平成レトロデジカメの異端児! 「デジタルマビカ」シリーズ【山下メロの平成レトロ遺産:075】
レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、現在の平成レトロブームを牽引する要素のひとつにデジタルカメラ(以下、デジカメ)があります。「写ルンです」などの使い切りカメラに続いて、デジカメ画像も、その低画質が「すでに懐かしい」と流行となりました。
MVC-FD7 初期のモデルで、フロッピーの読み書きが非常に遅い
そんなデジカメの源流のひとつに、昭和56年(1981年)に発表されたソニーの電子スチルカメラ、「マビカ(Mavica)」があります。CCDイメージセンサーを使って画像を電気信号に変換し、専用のフロッピーに記録する革新的なコンセプトで、後に製品化されました。
平成になりデジカメが登場しますが、内蔵メモリ容量やPCへの転送の煩雑さが問題でした。97年7月、そこに登場したのが、マビカのコンセプトを引き継ぎ、一般的なフロッピーにデジタル記録できる「デジタルマビカ」です。
MVC-FD91 中期モデル。大きなレンズが特徴。初期モデルに比べてフロッピーの読み書きが高速に
MVC-FD88 中期モデル。さらに高精細になったが、高画質だと当然ながらフロッピーに数枚しか保存できない
ソニーは96年からデジカメの「サイバーショット」を発売していましたが、当時の記録先は内蔵メモリのみ。しかし、デジタルマビカは、当時のPCに標準搭載で、入手も容易な3.5インチフロッピーでした。ソニー主導の記録メディア「メモリースティック」も、まだ発売されてない頃です。
デジカメでも使われていた記録媒体「スマートメディア」をフロッピーに変換するアダプター。USB普及以前はカードリーダーのケーブルもさまざまで、結局PCに標準搭載のフロッピーが手軽だったという例
フロッピーの容量は1MBほどしかなく、記録できる写真も20枚ほど。初期モデルではシャッターを押した後、保存のために10秒ほどの待ち時間が発生します。撮った画像のプレビューにもまた待ち時間。今では考えられないようなデメリットがありつつも、フロッピーの手軽さで後継機が次々発売されました。
高画質化によって、フロッピーでは容量不足となったこともあり、01年に8cmCD-Rに記録するCDマビカにも発展します。しかし、小型の記録メディアとUSBの普及により、PCへの転送も手軽でコンパクトなデジカメが主流になっていきました。
令和の今こそデジタルマビカで、フロッピーの読み書きにかかる、あのゆったりとした時間の流れを感じていただきたく思います。
撮影/榊 智朗
記事提供元:週プレNEWS
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