公開50周年記念!デコトラで爆走するコンビの活躍を描く、「トラック野郎」シリーズ全10作を放送!

菅原文太演じる“一番星の桃次郎”と、愛川欽也扮する“やもめのジョナサン”のトラック運転手コンビが、ギンギラに飾り付けたデコトラに乗って日本中を爆走する、大ヒットシリーズ「トラック野郎」。日本にデコトラの文化を定着させた、1作目の公開から50周年を記念して、東映チャンネルでは8月、9月の2カ月にわたってシリーズ全10作品を完全放送する。
笑いあり、恋あり、アクションあり、エンタメ要素満載の娯楽シリーズ!

「トラック野郎」シリーズは、荷物配送のためにトラックで日本中を駆け巡る星桃次郎が、毎回作品の舞台となる地方のマドンナに惚れ、さらにはライバルのトラック野郎とワッパ(運転)や腕っぷしで勝負をし、最後は時間的にも距離的にも無理そうな配送仕事を請け負って、警察に追われながらもトラックで爆走して荷物を送り届けるという、痛快娯楽作。ジョナサンこと松下金造との掛け合いが
楽しいコメディで、マドンナとのラブロマンスあり、カーアクションありと、さまざまなエンタメ要素を詰め込んだ作品である。
その誕生は、アメリカのテレビドラマ『ルート66』(60~64)の声優を担当していた愛川欽也が、このドラマと同じようなコンビが主役のロードムービーを日本でやれないかと思い立ち、当時流行り始めたデコレーショントラック(デコトラ)に目をつけたことに始まる。そこで彼はトラック運転手のロードムービーをやらないかと、自分が司会をしていたテレビ番組『リブ・ヤング!』にゲスト出演した菅原文太に話を持ち掛けた。その企画に乗った文太と欽也は、東映の岡田茂社長に直談判して映画化のゴーサインをもらったという。
マドンナのフレッシュな顔ぶれも魅力で、「男はつらいよ」シリーズよりもヒット!

当初、シリーズ化の予定はなかったが、1975年8月30日に公開された第1作「トラック野郎 御意見無用」がヒットしたことから、以後は東映のお盆と正月を飾る人気シリーズに成長した。毎回桃次郎がマドンナに失恋するエピソードを入れているのは、公開時期をぶつけた松竹の「男はつらいよ」シリーズを意識してのことだった。ちなみに各作品のマドンナは第1作の中島ゆたかに始まり、映画初出演だったあべ静江(第2作)、島田陽子(第3作)、由美かおる(第4作)、片平なぎさ(第5作)、夏目雅子(第6作)、原田美枝子(第7作)、大谷直子(第8作)、小野みゆき(第9作)、石川さゆりと森下愛子(第10作)という顔ぶれ。主演の菅原文太が当時40代だったことを思うと、マドンナたちはアイドル女優やCMのキャンペーンガールとして注目された20代の人気者ばかりで、恋の対象としては見た目にも年下。しかしその彼女たちに、ひたむきに思いを寄せる桃次郎の、おじさんの純情が笑いと切なさを生むのである。
「男はつらいよ」シリーズとの同日公開対決では、第4作「トラック野郎 天下御免」(76)から配給収入で「男はつらいよ」を上回り、第7作「トラック野郎 男一匹桃次郎」(77)まで配給収入の数字的にリードした。
子どもから女性までも取り込んだ、面白ければ何でもありの痛快さ!

ではこのシリーズが、なぜそこまで人気を集めたのだろうか。全作品の監督を務めた鈴木則文と、その助監督で共同脚本を担当した澤井信一郎は、デコトラを第2のホームとして全国をさすらうトラック運転手たちの、旅情と仲間意識を作品に入れ込み、ギャグに関しては子どもにもわかるベタな笑いに徹した。また第4作で桃次郎に挑戦してくる須田勘太が乗るデコトラは『(愛の)コリーダ丸』で、第5作で桃次郎とデッドヒートを展開するのはジョーズ軍団のリーダーと、そのときトレンドの映画タイトルや流行したものを貪欲に取り入れている。さらには第1作の夏純子演じる〝モナリザお京〟をはじめ、第4作まで桃次郎に惚れたり、彼に対抗する女性トラッカーをサブマドンナとして登場させ、その男勝りのカッコよさに女性ファンも急増した。これが後に、本物の女性トラック運転手が増える要因にもなった。トラック運転手の男性はもちろん、子どもや女性まで楽しませる幅広いエンタメ作品として、このシリーズは大衆の圧倒的な支持を受けたのである。
観客を楽しませることに徹した、菅原文太と愛川欽也の快演!

