あの“スケルトン”デザイン、なぜ姿を消した? ポリカ復権を願う声も
Xにてスマホやガジェットに関する発信をしているYuji(@ukimen_hometown)さんが、次のような投稿をしていた。
「OSにガラスの意匠が組み込まれ…筐体にもクリア素材の再到来…無いだろうなぁ ポリカーボネートよいずこへ。」

この投稿は、一見すると素材への懐古のように見えるが、実際にはプロダクトデザインの現在地と今後を見通した示唆に富んだ問いかけである。ここ数年、スマートフォンのOSは半透明やガラス調のUIを採用することで、画面に奥行き感や洗練された印象を与える方向に進化してきた。しかしそれに対し、筐体の素材は不透明で光沢感のあるガラスや金属が主流であり、視覚的デザインと実際の手触りとのあいだに乖離が生まれている。Yujiさんの投稿は、この“見た目と実体のズレ”に対する違和感と、それに伴う美学の揺らぎを表現している。
透明素材の美学とポリカの記憶

ポリカーボネート素材は、軽量で丈夫、加工しやすくコストパフォーマンスに優れた素材として、かつては多くのモバイル機器や家電製品に使われていた。特に90年代後半から2000年代初頭にかけては、ゲームボーイカラーやiMac G3のような“スケルトンデザイン”が一世を風靡した。内部構造が透けて見えること自体が未来的と考えられていた時期が確かにあった。
しかし、時代が進むにつれて「高級感」や「所有欲」を満たすための素材が求められるようになり、ポリカーボネート素材は次第に第一線から姿を消していった。その代わりに登場したのが、重厚な強化ガラスや金属フレームを用いたスマートフォンである。こうした素材は、見た目や触感には優れているものの、割れやすさや重さといった実用面での課題も抱えている。対してポリカは、実用性には優れるものの、透明感や質感では劣るという評価を受けやすかった。

一方で、近年ではNothing Phoneのように、クリア素材を積極的に取り入れたスマートフォンも登場している。背面を透明にし、内部の構造や装飾を“見せる”デザインにすることで、ユーザーに対する誠実さやプロダクトとしての完成度の高さを印象付けている。こうした製品の登場は、ポリカや透明素材の価値が見直されつつある証でもある。
見た目と触覚が一致する製品体験を
現在のスマートフォンは、OSの表現力やUIの進化によって、視覚的には“透明感”や“軽さ”を演出しているが、筐体そのものはガラスや金属の“重くて割れるもの”である。このギャップが、ユーザー体験における一貫性を欠く要因になっている可能性がある。Yuji(@ukimen_hometown)さんの投稿が注目される理由は、このデザインと素材の不一致に対する違和感を的確に言語化しているからにほかならない。
加えて、ポリカーボネート素材をはじめとするクリア素材の再登場には、技術的なハードルもある。たとえば透明プラスチックは傷つきやすく、紫外線によって黄ばみやすい。また、安価な印象を与えるという偏見も根強く残っている。しかし近年では、表面処理や特殊コーティングによって、こうした弱点を克服する事例も増えてきた。さらに、サステナブルな素材としての再生ポリカなど、環境面でも注目されつつある。
ユーザーが求めるのは、ただ軽い・薄い・速いだけのスマートフォンではない。所有して心地よく、見て美しく、使って楽しい製品体験である。そのためには、OSと筐体、UIと手触りが一致した“統合的なデザイン”が必要だ。Yuji(@ukimen_hometown)さんの投稿が示した「ポリカーボネートよいずこへ」という疑問は、スマホ設計の本質を突いた問題提起であり、プロダクトデザイナーにとっても無視できないメッセージである。
OSにガラスの意匠が組み込まれ…
— Yuji (@ukimen_hometown) June 10, 2025
筐体にもクリアー素材の再到来…無いだろうなぁ🥹🥹
ポリカーボネートよいずこへ pic.twitter.com/UIpZvjrSVy
※サムネイル画像(Image:「Yuji(@ukimen_hometown)」さん提供)
記事提供元:スマホライフPLUS
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