線買い取り」の文字も。ちなみに盗品買い取りで事件化したヤードとは無関係
コンプライアンス意識の弱い家族経営的な会社も多く、買い取りのハードルは低い。実際、筆者が千葉県四街道市内のヤードに金属スクラップを持ち込んでみたところ、事務所の中国人女性は、こちらの身元を一切確認せずにそれらを引き取った(少量のため買取料はなし)。
「ヤードの従業員としてベトナム人のボドイを雇う会社も多い。社会保険が不要で、低賃金で済みますからね。当然、そういう遵法意識の低い会社はボドイの間で評判が広がり盗品がより持ち込まれやすくなります」(前出・原口氏)
中国系ヤードは中国国内に販路を持っている。日本で集められた金属スクラップは港に持ち込まれ、中国に売却されていく。
実際にヤードの利用が判明した輸送船を千葉・船橋漁港に見に行くと、船体に中国語が書かれた巨大な船がちょうど出港するところだった(写真)。日本各地の野球場や工事現場からボドイたちが盗み出した銅線は、こうして海を渡っていると思われた。
千葉県船橋の港から出港する中国籍の巨大な輸送船。ヤードから直接金属(銅線)を運び入れ、海外に送り出していく
銅線被害の増加を受け、来年からは金属買い取りの際の本人確認を義務づける新法が施行される。だが、銅線価格の高騰が続く限り、ルールを無視した買い取りは続いていくことだろう。
■自動車販売会社を狙う車両窃盗の手口多国籍的な在日外国人犯罪問題はほかにもある。例えば、昨年多発した車両窃盗だ。栃木県のクルマ業界関係者の村本氏(仮名・50代)はこう話す。
「空港付近で住民が経営している屋外駐車場や、カーディーラーの屋外展示車が次々と被害に遭いました」
中でも大規模な被害が明らかになったのが、中古車販売大手「ウィーカーズ」だ。23年、保険金不正請求で騒ぎになった、あの「ビッグモーター」の事業を昨年5月に引き継いだ会社である。
昨年秋までに群馬・埼玉・山梨・長野・新潟などの各店舗が荒らされ、車両30台以上が盗まれた。
被害車両のうち、3分の2ほどは行方不明のまま。昨年4月に同社の甲府店が被害に遭った際には、ベトナム人窃盗犯が運転する盗難車両がほかの一般車に衝突し、全損する事故も起きた。
なお、同年10月に新潟南店での窃盗容疑で5人が逮捕されているのだが、彼らはいずれもベトナム人。うち4人がボドイだった。こちらもトクリュウ型の犯罪だったとみられており、他店舗の事件と手口の構図が似ている。
「実は、トヨタやホンダの正規店でも全国的に被害が出ていました。店の体面を守るために名乗り出なかった店舗も多く、被害の全容は把握できないと思います」
昨年10月、盗難に遭った車のドライブレコーダーに残されていた、買い手との受け渡し地点とみられる場所。住人の8割はアジア各地の外国人だった
車両販売店には、セキュリティ意識が弱く店内にカギを置きっぱなしの会社もあり、そうした店舗が標的にされやすかったようだ。
「一方で、犯人側は周到です。店のタッチレスキーの電池切れに備えて、予備のボタン電池をあらかじめ準備し、盗難した車両を高速道路のパーキングエリアなどにしばらく放置して、GPS追跡がないことを確認してから移動させたりするといったように、かなり計画的な犯行もありました」
盗まれたクルマは、フェイスブックを通じて別の外国人に転売されたり、中東系の在日外国人の車両ヤードに流れて海外に売られたりする。
昨年10月、筆者が栃木県内で盗難されたホンダ車両のドライブレコーダー映像を頼りに取材を進めたところ、ベトナム人の窃盗者が、カンボジア人とみられる客に車両を引き渡す電話をかけていた例もあった。
なお、こうして転売されたクルマのナンバーをつけ替えたり、偽造の免許証や車検シールを販売したりするのは中国人が多い。あらゆる国の〝悪いネットワーク〟が総動員されているのだ。
■重く、大きくなるボドイの犯罪「ボドイの金儲けの手法には、一種のはやり廃りがあります。クルマや銅線の窃盗のようなひとつの手法を、同時多発的に多くの人がマネするんです。昨年はクルマ窃盗、今年は盆栽や銅線の窃盗。ほかに最近増えたのが、ドラッグストアでの大量万引と転売です」
在日ベトナム人のキム氏(仮名・20代)はそう話す。
警察庁によると、昨年の全国のドラッグストアにおける盗難被害件数は、過去最多となる1万5161件。日本人による窃盗も含む数字とはいえ、外国人犯罪の場合は1回の被害額が日本人犯罪のほぼ8倍(約8万円)に上っている。
都内で司法通訳を務める日本人男性の北氏(仮名・40代)は、実態をこう説明する。
「3、4人をひと組として、店員数が少ない郊外型の店舗を狙う。ひとりが駐車場に車両を待機させ、残る仲間が盗品を一気に運び込んで逃走。『チェーン店の〇〇は盗みやすい』といった情報も口コミで伝わっています」
決行メンバーは面識がない人同士がネットで集められており、やはりトクリュウ型だ。
窃盗の標的とされやすいのは、ベトナム国内での需要も高い日焼け止めや化粧品だ。
「これらは小さくてかさばらないのに単価が高い。(盗品の)どの化粧品をいくらで買い取る、というベトナム語のリストが存在するほど、システマチックに盗品の転売が行なわれています」
昨年11月には、組織的なドラッグストア窃盗を行なった容疑で埼玉県内などのベトナム人11人が摘発された。警視庁をはじめ合同捜査本部は母国のハノイにある拠点の解明も進めているという。
ただ、「東北地方はまだ狙い目といった噂もささやかれる」という。摘発はいたちごっこだ。
そして、最近これらと並んで深刻な問題が、ベトナム人による大麻密造・密輸問題である。
昨年4月には、茨城県の倉庫丸ごとひとつを使って大麻草約1500本(末端価格3億5000万円以上)を栽培していたとして、ベトナム人の男女6人が摘発された。
昨年4月、茨城県古河市の倉庫で大麻草約1500本を栽培したとしてベトナム人の男女6人が逮捕された。写真はその倉庫内の様子(写真提供/埼玉県警)
また今年5月にも、広島県内各地で大麻草500本以上を栽培していたベトナム人グループが逮捕されている。いずれも、黒幕的な経営者の下、ネットで集められたボドイたちがトクリュウ的に栽培に従事していたもようだ。
大麻の密輸も深刻だ。
今年6月には、ベトナムから東京港に到着した船の積み荷から、木炭に紛れ込ませた1t以上の乾燥大麻(密売価格52億円相当)が見つかり、ベトナム人3人が摘発される事件も起きている。
これは1回に押収された違法薬物の量としては史上最大の規模だ。分量から考えて、やはり国際的な密売ネットワークが関与した可能性が高い。
「従来のボドイ犯罪は、家畜や果物など自分たちのコミュニティ内で消費するための窃盗が多かった。しかし、ここ数年で一気に換金効率の高い重犯罪が増えた」
在日ベトナム人たちからは、そんな話も聞こえてくる。
近年、移民や外国人労働者の問題は、日本でも急速に政治的な関心が高まっている。真面目に働く大部分の外国人が無用な偏見にさらされないためにも、捜査当局の徹底した犯罪摘発を望みたい。
取材・文・撮影/安田峰俊 写真/時事通信社 朝日新聞社
記事提供元:週プレNEWS
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