その中心に立つのが菅原文太と愛川欽也。シリーズが始まった当時、菅原文太は前年に主演作の「仁義なき戦い」シリーズが終了して、新たなイメージを模索していた。そこにこの企画が浮上し、彼にとっては実録ヤクザ映画とは180度違った自分を見せるチャンスが訪れたのである。すでに彼には鈴木則文監督と組んだ「関東テキヤ一家」シリーズ(69~71)や、川地民夫とコンビで主演した「まむしの兄弟」シリーズ(71~75)などのアクション・コメディシリーズがあったが、そのコミカルな持ち味が最も活かされたのが「トラック野郎」シリーズだった。
また企画を立ち上げた愛川欽也は当時、ラジオのパーソナリティやテレビの司会者として人気を集めたタレントだった。その彼が、ここでは〝やもめのジョナサン〟を名乗りながら、実は子沢山で妻の君江を演じた春川ますみに頭が上がらない、どこか情けない中年男を体当たりで好演。桃次郎のようにカッコよくもなければ、女性にも持てない男の頑張りを、一所懸命に演じた姿が観客の共感を呼ん
だ。彼はこの役を取っ掛かりに、テレビドラマの土曜ワイド劇場『西村京太郎トラベルミステリー』シリーズ(81~12)の亀井刑事役など、俳優としてもキャリアを積み重ねていった。
シリーズ第7作「トラック野郎 突撃一番星」(78)からはせんだみつお演じる玉三郎も加わって、よりコメディ色が強まったが、今観てもその面白さは新鮮。生前、菅原文太はシリーズに関して「余計な理屈なんていらないんだ。そんなもの、なかったから映画としての迫力が出た」と言っていたが、観客を楽しませるために全エネルギーをぶつけた彼らの快演を、存分に味わっていただきたい。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2025年8月号より転載)

