「ちょっとした新しい冒険」 ミンジー・リーが“長尺パター”でメジャー復活V
<KPMG全米女子プロゴルフ選手権 最終日◇22日◇フィールズランチ・イースト(テキサス州)◇6604ヤード・パー72>
トータルアンダースコアは3人のみ。そんな難コンディションでミンジー・リー(オーストラリア)が復活優勝を遂げた。4打差つける単独首位で迎えた最終日は、3バーディ・5ボギーの「74」と崩れたが、終始リードを守り、メジャー3勝目を果たした。
序盤に3つのボギーが来たが、2打目をグリーン近くまで運んだ9番パー5で初バーディ。14番で3メートル、15番で2メートルを決めて連続バーディを奪い、この時点で4打差。危なげなくゴールテープを切り、ウイニングパットを決めると目には涙を浮かべた。
2015年から米ツアーに参戦。同年には、18歳にしてツアー初優勝を飾った。21年「アムンディ・エビアン選手権」でメジャー初優勝。22年には「全米女子オープン」も制した。毎年のように勝利を挙げ、女子世界ランキングはトップ10の常連。だが昨年は未勝利に終わり、ランキングも右肩下がり。同ランキング24位で今大会を迎えていた。
今年は、ある大きな変化とともにシーズンをスタートさせた。「ここ数年はロングゲームではなく、パッティングに疑問を持っていた。大きな目標のひとつは、パッティングのスタッツを向上させることだった」。長年のコーチであるリッチー・スミス氏の勧めで、“長尺パター”の使用を開始した。
「ゴルフクラブにはたくさんパターがあるから、いくつか使ってみただけ。長尺パターを最初に選んだわけではない。練習を始めてみるとそれほど不自然でもないし、変な感じもしなかった。私にとってはちょっとした新しい冒険」
これまでは出場を見送っていた開幕戦「ヒルトン・グランド・バケーションズ・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」で、いきなり長尺パターにスタイルを変更し、周囲を驚かせた。同時に、最終日に自己ベスト「62」をたたき出し、度肝を抜かせた。
かねて、“長中尺パターでメジャーは優勝しない”と言われていたが、キーガン・ブラッドリー(米国)が11年「全米プロ」を中尺パターで優勝したことで、一気に火が付いた。その後はアダム・スコット(オーストラリア)が13年「マスターズ」を制するなど、注目を浴びた。女子では今年、ヤーリミ・ノー(米国)が長尺で優勝しているが、まだまだ珍しいスタイルだ。
ミンジーはこれまで、「型通りではない」クロスハンドグリップでパターを打っていた。「長尺に変えただけでかなり自由になった。手を使いすぎていた。手を少し離す、長尺を使うことが本当に役に立った」。
最終日は「少しインサイドに引いてしまっていたので、プレーンをキープすること」を意識した。4日間の平均パット数は「28.39」で全体3位、ストロークの貢献度は「2.536」で1位を記録。今季を通してみれば、パーオンホールの平均パット数「1.75」で8位(昨年1.82、95位)、1ラウンドあたりの3パット数では「0.46」で147位(昨年0.79、56位)と劇的に改善されている。
「本当にアメージング。たくさんの努力をしてきた。とてもいい気分だよ」。長尺パターとともに挙げた、これまでとはひと味違う勝利。女子ゴルフ界に新たな旋風を巻き起こすことになるかもしれない。 (文・笠井あかり)
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