【ピエール瀧の「萌え萌やしソバ探訪録」】8杯目「連載初! 福岡で出合った〝汁なし系〟のもやしソバ」
今回は福岡へ!
「もやしソバ」をこよなく愛するピエール瀧が、名店をめぐりながら、もやしソバとは何なのかを考えたり考えなかったりするこの連載。汁ありだろうとなかろうと、メニューに「もやしソバ」と書いてあれば日本全国どこにだって食べに行きます! というわけで、今回は福岡県におじゃましました!
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――今回は九州です。福岡市内から高速を使って車で約1時間、田川市という所に来ています。
ピエール瀧(以下、瀧) 福岡といえば豚骨ラーメンのイメージだけど、ここ田川には独特なもやしソバがあるんだってね。
――そうなんですよ。田川はバカリズムさんの出身地らしいです。地元にいたときに食べてたお店かもしれないですね。
瀧 そうか。ソウルフードかも。
――あ、ここです。「もやしそば己城」。お店の前に「フッコー直伝 もやしそば」と書かれたのぼりが立っています。
瀧 こっちには「もやしそば430円 ダブル690円 トリプル970円」「やきそば590円 ジャンボ790円」「やきうどん550円 野菜入り650円」と書かれた写真入りの看板もある。じゃあ、入ってみよう。
店主の奥さん(以下、奥さん) いらっしゃいませ!
瀧 おじゃましまーす。じゃあ、奥のほうに座らせてもらって、と。焼きそばとか焼きうどんもおいしそうだけどなぁ、やっぱりここはもやしソバだよね。
――普通、ダブル、トリプルがありますけど、どうします?
瀧 ここはダブルですかね?
奥さん 女性でもダブルを頼まれる方が多いですよ。
瀧 じゃあダブルでお願いします。
奥さん はい!
瀧 今回は、汁なし系のもやしソバだね。鉄板で勝負系のお店だわ。
――汁なし系って初めてですよね。
瀧 うん。汁があろうとなかろうと、メニューに「もやしソバ」と書かれてあれば食べに行く。それが、俺たち「萌え萌やしソバ探訪隊」の宿命よ。
奥さん お待たせしました! あっさりした醤油味になっておりますので、お好みでソースをかけて食べてくださいね。
「もやしそば(ダブル)」(690円)
瀧 ありがとうございます。これはいいねぇ。見た目が最高だよ。まずは具を確認しよう。もやし、タマネギ、肉のみ。麺は思ったほど太くない。
今回は汁なし系のもやしソバ
――すごくシンプルですよね。
瀧 だよね、うまそう。じゃあ、いただきまーす。うん、言ってたとおり、薄味に仕上げてあるけど、後から塩味がくるから、食べ進めると不思議と薄い感じがしない。
――もやしもシャキシャキですよ。
瀧 これほどもやしの食感が顔を出してくるもやしソバもあんまりないな。炒めてはいるんだけど、油っこさがない。あと、皿で食べるもやしソバは初めてだよ。
――お好みでソースをかけてって言ってましたよね。
瀧 じゃあ、味変にソースとこしょうをかけてみよう。ほほう。ソースをかけたらソース焼きそばみたいな味になるかと思いきや〝ソースがけ醤油焼きそば〟になってる。まったく別物でうまい! ダブルを頼んだはずなのに、もうほぼなくなっちゃってるよ。
「ダブルを頼んだはずなのに、もうなくなっちゃってるよ」と瀧氏
――近くに座ってる地元らしき人も、皆もやしソバを頼んでますね。
瀧 高校生が部活帰りにトリプルを頼んでワイワイしている姿が目に浮かぶな。ダブルを食べ終わったばかりなのに、正直もうちょっと食いたくなっている自分がいる。
――確かに、後を引く味ですね。
瀧 ガチでもうちょっと食えるんだけどなぁ。でも、ここはグッと我慢して店主さんに話を聞こう。
――そうですね。
瀧 すみませーん。少しお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。
店主の己城悦史さん(以下、己城さん) はい。
店主の己城悦史さんと奥さんと
瀧 このお店は何年くらいやっているんですか?
己城さん 私が始めたのは2006年なんですけど「フッコー食堂」自体は戦前からありました。
瀧 戦前から? フッコー食堂?
己城さん はい。今はもうないんですけど、関東大震災(1923年)で被災された方がこちらにやって来て、関東の復興を願った「フッコー食堂」というお店を開いたんです。
瀧 なるほど。
己城さん 当時はステーキなどの高級洋食を出していたんですけど、戦後になると食材が手に入らなくなって、焼きそばなどの庶民的な食べ物を出すようになったんです。
瀧 戦後だと仕方ないですよね。
己城さん 町の人に親しまれるお店で、学生さんもたくさん食べに来ていたんですけど、学生が焼きそばを食べると、野菜を残していたそうなんです。それだったら、最初からキャベツとかの野菜を抜いてあげれば、値段も安くなるということで、もやしと肉だけを入れたもやしソバが出来上がったということです。
瀧 そうか。このもやしソバは、焼きそばの野菜抜きなのか。
己城さん でも、その「フッコー食堂」をやられていた2代目の店主さんが体調を悪くして、2002年にお店を閉めてしまった。
瀧 ああ。
己城さん それで、小さい頃から食べていた味をどうしても残したいと思って、2代目に作り方を教わって、2006年に私がこの店を新たにオープンしました。
瀧 だから「フッコー直伝」って書いてあるんですね。
己城さん そうなんです。
瀧 心が温まる話ですね。確かにここでしか食べられない感じがします。
己城さん いえいえ。
瀧 もやしソバを食べるこの連載が始まって、初めての汁なしなんですよ。だから、どうしてそうなったのかなと気になりまして。あと、もやしが細いのにシャキシャキしてますよね。
己城さん はい。ブラックマッペ(黒豆もやし)という品種なんですよ。シャキシャキした食感が特徴で、この田川市で作られているものを使っています。麺も田川市で作られているちゃんぽんの麺を使っています。
瀧 地元愛が強いんですね。今日は何かすごいものを食べさせてもらった気がします。ありがとうございました。
――福岡に来たら、ここのもやしソバを食べなきゃダメですね。
瀧 博多からちょっと距離あるけど、でも絶対に来る価値はあるよ。
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■もやしそば己城
福岡県田川市春日町1-25
0947-42-9697
※営業日時、メニュー、価格などは変更になる場合があります
※この連載は隔号で掲載予定です
※おいしいもやしソバなどの情報は【moemoyashisoba@gmail.com】まで
■ピエール瀧(ぴえーる・たき)
1967年生まれ、静岡県出身。ミュージシャン、俳優、声優、タレント。
「無駄こそ宝なり」が信条。好物はもやしソバ。
公式Instagram【@pierre_taki】
構成/TAKA-HO
記事提供元:週プレNEWS
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