●公開50周年記念【二か月連続放送!トラック野郎シリーズ】
8月、9月の東映チャンネルは「トラック野郎」公開50 周年を記念して全10 作品を完全放送!
<8月放送作品>
「トラック野郎 御意見無用 4Kリマスター版」
[放送日時] 8月6日(水)18:00-20:00、30日(土)14:00-16:00
[出演] 菅原文太/愛川欽也/中島ゆたか/春川ますみ/夏純子/湯原昌幸/佐藤允/由利徹
[監督] 鈴木則文 [脚本] 鈴木則文/澤井信一郎
[製作年] 1975年 [時間99分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズ第1作。マドンナは中島ゆたか。東北のドライブ・インのウエイトレス・洋子にひと目惚れの桃次郎。捨て子をかかえるはめになった桃次郎は洋子も入れて3人でねぶた祭りに出かけ、すっかり夫婦気分。しかし、洋子の婚約者の存在を知った桃次郎は彼女をトラックに乗せ、漁船で出航する男のもとへ間一髪送り届ける。
「トラック野郎 爆走一番星」
[放送日時]8月7日(木)18:00-20:00、30日(土)16:00-18:00
[出演] 菅原文太/愛川欽也/あべ静江/春川ますみ/加茂さくら/研ナオコ/田中邦衛
[監督] 鈴木則文 [脚本] 鈴木則文/澤井信一郎
[製作年] 1975 年 [時間97分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第2作。姫路のドライブ・インでアルバイトの女子大生・暎子にひと目惚れの桃次郎。文学少女の彼女に合わせるため、古今東西の文学を読破せんと文学青年気取り。彼女に渡すはずの愛の告白が金造の手違いでバキュームカーの女運転手の手に渡って…。本作のマドンナはあべ静江。
「トラック野郎 望郷一番星」
[放送日時] 8月8日(金)18:00-20:00、16日(土)16:00-18:00、30日(土)18:00-20:00
[出演] 菅原文太/愛川欽也/島田陽子/梅宮辰夫/春川ますみ/土田早苗/小倉一郎/都はるみ
[監督] 鈴木則文 [脚本] 野上龍雄/澤井信一郎
[製作年] 1976年 [時間101分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第3作。北海道へ向かうカーフェリーの中で出会った美しき牧場経営者・亜希子にひと目惚れの桃次郎。彼女の牧場で重病の小馬を助けて信頼を篤くするが、亜希子には既に婚約者がいた…。マドンナは島田陽子。名馬ハイセイコーも特別出演している。
「トラック野郎 天下御免」
[放送日時] 8月9日(土)18:00-20:00、17日(日)16:00-18:00、30日(土)20:00-22:00
[出演] 菅原文太/愛川欽也/由美かおる/杉浦直樹/春川ますみ/松原智恵子/マッハ文朱
[監督] 鈴木則文 [脚本] 鈴木則文/中島信昭
[製作年] 1976年 [時間106分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第4作。舞台は四国。巡礼姿の美しきデザイナー・和歌子と知り合い、彼女にすっかりホの字の桃次郎。母親の病と借金返済のために好きでもない相手との結婚を決意した彼女を助けるべく、桃次郎は全財産を宇和島の闘牛に投げ打つが…。今回のマドンナは由美かおる。
「トラック野郎 度胸一番星」
[放送日時] 8月10日(日)18:00-20:00、30日(土)22:00-24:00
[出演] 菅原文太/愛川欽也/片平なぎさ/千葉真一/春川ますみ/夏樹陽子/八代亜紀
[監督] 鈴木則文 [脚本] 野上龍雄/澤井信一郎
[製作年] 1977年 [時間101分]
[内容] 長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第5作。新潟へ向かう桃次郎は謎の女にひと目惚れ。実は彼女、佐渡島の分教場の教師だった。桃次郎はその教師・乙羽水名子の気を引こうと大ハッスル。だが、水名子は近々結婚するという。桃次郎はそれをきいてガッカリ。失恋のうさ晴らしに同業の暴れ者・譲治の率いる“ジョーズ軍団”の挑発に乗って大ゲンカをしてしまう。本作のマドンナは片平なぎさ。
<9月放送作品>
「トラック野郎 男一匹桃次郎」
[出演] 菅原文太/愛川欽也/夏目雅子/春川ますみ/清水健太郎/若山富三郎/堺正章/左とん平/湯原昌幸
[監督] 鈴木則文 [脚本] 鈴木則文/掛札昌裕
[製作年] 1977年 [時間104分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第6作。今回のマドンナ、夏目雅子が新人として注目されていた頃の出演作。剣道三段の女子大生・雅子と知り合った桃次郎はすっかりホの字。だが彼女の恋人の存在を知り、一転してサポート役をつとめ、恋人の旅客機が鹿児島空港を離れる前にふたりを会わせるべく雅子をトラックに乗せて九州路をぶっ飛ばす。
「トラック野郎 突撃一番星」
[出演] 菅原文太/愛川欽也/原田美枝子/せんだみつお/川谷拓三/辰巳柳太郎/樹木希林
[監督] 鈴木則文 [脚本] 掛札昌裕/中島信昭
[製作年] 1978年 [時間104分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第7作。イルカの調教師・えり子に首ったけの桃次郎は、彼女の幼なじみのトラック野郎・玉三郎を助手に使って接近をはかる。だが、えり子には養殖アワビの研究家・駿介という意中の人がいた。今回のマドンナは原田美枝子。
「トラック野郎 一番星北へ帰る」
[出演] 菅原文太/愛川欽也/大谷直子/せんだみつお/春川ますみ/黒沢年男/田中邦衛
[監督] 鈴木則文 [脚本] 掛札昌裕/中島信昭/鈴木則文
[製作年] 1978年 [時間110分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第8作。久々に故郷に帰った桃次郎。ジョナサンの女房のはからいで見合いをするが、いつもの早とちりで相手を勘違いし子連れ未亡人・静代に恋してしまう…。桃次郎は静代をめぐり、アメリカ帰りのコンボイ野郎と張り合うことになる。今回のマドンナは大谷直子。
「トラック野郎 熱風5000キロ」
[出演] 菅原文太/愛川欽也/小野みゆき/春川ますみ/地井武男/せんだみつお/前川清/志賀勝
[監督] 鈴木則文 [脚本] 掛札昌裕/中島信昭/鈴木則文
[製作年] 1979年 [時間106分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第9作。木曽の運送会社の男まさりの娘・夏と出会った桃次郎はそこで働き、彼女への接近をはかる。だが、意外にも従業員・ノサップの勝が彼女の幼い頃の命の恩人だったとわかり…。化粧品のキャンペーン・ガールで売り出した小野みゆきがマドンナ・夏を好演。
「トラック野郎 故郷特急便」
[出演] 菅原文太/愛川欽也/石川さゆり/森下愛子/春川ますみ/原田大二郎/山城新伍
[監督] 鈴木則文 [脚本] 中島丈博/松島利昭
[製作年] 1979年 [時間111分]
[内容] 全国津々浦々を走り回る長距離トラック運転手たちの豪快な生き様に色恋沙汰を交えてユーモラスに描いた人気シリーズの第10作。高知へ向かうフェリーでドサ廻りの演歌歌手・小野川結花にひと目惚れした桃次郎は、高知のドライブ・インで働く風美子にもひと目惚れしてしまう。これにトラック野郎とやくざ興行主との闘犬による対決も絡む。今回のマドンナは石川さゆりと森下愛子。
放送日時の詳細は東映チャンネルの公式HP をご覧ください!
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