きっかけは「アメリカから帰って“どん底”」 の時期に 河本結が届けたい 「本当に面白い」女子ツアーの世界
<北海道meijiカップ 最終日◇10日◇札幌国際カントリークラブ 島松コース(北海道)◇6642ヤード・パー72>
色とりどりのゴルフウェアを身にまとい、ファンに向けて笑顔を振りまく選手たち。そんな“華やか”な国内女子ツアーは今季20戦目の戦いが幕を閉じた。優勝したのは、昨年の「NEC軽井沢72ゴルフ」以来、ツアー3勝目となる26歳の河本結だ。
河本のプレーを見ていると、バーディを奪った瞬間や、難しい場面でのパーセーブ後などに、カメラへ向けてリアクションする場面が多く見られる。ゴルフそのものを楽しんでいる様子が印象的。そうした行動の裏には、「女子プロゴルフ界の魅力をもっと発信したい」という切実な思いが込められている。
「私の中で、みんなに届けられるもの。それは、ゴルフを通じて、ゴルフの楽しさだったり、みんなの人生のハッピーになれればいいなと思っていて。女子ゴルフを見て、『ゴルフって楽しいんだな、女子プロって上手いな、美しいな』とか、『ああやってキレイに打つんだな』みたいな“ちょっとのハッピー”を届けたいと思っている。それで勝手にやっている感じです」
トーナメントは各地で行われているが、会場に足を運べないファンも多い。そんなファンのためにあるのがテレビ中継だ。生観戦でも中継でも、ゴルフの魅力を伝える「見る楽しさ」を意識している。一方で、試合はプロにとって成績が収入に直結する真剣勝負の場。18ホールで平常心を保ち続けることは容易ではなく、その中で見せるリアクションは貴重なものだろう。
それに対する河本のアンサーは「こうしたことができるのは、誰よりもゴルフと向き合って、しっかりそこまで準備しているという自覚、自負があるから。だからコースに入った時に、余裕を持って、緊張してもドタバタせずにできているのかな」というもの。日頃の準備はもちろん、人生の半分以上をゴルフとともに過ごしてきた経験が、その自信を支えている。
河本がこういうことを意識するようになったのは「3年前に始めたメンタルトレーニング」からだった。「そこからけっこう変わりましたね。アメリカの経験もあったので、アメリカから帰ってきて“どん底”を味わって、潰れそうになったのが、いまの自分を作ってくれていると思います」。メンタルコーチもつけ、多くの本を愛読している。気になった言葉はノートに書き留め、特に心に響く言葉はスマートフォンのロック画面に設定するなどの努力家。こうした積み重ねが結果だけではなく、プレー中の姿勢にも表れているのだ。
河本が見る“女子プロゴルフ界”は、「一種のスポーツでありながら、一種のエンタメでもあると思っています。例え“推し”の存在や、プレー以外のパフォーマンス、ウェアの着こなしなど、見せられる部分はたくさんある。そういった要素も私の中では大きい」。もちろん技術は欠かせないが、「見て華やかだったり、ゴルフ場に映える選手を美しいと思ったり…。そういうスポーツとしての楽しさも含めて、女子ゴルフの素晴らしさや魅力を発信したい」と胸の内を明かした。
特に感じるのは、「時代の変化」だ。真剣にプレーする姿もあれば、多様なスタイルで個性を持った選手もいる。「いろんな人がいて、いろんなゴルフがあって、それを見られる。女子ゴルフは本当に面白い世界」と、その多彩さに魅力を感じている。まさに百花繚乱の女子ツアー。これからも「女子ゴルフの魅力」を意識しつつ、自身が目指す「年間女王」を狙いながら戦っていく。そんな河本の姿勢に、“見られてなんぼ”のアスリート魂を強く感じた3日間だった。(文・高木彩音)
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