新生・男女バレーボール日本代表が日本でお披露目。注目の新戦力は!?
女子はキャプテン古賀が昨年に引退。新エースとして、国内屈指の得点力を誇る佐藤(右から3人目)らに期待がかかる
2028年ロサンゼルス五輪に向けて始動したバレーボールの男女日本代表。男子は、21年の東京五輪で母国フランスを金メダルに導いた名将ロラン・ティリ氏が新監督に就任。女子は初の外国人監督として、トルコ出身のフェルハト・アクバシュ氏を迎えた。
現在はシーズン最初の国際大会「FIVBネーションズリーグ」を戦っている。その予選ラウンド第3週が、女子は7月9日から、男子は同月16日から日本で、千葉ポートアリーナを会場にして実施される。
女子日本代表は開幕5連勝と好スタート。予選ラウンド第2週ではパリ五輪金メダルのイタリア、アジアのライバル・中国に敗れたものの、最後はチェコに快勝して第3週へ弾みをつけている。
諸外国に比べてサイズで劣る女子日本代表は、相手の攻撃を止められずとも、ブロッカーとレシーバーによる的確なポジショニングで決定機を与えず、自分たちの攻撃につなげる戦い方が必須だ。それは〝負けない戦術〟だが、勝つためには、海外の高いブロックを攻略して点数を取らなければならない。
その点、今の代表にはキャプテンの石川真佑(25歳)のほかにも頼もしいアタッカーがそろう。まずは、石川の対角に入るアウトサイドヒッターの佐藤淑乃(23歳)だ。
筑波大学時代に日本代表として22年の世界選手権に出場しており、大学卒業後に入団したNECレッドロケッツ川崎では、パリ五輪を最後に現役を引退した元日本代表キャプテン・古賀紗理那がつけていた背番号「2」を継承した。
ルーキーイヤーの24-25シーズンは国内トップリーグ(SVリーグ)で3位、日本人選手ではトップとなる総得点(895点)をマーク。NEC川崎では「常に成長し続ける」をテーマに過ごし、その姿勢は代表活動に励む今も変わらない。
その佐藤と同じNEC川崎のオポジット、和田由紀子(23歳)も今大会で大活躍している。京都橘高校時代から実力を高く評価されてきたが、23年に日本代表に初登録されるや否や、メキメキと頭角を現した。昨夏はパリ五輪に出場するなど、「世界で通用するプレーヤーになる」ことを目標に研鑽を積む。
強烈なサーブと勝負強いアタックが持ち味で、今大会の予選ラウンド第2週のタイ戦では29得点、続くイタリア戦では28得点を叩き出した。チームのトップスコアラーとして、勝利を手繰り寄せる存在になっている。
元女子日本代表・大友 愛氏の娘としても注目される秋本。今年1月に春高バレーを制した18歳は、どう成長していくのか
そして、次世代を担う大器が、18歳の秋本美空だ。母は元日本代表で、12年ロンドン五輪の銅メダリストである大友 愛氏。今年1月の「春高バレー」では共栄学園高校(東京)を日本一に導いている。
今大会は、初戦で代表初得点をマーク。まだまだ力不足な部分はあるが、身長185cm、最高到達点316cmというポテンシャルは大きな魅力。いずれは代表のエースとなりえる逸材だ。
一方の男子もフレッシュな顔ぶれがコートに立っている。というのも、一時は世界ランキング2位にまで上り詰めた〝史上最強ニッポン〟の主力メンバーたちが、今大会ではここまで不在だったからだ。今年がオリンピックサイクルの1年目ということもあり、休養やコンディション調整などに充てている選手が多い。
そうした中で、専修大学の甲斐優斗(21歳)が強烈なインパクトを残している。ポテンシャルの高さを見初められ、23年から代表チームに同行。パリ五輪にはチーム最年少として参加した。
大学と並行して、フランスリーグへの武者修行やSVリーグの大阪ブルテオンへの入団など、「常にレベルの高い環境に身を置くこと」を自らに課してレベルアップにつなげている。
身長200cm、最高到達点350cm。何より、周囲の誰もが驚くほどの吸収スピードと成長意欲があり、さしずめ〝令和のカイ物くん〟と言ったところか。
現在の代表の得点源になっている宮浦。東京、パリ五輪で活躍した西田が欠場する中、同じサウスポーの剛腕が存在感を発揮
その甲斐と、フランスリーグでは同じクラブに所属したオポジットの宮浦健人(26歳)も輝きを放っている。学生時代から日本人選手きっての剛腕として、その名前をとどろかせてきたサウスポー。
21年から日本代表でもプレーするが、同じポジションに西田有志(25歳)という世界で指折りのアタッカーがいたこともあり、昨年のパリ五輪では控えに回って「悔しい思いをした」と語る。
今年は西田が代表の公式戦に出場せず別調整を進める中、宮浦はチームのポイントゲッターとして君臨。今大会は開幕から全試合でスタメン出場しているが、「どの試合も疲労を感じることなくプレーできている」と頼もしい言葉を口にしている。ロサンゼルス五輪では1番手のオポジットとしてプレーする――。その決意をプレーに昇華させている。
その宮浦を一番の得点源に、チームは予選ラウンド第2週を終えた時点で5勝3敗と勝ち越し。そして第3週からは、髙橋 藍(23歳)ら主力メンバーの何人かが合流予定。日本代表のキャプテンで、絶対的エースの石川祐希(29歳)もそのひとりだ。
7月の千葉大会から、キャプテンの石川(写真)や髙橋らが合流予定。新戦力と、どんな化学反応を起こすのか
日本バレーボール界のフロントランナーとして、幾多の歴史をつくってきた石川。世界最高峰リーグのイタリア・セリエAでのプレー歴は10季目を数え、24-25シーズンは強豪ペルージャの一員として、欧州チャンピオンズリーグで優勝。日本人選手として初めて欧州の頂に立った。
帰国後の記者会見で「充実したシーズンを過ごせました。もっともっと強くなれる、バレーボールを極められると感じました」と語る表情は向上心にあふれていた。石川の合流は、間違いなくチームにとって追い風になるだろう。
男女共に、目指すは表彰台だ。7月の千葉大会で、上位7チームと開催国(女子はポーランド、男子は中国)によるファイナルラウンド進出国が決まる。新生ニッポンのプレーに、ご注目あれ。
取材・文/坂口功将 写真/FIVB アフロ
記事提供元:週プレNEWS
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