QTで失敗した選手たちのより「大きなチャンス」に “日本版リランキング”へのさらなる進化に期待【現地記者コラム】
国内女子ツアーは、先週の「ニチレイレディス」で今季の全36試合のうち14試合を消化。ここから本格的な夏場のシーズンを迎える。そのタイミングで行われたのが、非シード選手を対象に、QTで決まった優先出場順位をシーズン中に入れ替える『第1回リランキング(RR)』だ。今週の「アース・モンダミンカップ」からは、ここまでのメルセデス・ポイントを基にした新たな優先順位によって出場選手が決まることになる。
この制度は、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)では2018年から導入。なにも国内女子に限った仕組みではなく、国内男子や海外でも行われている。国内女子では年2回実施。今年はニチレイと、9月の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」(宮城県・利府ゴルフ倶楽部)が、そのタイミングになる。
導入から8年が経つが、「総論として、ツアー強化の一環という意味で成果は出ている」というのがJLPGAの見解だ。この制度以前は、“有効期限1年間”のQTランクがシーズン通じて出場試合数を左右していたが、それを途中で入れ替えることで、自ずと選手たちにも緊張感が生まれてくる。導入初年度の18年にはQT117位だった原英莉花が、第1回RRで28位まで上がり、初シード獲得につなげたり、19年にはQT103位だった稲見萌寧がRR14位まで浮上し、7月には初優勝をつかみとった、という好事例も多い。
もちろん、その浮き沈みのドラマは今年も見られた。QT53位で迎えながら、前半戦8試合に出場し、RR15位まで浮上したルーキーの都玲華は、「QTがうまくいかなかった私にとっては大きなチャンス。それをつかみきりたいという思いはあったし、それができないと厳しい世界だと思う。すごくいい経験をさせてもらっています」と、この制度について話す。
また、昨年のプロテストトップ合格者の寺岡沙弥香も、QT54位で開幕を迎えながら、RRで21位とその“地位”を上げたひとり。こちらも、「(前半戦の試合)全部に出られる人にも勝てる可能性が頑張ればあるし、いい制度だなと思います」と、このシステムをモチベーションにしてきた。さらに、「何試合出られるかわからない順位だったし、はじめはリランキングを突破することしか考えてなかった」と、これ自体が選手にとって “中期的な目標”にもなっている。
協会、そしてルーキーたちのこのような声を聞き、この制度が、よりその範囲を“拡大”したら、さらなる戦力活性化、選手のモチベーション向上につながるように感じた。下部ツアーのステップ・アップ・ツアー(以下、ステップ)での活躍も即反映されるようになれば…というのも、そのひとつの手段だ。
QTでステップが主戦場になった選手は、主催者推薦もしくは主催者推薦選考会を勝ち抜くというのが、レギュラーツアーに出場するためのメーンルートになる。現在、推薦出場は原則、最大で年間8試合まで。ただ選手によって出られる試合数はまちまちだ。例えばルーキーの水木春花、前田羚菜は、それぞれ4月の「フンドーキンレディース」、5月の「ツインフィールズレディース」とステップで優勝しているが、ここまでレギュラーツアーの出場は0試合。これを見た時、かつてJLPGAに存在したルールが頭に浮かんできた。
ツアーには16年までステップの優勝者が、その2週目以降に開催されるレギュラーツアーに連続4試合出場できる、という規定があった。これは、17年にステップがツアー化されたタイミングで廃止され、今は「1年を通してステップ・アップ・ツアーで戦って実戦を積み重ねる」(JLPGA)ということが目指されている。そしてステップの賞金ランク上位2名が翌年のレギュラーツアー前半戦出場権を得ることができたり、同3~10位の選手や各大会の優勝者はQTに最終から出場できる権利が与えられている。
ただ、『ステップ優勝→レギュラーツアーで活躍→リランキング突破』というルートもイメージしやすく、上記した制度とリランキングは“食い合わせ”がいいようにも感じる。実際、JLPGAも「協会内でも、当時の(ステップの)ような制度の再導入を検討してもいいのではないかという意見はでています。選手のバランスなど、あとはレギュラーツアーのフィールドをどう作るかの問題はありますが、そういう議論も続けています」という考えを持っている。
今季からステップでは8月の「山陰ご縁むす美レディース」までの13試合の優勝者に、9月11~14日に茨城県の大洗ゴルフ倶楽部で開催されるメジャー大会「ソニー 日本女子プロゴルフ選手権大会」への出場権を付与している。こういったチャンスのひとつひとつが、選手のモチベーションにつながっていく。
もちろん、ステップで1年間戦い抜き、賞金ランク上位になることを目指すというのもひとつの戦略。ただ、「大王海運レディス」でプロ初優勝を挙げ、翌週の「パナソニックオープンレディース」に出場した際、ルーキーの青木香奈子が「自分のなかでレギュラーのコースセッティングは成長できるものだと思っている」と話していたことを思い出すと、レギュラーツアーへの継続参戦は個々の実力向上を促すのも、また事実だ。
JLPGAの「今のステップは、年間で頑張った人が翌年のレギュラーツアーに上がれる仕組み。そのなかで “ボーナス的”に出られる試合があれば、競争力がさらに高まるのでは、という意見も出ています。アメリカはそこまでやっていないですけど、日本独自のやり方があってもいい」という話を聞き、近い将来にでも、より進化した“日本版リランキング”が見られることを期待した。(文・間宮輝憲)
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