超酷暑警報! 「トリプル高気圧」で殺人級"42℃の夏"がやって来る!?
まだ6月なのに梅雨前線が「消滅」! 気温は急上昇!!
今年は6月から各地で35℃以上の猛暑日を観測するなど、地獄のような暑さが続いている。その理由はなんなのか? そして、夏本番には40℃以上続出の"超酷暑"となるのか?
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■3日連続の猛暑日、6月では異常なこと!例年だとジメジメとした梅雨が続く6月だが、今年はなぜか違っていた。
6月18日には北上していた梅雨前線が消え、日本列島では35℃を超える猛暑日が続出した。
昨年は6月に猛暑日がなかった東京都八王子市だが、今年は17日から3日間連続して猛暑日を記録。すでに真夏のような暑さだった。
なぜ、こんな天気になったのか。そして、この猛暑は今後どうなるのか。〝史上最も暑い夏〟といわれた昨年を超える暑さになるのだろうか。
三重大学気象・気候ダイナミクス研究室の立花義裕教授に聞いた。
「今年も昨年と同じように偏西風が日本のはるか北を蛇行しています。偏西風は南から来る暖気と北から来る寒気の境目で吹きます。そして、梅雨前線はその偏西風の上にできます。偏西風が日本の北側を通り、南からの高気圧が張り出していることが、梅雨前線が北上したことの直接の原因です。
こうした気象状況は真夏にはよく見られますが、6月では過去になかったと思います」
なぜ、このような状況になってしまったのか。
「理由は3つあります。ひとつ目は、日本の西にある中国のチベット高原の気温が春からずっと高かったこと。この背景には温暖化がありますが、気温が高いと雪解けが早くなり、地面の温度が上がっていきます。
チベット高原は平均標高5000mくらいの高地ですが、その高さの気温も上がっていきます。そして、その熱くなった空気が偏西風によって、日本にやって来るわけです。
ふたつ目は、昨年と同じく、日本の南にある熱帯地方の太平洋やインド洋などの海面水温が非常に高いこと。すると、熱い空気が熱帯から日本のある中緯度帯までやって来ます。そして、太平洋高気圧を北にグッと押し上げます。
3つ目は、北海道の北に南北傾斜高気圧があること。これは北海道の北から日本列島に向かって斜めに下りてくる高気圧のことです。
高気圧は下降気流なので、圧縮されてどんどん気温が上がります。例えば、自転車のタイヤに空気を入れるときに空気入れを使いますよね。その際、ハンドルを上から下に押しているとホースが熱くなるのを感じると思います。
それと同じで、下降気流の高気圧は上空から空気が下りてくると、圧縮されて地上の温度が上がるんです。
このように、日本列島の高度10kmくらいの所にチベット高気圧があり、高度5000m付近に太平洋高気圧がある。そして、その間に南北傾斜高気圧が入ってくる。いわば、日本は〝高気圧のトリプルバーガー〟のような状態になっています。
つまり、この3つの強力な〝トリプル高気圧〟があるために、偏西風や梅雨前線は北に押しやられてしまい、6月は記録的な猛暑になったということです」
気象予報会社「ウェザーマップ」の気象予報士・山田真実氏も、偏西風の北偏と太平洋高気圧の影響が6月の暑さにつながったと指摘する。
「やはり今年は、平年なら本州上空にある偏西風が北海道付近まで北上しているため、太平洋高気圧の張り出しが強いんです。これは日本の南(フィリピン付近)やインド洋の海面水温が高いことも影響しています。
本来は、海面水温が高くても、台風によって熱い海面と冷たい海中の水がかき混ぜられて海面水温が低くなるのですが、現在は海中の水温もそれほど低くありません。
しかも、台風1号の発生は平年なら3月ですが、今年は6月に入ってからとかなり遅かったのです」
■今後は大干ばつか、超豪雨のどちらかに!?梅雨前線が消えるほど異常な6月だったが、今後はどうなるのか。梅雨前線はまた消えるのか。それとも平年のような梅雨になるのか。前出の立花教授が解説する。
