【#佐藤優のシン世界地図探索121】参議院議員・鈴木宗男氏の今後の予定
早朝に落選確実で政界引退宣言するも、その数時間後には当選確実へ。常にドラマとなる男、それが鈴木宗男氏だ(写真/時事通信社)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!
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自民党の歴史的大敗で終わった2025参院選挙。その中でも、鈴木宗男氏の今回の選挙は壮絶だった。
鈴木氏は2002年、「国策捜査」とも呼ばれる数々の疑惑によって自民党を離党。東京地検特捜部に逮捕され、東京拘置所へ。公判中に「新党大地」代表として衆院選に比例で当選したものの、その後、実刑判決確定で刑務所に服役した。
公民権停止が満了した2017年には衆院選で落選。2019年に日本維新の会から参院選に出馬して当選。しかし、党へ事前届なくロシア訪問したことが問題視され、離党。無所属で活動していたが、自民党に復帰するために議員辞職した。
そして、今回の参院選にて23年ぶりに自民党に復党し、比例区で出馬。午前4時半すぎには落選が確実となり、札幌の事務所で記者会見。「全ての責任は私にある」と引退を表明することになった。
しかし、それから約8時間後、比例代表の最終当選者としてその名を連ねることに。引退宣言から一転して、当選したことに本人も「奇跡だ」と涙ながらに語った。
波乱万丈の人生そのままの選挙展開。6月30日に開かれた『鈴木宗男を叱咤激励する会』にて盟友・松山千春氏が振り返った初当選の話を思い出す。
鈴木氏が最初に立候補したのは1983年の衆院選。選挙最終日、松山氏も含め事務所にいた全員が、確実に落選だと落ち込んでいたそうだ。その時、鈴木宗男氏はこう言った。
「全ての責任は私にある」
しかし、結果は当選。その時のシーンが42年ぶりに繰り返されたのだ。
そして、かつて鈴木氏はこう言った。
「人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、そして『まさか』」
その『まさか』が、来た。その坂は下るのではなく、上り坂だ。
そんな鈴木氏の盟友のひとりである佐藤優さんに、鈴木氏の今後の動きについて聞いてみた。
――鈴木宗男先生の今後の予定はどうなっているのでしょうか。
佐藤 まず、ロシアに文化交流を進めるでしょう。日露両国の文化人の交流として、鈴木先生は文化人のひとりとして訪露すると思います。そして、お互いの首脳同士のメッセージを伝えるルートを確立すると思います。
――プーチン大統領は鈴木先生と会ってくれますか?
佐藤 おそらく会ってくれますよ。
――そこで鈴木先生が話すべきことはなんですか?
佐藤 これから重要なのは、やはりエネルギーに関してです。このまま生成AIがどんどん増えてデータセンターが増加すると、ものすごい勢いでエネルギー消費量が増えていきます。
しかし、原発はなかなか新設できないし、再生可能エネルギーは不安定です。そして、火力発電で石炭をばんばん焚くわけにもいきません。すると、そこで必要になるのが液化天然ガス(LNG)です。
なので、ロシアからのLNG供給を増やすのです。中東は何が起きるかわかりませんからね。
――米国ではエネルギー需要に対応するため、メルトダウン事故を起こしたスリーマイル島原発を再稼働するらしいです。そしてそこで得られた電力は、マイクロソフトのデータセンターに供給されるそうです。
それほどにも電力供給が急務になるわけですよね。なおさら鈴木先生にその辺りを決めていただくと、日本は安心であります。
佐藤 そういうことです。そして、日本の場合はウクライナ戦争に深入りしていないため、影響も少ないのがメリットです。一般論として、経済的に困窮している人にいつもお金を支援していると、それを止めたら恨まれますからね。
――はい。それに他国を非難しても、一週間後には180度違うことを言えますからね。ウクライナに深入りしていないとはいえ制裁はしていますが、そこは関係なく態度を変えられますね。
佐藤 以前話した、イスラエル非難から一転して支持に回った「180度回頭」ですね(参照:【#佐藤優のシン世界地図探索117】消えゆくG7の中で、石破首相の見せた180度回頭の荒業)。あれはあれで、非常に良い外交政策ですよ。悪く言えば、節操がないんですが、よく言えば柔軟性が高いとも言えます。
――大絶賛ですね。鈴木先生は大臣になられた方が良いのですか?
佐藤 いえ、政府の立場に縛られない、議会人だけの立場が良いと思いますよ。
例えば、鈴木先生はイスラエルの人脈にあります。しかし、大臣として政府の立場に縛られてしまうと、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が出ているネタニヤフ首相と会えませんからね。
――すると、プーチン露大統領と会った後はイスラエルですか。
佐藤 イスラエルもそうですし、イランを除く中東の産油国、天然ガス産出国との関係を担当するといいと思います。
――鈴木先生がイスラエルに行くと、中東の産油国との調整に有効ということですか?
佐藤 はい。中東産油国、アラブ諸国だって、イランに対して「ざまーみろ」という話ですからね。
――それから、鈴木先生は平和記念式典での外務省の対応に大変お怒りだとか。以前の連載で大魔神として復活すると話していただきました。外遊から帰国後は、外務省への熱烈指導の開始ですか?
佐藤 もう、それは始まりますよ(笑)。
――1980年代の外務省は、すでに21世紀を先取りしていたそうですね。男女問わずセクハラだらけ。ジャニーズやフジテレビの問題と同じです。
佐藤 そうですね。『アサヒ芸能』にいくら書いても全然反響がないですが、当事者たちは読んでいるだろうから、結構震えていると思いますよ。
――そして、そこに鈴木先生が議会人として現れて、大激震を起こしたと。今回、指導改革担当として鈴木先生がお入りになったら、どうなってしまうのでしょうか?
佐藤 容赦なくビシビシとやると思います。いまの外務次官、船越健裕さんは鈴木先生の秘書でしたから。鈴木さんの性格を熟知しています。
――それは最強の布陣。
佐藤 当然、指示はちゃんと聞きます。だから、外務省もピリッと引き締まるんじゃないですか。
――それはそうですよ。内閣の態度が180度変わるようなことはありませんね。
佐藤 180度変わることはないでしょうが、かなりピリピリしますよね。それに、日本の外務省は「必勝の原理」を体得しているので、鈴木さんはこれを叩き直さないとなりません。
――どういうことですか?
佐藤 つまり、絶対に負けない原理です。試合に出ていきません。試合に参加しなければ、絶対に負けませんから。
――それって一番怖い、最恐の御指導じゃないですか!
佐藤 外務省はぶるぶる震えて、何もしないかもしれません。そのうえ、いまはマキアヴェリの論理で武装していますから。
――守りも攻めも完璧であります。以前言っていたように大魔神という『守り神を祟(たた)れば滅ぼされるぞ』が現実になりますね。
佐藤 そういうことですね。
次回へ続く。次回の配信は8月15日(金)を予定しています。
取材・文/小峯隆生
記事提供元:週プレNEWS
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