参院選後に恐怖の「なんも決まらん国会」が始まる! 衆参両院で自公過半数割れはマジでありえる!!
内閣支持率が低空飛行のまま、参院選に突入しようとしている石破茂政権。目標の「自公で過半数」を維持できるか
石破政権への期待がしぼんだまま突入しようとしている参院選。現在、衆議院は与党が過半数を下回る「少数与党」の状態にあるが、今回の選挙でも手痛い敗北を喫すれば、いよいよ衆参両院で過半数割れの窮地に追い込まれる。もしそうなった場合、国会はどうなる? 国民にとってマイナスになるかもしれない、国会の停滞を展望した。
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■与党はもはや「野党のご用聞き」?「参議院選挙の結果次第で、国会は何も決まらないグダグダな集まりになる恐れがあります」
そう予測するのは政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏だ。
今回の参院選(今月20日投開票)は与党である自民・公明が50議席を確保できるかどうかが焦点となる。
自公の非改選は75議席。参院の過半数は125議席なので、自公は50議席以上を取れば参院で多数を確保、逆に50議席を下回れば、衆院に続いて参院でも少数与党に転落する。
改選議席の内訳は1人区32、大都市圏などの複数区(13選挙区)43、比例代表区50議席の計125。与党がそのうち50議席を獲得することは、前回2022年の参院選の1人区で自民が28勝4敗と圧勝したことを考えると、そう難しくないように思える。
だが、前回の参院選からわずか3年後となる現在、政界勢力マップは様変わりした。
「昨秋の衆院選に続き、今年6月の東京都議選でも惨敗と、有権者の自公離れが顕著です。特に都議選では自民は1人区で1勝もできなかった。野党に競り負けているんです。
この傾向が参院選1人区でも続き、1989年参院選の36議席、07年参院選の37議席並みの大惨敗となれば、公明の議席と合わせても50議席に届かないという大敗北も十分にありえます」
こうなると、石破自民はたちまち国会運営に行き詰まる。自民関係者がこう嘆く。
「与党提出法案59本中58本成立と、一見、与党ペースで進んだかのように見える今年の通常国会でしたが、その実態は真逆。衆院では少数与党とあって、野党の助けを借りないと法案を可決できない。
そのため、常に野党の顔色をうかがっては注文に応えなくてはいけないというケースが常態化しました。その象徴が与党提出法案の20%(12本)に野党からの修正が入ったという事実。これじゃ、まるで与党は野党のご用聞きです」
実際、国会対策の大ベテランとされる森山裕(ひろし)幹事長も野党との修正協議がよほど手に余ったのか、「もう何回もやれる話ではない」と、周囲にこぼしているほどだ。
衆院で少数というだけでも、これだけ国会運営にてこずったのに、参院でも少数となると、その厳しさは倍化する。
「これまでは野党が束になって衆院で法案を通そうとしても、参院で多数を持つ自公はその野党案を否決できると圧力をかけることもできた。その交渉力を失えば、野党との妥協点を探る作業はさらに手間暇のかかるものとなる。通常国会にかけた何倍ものエネルギーで野党修正案ののめる部分、のめない部分を精査し、利害関係者との合意を取らないといけない。結果的に審議不十分の積み残し法案が増え、〝何も決まらない国会〟になるというわけです」
■拍車をかけるバラバラな野党ここまでは与党である自公目線の話。しかし、野党の視点から参院選後の国会を眺めれば、別の結論があってもおかしくない。
今回の参院選で自公を過半数割れ(50議席以下)に追い込めば、野党は衆参両院で多数となる。ならば、野党提出の法案は通し放題、それどころか野党で結束して自前の首相を選び、自公から政権を奪取することも可能なはずだ。
だが、野党に結束しようとする動きは、つゆぞ見えない。
「野党が一致して法案を出せば、多数の衆院で可決できるのにそれをやらない。
国民民主党は『年収103万円の壁』の撤廃、日本維新の会は高校授業料無償化法案、立憲民主党は年金改革法案と、それぞれが手柄を争うかのように、自公と協議して成立させてしまいました。
国会会期末に内閣不信任案を出して、与党と対決する動きもなかった。野党はてんでバラバラ、政権交代を目指す気なんてないと批判されても仕方ありません」(前出・鈴木氏)
ジャーナリストの須田慎一郎氏も手厳しい。
「野党は原発・エネルギー、選択的夫婦別姓制度、企業団体献金の扱いなど、基本政策がバラバラ。これでは野党が結束して、自前の首相候補なんて担げっこありません。
表面上はどの党も同じように反自民、政権交代を掲げているものの、その内実は野党同士でにらみ合いを続けているんです。