「梅雨前線は北に行くと消えるんです。北に行けば行くほど水蒸気が少なく、乾いているので雨が降らなくなります。
そして、トリプル高気圧の影響で梅雨前線が下がらずに北に追いやられてしまえば、梅雨明けということになりますが、これはさまざまな要素が関係してくるのでまだわかりません。
ただ、梅雨前線が消えてしまうと、そのまま梅雨明けになり、猛暑が続くということは予想できます。
そして、暑いまま7月に雨が降らなければ、8月の夏本番も降らないでしょう。そうなると、暑いだけではなく大干ばつになります。すると、今、不足しているお米の収穫量は減るでしょうし、品質も落ちるはずです。
2023年の7、8月は猛暑で雨が全然降りませんでした。そのため、お米の収穫量は減少し、品質も低下しました。同じようなことが起こる可能性は高いと思います」
では、梅雨前線が下がってきた場合はどうなるのか。
「その場合は豪雨になるんです。梅雨よりもすごい雨です。なぜかというと、6月中旬に梅雨前線が北上していましたよね。そして暑かった。暑いと地面の温度上昇だけではなく、日本周辺の海面水温も上がるんです。すると、水蒸気がたくさん出ます。
特に夏至(6月21日)の前後が暑いと、より海面水温が上がりやすい。夏至は一年のうちで最も昼の時間が長い日ですから。
もし、この時期に梅雨前線があって曇っていたら、海面水温はあまり上がらなかったはずですが、今年のように海面水温が爆上がりしているときにもし梅雨前線が戻ってくると、強烈な豪雨になる可能性が非常に高くなります」
ということは、梅雨前線が北上して消えても、南下して下がってきても、どちらも大変な気象になる?
「そういうことになります」
■〝史上最も暑い夏〟の昨年を超える暑さに!?さらに、7月後半から8月の夏本番はどうなるのか。昨年のような40℃近い日が続き、昨年を超える気温になることも考えられるのか。
「具体的な数字はわかりませんが、6月の夏至前後に梅雨前線が北上したのが大きいんです。日照時間が長い時期に日本周辺の海面水温を上げてしまいました。
6月に海面水温が上がってしまったら、トリプル高気圧が全部消えたとしても、海からやって来る空気は非常に熱いわけです。その熱い空気が8月に日本にやって来る。昨年と同じような状況や、昨年を上回る暑さになることも考えられます」
昨年7月29日に埼玉県熊谷市で40℃を観測。同日には栃木県佐野市で国内最高気温第3位となる41.0℃を記録。今年も40℃超えの夏が来るのか?
昨夏の最高気温は、栃木県佐野市で記録した41.0℃だった。これは国内での歴代最高気温第3位だ。今年の夏は6月の梅雨前線消失とトリプル高気圧の影響で、国内最高気温を超える42℃が観測されてもおかしくない。
そして、暑さだけではなく台風による被害も甚大になるという。
「現時点で東南アジアの海面水温は30℃を超えています。これは、台風が生まれれば今の時期でも勢力が弱まらずに日本に近づいてくるということです。そして、真夏になればさらに強い勢力の台風が日本を襲う可能性が増えるでしょう」
前出の山田氏も台風が心配だという。
「昨年の台風10号は、強い勢力で鹿児島県に上陸した後、西日本を横断しました。関東地方まで大雨を降らせた迷走台風です。これまで沖縄付近で迷走することはあったのですが、北緯35度付近まで北上して迷走することは、とても珍しい。
海面水温が高い今年は、こうした迷走台風が関西や関東にやって来る可能性も否定できないと思います」
トリプル高気圧の影響で、今年の夏は42℃に迫る殺人的な〝超酷暑〟と〝超豪雨&超大型台風〟による〝シン・史上最も暑い夏〟になるかもしれない。
その心の準備だけは、しておいたほうがいいだろう。
取材・文/村上隆保 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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