宮里藍も大切にしていた“バランス” これがアマチュア男性が女子プロより飛距離が出ない理由だった!
一般男性のアマチュアが、それほどパワーがなく体が小さい女子プロに飛距離で負けてしまうのは、「体の正面で打てていないこと」が一番の理由だと辻村は語る。一番のコツは、傾斜でもグラつかないようにバランス良く構えることだ。
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元プロ野球選手・城島健司さんと酒を酌み交わしながら、打撃論を交わさせていただいています。「結局のところ手なんかどうでもいいんですよ。こうやってバチーンとやるのが、一番強く叩けるんです」。右ヒジを畳んでワキ腹に当てた城島さんは、「バチーン」という言葉を発すると同時に、右腰を鋭く回転させ力説してくれました。さらに付け加えて、「このとき、叩くのはヘソの前、つまり体の真正面です。これがボールに一番エネルギーを伝えられるんです。今の時代では不謹慎かも知れないけど、ビンタだって一緒じゃないですか(笑)」と、付け加えてくれました。
これは打撃の真理をついているとボクは思います。そしてバットでもクラブでも、あるいは平手打ちでも、体の真正面で叩くのが最も強いのです。腕力のある一般男性のアマチュアが、体が小さい女子プロに飛距離で負けてしまうのは、実はここに理由があります。
理由はひとつ。体の真正面でインパクトを迎えられないからに他なりません。左サイドが開いて振り遅れ。逆に腕が伸びてしまうアーリーリリース。スイングも打球もまったく違いますが、共通するのは体の真正面でインパクトできない一点です。何より重要なのが体の真正面がどこかを知り、そして体の真正面でボールを捉える練習をすることでしょう。
プロがスイングの中で大事にしているもののひとつにバランスがあります。バランスのいいスイングは、誰もが追い求める理想です。まずバランスとは何か、バランスはどこでコントロールするものなのかを考えたいと思います。バランスには上下左右前後の6つがあります。結論を急げば、その6つが合わさった一点、それが臍下丹田(※せいかたんでん・おヘソの下5㎝辺り)だと考えています。バランスをコントロールするのはこの一点です。
ボクと(上田)桃子が荒川博先生(王貞治氏に一本足打法を指導し、本塁打世界記録まで成長させた元巨人軍コーチ。辻村や上田桃子のゴルフの師匠でもある。2016年に死去)の指導を最初に受けたとき、先生はアドレスした桃子を指1本で押しました。前からお腹を押し、後ろから背中を押し、左右からワキ腹を押し、上から頭を押し、両ヒジを下から押しました。どこから押されても、たちまち桃子の体はグラつき倒れそうになりました。
バランスは臍下丹田でコントロールしている。 当時、臍下丹田の重要性が分かったとしても、どう使うかが分かりませんでした。ただただ先生に押され、倒れないようアドレスするだけです。踏ん張れば踏ん張るほど、グラつくことも知りました。太い竹の上やバランスポールの上に立って構える練習もしました。平均台の上に立って素振りもしました。バランスの悪い状況を作れば、バランスが身に付くと思ったからです。
そうした訓練の中で、3つの言葉が浮かび上がってきました。「内」「真ん中」「下」の3つです。先にバランスには前後左右上下の6つがあると言いました。前後でいえば体の内、左右でいえば真ん中、上下でいえば下。上手に立てたときには、これが合わさった一点が熱くなります。これが臍下丹田であることを言葉ではなく実感した瞬間でした。
臍下丹田を意識し、そこを熱くするために、ぜひやってもらいたいドリルがあります。両手でALBA本誌(雑誌)を挟んでアドレスし、その状態で30秒かけてゆっくり振りましょう。もちろん、バランスを崩さないように。両手を合わせて雑誌を挟むと、重心が内に中に下に、そして一点に集まるのが分かるはずです。両手に少し力を入れて挟めば、腹圧が高まり、その一点、つまり臍下丹田が熱くなるのが分かるでしょう。ここがスイングバランスと、そして氣をコントロールするポイントです。
練習場では上手く打てるのに……と嘆く読者も少なくはないでしょう。練習場は平らな場所からボールが打てます。ところがコースはほとんど傾斜地から打ちますから、バランスが悪い人は例外なく傾斜地が下手です。傾斜地は立ち方もボールコンタクトも難しいからです。
すでに述べたように、そうした人はバランスの悪い状況を作り出して練習しましょう。太い竹やバランスポールは無理でも、コースの細い足場などで、バランスを崩さないように素振りをしてみましょう。また、フローリングの真っすぐな線に沿って立ち振るのもいいでしょう。バランスが悪いとフィニッシュで線から足がはみ出てしまいます。かつて宮里藍プロは、米ツアーでも片足で素振りをしていました。これもバランスを良くする練習といえるでしょう。不調に陥るほど、軸を保ってバランス良く振る練習をしたそうです。
最後にもうひとつ。力任せは、バランスを崩す大きな原因です。それが体の真正面でインパクトできない最大の理由。そんな人は目の前にゴルフバッグを置き、右手でも左手でもバッグをビンタしたらいいのです。もちろん体の真正面で。
■辻村明志
つじむら・はるゆき/1975年生まれ、福岡県出身。上田桃子、六車日那乃らのコーチを務め、プロを目指すアマチュアも教えている。読売ジャイアンツの打撃コーチとして王貞治に「一本足打法」を指導した荒川博氏に師事し、その練習法や考え方をゴルフの指導に取り入れている。元(はじめ)ビルコート所属。
※『アルバトロス・ビュー』850号より抜粋し、加筆・修正しています
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