首班指名で立憲が『野党第1党の党首を野党共通の総理候補に』と呼びかけても、維新や国民が立憲の野田佳彦代表に票を投じることは考えにくいのが実情です」
そんな野党のバラバラぶりは自公も見抜いている。前出の自民関係者がこうささやく。
「野党の非力さがわかっているからこそ、たとえ自公が参院選で敗北しても『石破政権がしばらくは続くかも』という声が党内からけっこう聞こえてくるんです。
へたに石破降ろしに動いても、石破首相に代わって党勢を盛り上げてくれそうな次の顔が見当たらない現状では、自民が右往左往しているだけと映り、支持率をさらに下げかねない。
幸い野党は首班指名に統一候補を出せそうにもない。だったらもう少しの間、石破首相に少数与党の苦労をしてもらい、反転攻勢のチャンスを待てばいいという考えなんです」
その意味するところはグダグダ国会の深化だ。野党のバラバラなあり方が、皮肉にも弱体化した石破政権を延命させ、「決まらない国会」にさらに拍車をかけることになる。
■「2万円給付」の行方と連立枠組みの拡大とはいえ、国政に遅滞は許されない。「決まらない国会」に陥る可能性が高いとはいえ、それなりに与野党のせめぎ合いもあるはずだ。
最初の与野党激突となる国会の舞台は秋の臨時国会だろう。この国会では物価高やトランプ関税に対応する経済対策の裏づけとなる補正予算案が審議される見込みだ。
その激突の第1ラウンドとして、自公が参院選の公約として掲げる「国民1人当たりに2万円を給付」の是非が争われることになるかもしれない。前出の鈴木氏が言う。
「臨時国会の争点のひとつは物価対策です。減税に後ろ向きで、給付策で切り抜けたい自公に対し、野党は減税の実行を主張してくるはず。となると、最初に俎上(そじょう)に載るのは2万円給付でしょう。場合によっては給付が実現しないことだってありえる。
野党があくまで減税優先で2万円給付に反対し、多数を持つ衆院でその財源となる補正予算を否決することになれば、どうなるかわかりません」
その場合、石破政権がなんらかの妥協案を示すのではという声もある。前出の自民関係者が言う。
「通常国会で野党7党が共同提出したものの、自公の反対で廃案となったガソリン税暫定税率廃止を受け入れるかも。2万円給付が実現しないと、自公のメンツは丸潰れになる。
もともと廃止は昨年末に自公と国民の3党で合意したことですし、暫定税率の廃止で失われる地方税収を穴埋めする財源が補正予算できちんと手当てされれば、自公が妥協して廃止に合意することになるかもしれません」
国会での審議とは別に、水面下での政治的工作もありそう。自公による連立政権枠組み拡大の動きだ。
自公の衆院勢力は現在、自民196、公明24の計220。過半数は233なので、自公は維新(38議席)、国民(27議席)などを新たな連立相手として政権に引き入れれば、衆院で多数を回復できるのだ。
ただ、維新、国民民主の引き入れは簡単ではない。
「有権者の自公離れが進む中、ヘタに連立へと動くと自公の一味と見なされ、次の国政選挙で不利になるリスクを維新、国民民主とも警戒しているんです。与党から連立入りを打診されても、そうそう尻尾を振らないのでは?
少なくとも参院選直後の臨時国会ではあくまでも自党の減税メニューの実現を主張し、給付策にこだわる自公との対決姿勢を強めてくると予想しています」(前出・須田氏)
興味深いのは、永田町界隈(かいわい)では自公と維新、国民民主の連立話よりも、野党第1党の立憲との大連立話が熱量を持って語られていることだ。立憲の衆院議席数は148。自公と大連立を組めば、全465議席中368議席を占めるスーパーパワーとなる。
自公が衆参両院で過半数を割った場合、立憲民主党の野田佳彦代表の動向が今後の政界のカギを握りそう
前出の自民関係者が言う。
「3月上程予定だったのに、5月になってもめどが立たなかった年金改革法案を仕上げたのは石破首相と立憲の野田代表です。5月11日に赤坂の議員宿舎で極秘に会談して合意するや、わずかひと月ほどで自公と立憲3党の多数で衆院可決してしまった。
石破さんと野田さんはケミストリーが格段にいい。消費税減税に慎重な点もよく似ている。石破首相は連立を組むなら維新の吉村洋文代表や国民の玉木雄一郎代表より、相性の良い野田立憲がベターと考えているのではないでしょうか。官邸や幹事長室周辺からも『連立するなら立憲』という声をよく聞きます」(前出・自民関係者)
何も決まらない国会の光景に、30年近く続いてきた自公連立に代わる新しい政治の枠組み、政界再編の動きがちらついている。日本の戦後政治は大きな節目を迎えているようだ。
写真/共同通信社
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