ビハインド・ザ・ボールを作るのはパターから！　「フルショットの練習こそ上達を阻んでいる」

「頭を残せ」「顔を上げるな」といった、ヘッドアップ防止を目的としたレッスンは良く聞かれる。ただ、それでもアマチュアの上体が突っ込むクセが直らないのはナゼか？ 「小さな動きから始めることが大事。パットで『頭は右に、腕は左に』を体感することこそ上達の秘訣」とプロコーチの辻村明志は語る。

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頭を残せ、顔を上げるな……ビハインド・ザ・ボールの形で打つこととヘッドアップの防止は、ゴルフレッスンの定番です。またクラブやボールがどんなに進化しようと、もちろんこれらがスイングの大事な教訓であることは言うまでもありません。

ところがいつの時代になっても、この教訓通りの理想的な動きができないゴルファーが多いのはなぜでしょう。その原因のひとつとして、この動きはあくまでショットに限ってのものだという誤解があるように思います。

ヘッドアップをしない、ビハインド・ザ・ボールでのインパクトは、ドライバーからパターまで全てに求められる動きです。ところが、パッティングでこれができていないアマチュアの多いこと多いこと。カップが目に入るから、結果をすぐに知りたがるから、あるいはパッティングそのものを軽視しているせいかも知れません。パッティングで空振りした人はそうはいないでしょう。誰でも簡単に打てるのがパターです。しかし、パッティングの目的は打つことではなく、寄せることであり入れること。パット・イズ・マネーの重要性はプロに限らずアマチュアにも通じるものです。

重要なことは、実はショットよりパッティングの方が、この理想的な動きがやりやすいということです。誰もが簡単に打てるのがパター。ならばゴルフの基本中の基本は、パッティングの小さな動きの中から身に付けるのが賢明ではないでしょうか。

「頭は右に、腕は左に」は、ボクがよく選手たちに繰り返している言葉です。2つのヘッド、つまり自分の頭とクラブヘッドが、反対方向に引っ張り合う動きのことをカウンターと呼びます。ボールを強く叩く、クラブフェースに長くボールを乗せる、ヘッドを走らせる……ゴルフに求められるあらゆる重要な要素は、頭とクラブヘッドが引っ張り合うこのカウンターの動きにかかっている、と言っても過言ではありません。

具体的にどのような練習でこの動きを身に付けたらいいのでしょうか。実はとても簡単です。パッティングのアドレスの構えをします。そこからバックスイングなしで、フォローだけでボールを押し出します。どうでしょうか。自然と頭は右に、腕は左に動いているはずです。同じようにボールの代わりに重いモノ……水の入ったペットボトル、野球のボールなど……を押してみれば、その動きは容易に理解できるはずです。

さて、ここでもうひとつ。ボクが選手たちに繰り返すのが、「頭は右に、腕は左に」でした。しかし、「腕は左に、頭は右に」ではありません。ここにもうひとつ、ボクの意図が隠されています。というのは腕やクラブではなく、少しだけ頭を主導に考えてみたらどうだろう、という考えです。　もちろん頭と腕は同時に動きます。頭を先に動かせ、というのではありません。しかし腕やクラブを中心に考えるから、頭が同方向に動いてしまうのではないか？ ヘッドアップするなというのは、裏を返せば腕やクラブ主導だからではないでしょうか。そこに多くのゴルファーが長く悩まされてきた原因もあると思います。

インパクトの瞬間、頭を右に動かせば、自然と腕とクラブは左に出ていきます。2つのヘッドが引っ張り合う動きが、とても理解しやすいことでしょう。　パッティングの次は、扱いやすい8番アイアンか9番アイアンを使ってのハーフショット。ここでも少しだけ頭主導で、インパクトの瞬間に目線だけでも右方向に動かします。それだけでも2つの頭は、見事に引っ張り合うはずです。ただ、軸が右に傾かないように注意してください。

スイングの理想的な動きは、小さな動きから身に付けるものです。アマチュアは大きなクラブ、それもフルショットの練習をしたがるもの。それが上達を阻んでいる大きな理由であることをご理解ください。

■辻村明志
つじむら・はるゆき／1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元（はじめ）ビルコート所属。

※『アルバトロス・ビュー』851号より抜粋し、加筆・修正しています

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