【6月のBS松竹東急】映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! ―― スターとなった、 出世作に注目!

6月のBS松竹東急に登場するのは、スターたちの出世作3本。岡野玲子の漫画を実写化した、周防正行の一般映画初監督作「ファンシイダンス」(89)。これはアイドルグループ『シブがき隊』を88年に解散後、本木雅弘が初主演した作品でもある。学生時代にバンド活動をしていた主人公が、実家の寺を継ぐために修行僧として1年間の修行に励むさまを、お坊さん業界のHOW TOを入れ込みながら、コミカルに描いた青春映画だ。本当に頭を丸めて役に挑んだ本木は、最初は嫌々ながら入った僧の世界に、面白みを見つけていく現代的な青年を自然体で好演。周防監督の次作「シコふんじゃった。」(92)でも、無理やり入部させられた大学の相撲部で、相撲の魅力にはまっていく青年を演じ、日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞に輝き、完全にアイドルから演技派俳優へと脱皮した。

キネマ旬報ベスト・テン第1位、毎日映画コンクール日本映画大賞などに輝いた、井筒和幸監督の「パッチギ!」(05)は、68年の京都を舞台にした青春グラフィティ。主人公は塩谷瞬演じる日本人高校生・松山康介だが、彼が一目惚れするのが、沢尻エリカ扮する朝鮮高校に通う少女キョンジャ。フルート奏者である彼女と仲良くなろうと、康介はギターを練習し、二人を結ぶ曲として〈イムジン河〉が効果的に使われている。民族への偏見や差別からの対立を乗り越えて愛を育む康介とキョンジャの姿が描かれているが、何といっても沢尻の清楚な魅力が目を引く。彼女はこの演技によってキネマ旬報ベスト・テン、報知映画賞、日本アカデミー賞などで新人女優賞を総なめにし、一躍女優として脚光を浴びること
になった。

大林宣彦監督が筒井康隆の小説を映画化した「時をかける少女」(83)は、今や青春SF映画の古典と言っていい。ラベンダーの匂いを嗅いだことからタイムリープの能力を持った女子高生・芳山和子が、未来人ケン・ソゴルと恋に落ちていく。この作品で映画デビューしたのが原田知世。前年の〝第2の薬師丸ひろ子〞を探す『角川映画大型新人募集』で特別賞を受賞した彼女は、思いがけず時間を移動する力を身に付けたことで、戸惑う少女を初々しく演じた。エンディングにかかる同名主題歌も歌った彼女は、ここから薬師丸、渡辺典子と共に『角川映画3人娘』のひとりとして、スター街道を歩んでいく。そればかりではなく、「時をかける少女」も新人女優の登竜門として、映画、テレビドラマ、アニメーションとして何度も映像化されていった。これは原田知世登場のインパクトが、それだけ大きかったことを物語っている。
他にも6月は、吉田秋生のコミックを原作に、中原俊監督がチェーホフの『櫻の園』を上演する女子高演劇部員たちの友情を描いた「櫻の園」(90)を放送。ここで演劇部員を演じた中島ひろ子、白島靖代の出世作になった。また同じく中原監督が三谷幸喜の戯曲を映画化した「12人の優しい日本人」(91)では、陪審員11号を演じた豊川悦司が注目を集め、この翌年あたりから彼はテレビドラマで引っ張りだこになる。若きトヨエツの存在感溢れる演技も見どころだ。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2025年6月号より転載)
BS松竹東急
BS260ch/全国無料放送のBSチャンネル
※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。
■6/7[土] 夜9時
「ファンシイダンス」
監督:周防正行
出演:本木雅弘、鈴木保奈美、大沢健、竹中直人、宮本信子 ほか
© KADOKAWA 1989
■6/14[土] 夜9時
「パッチギ!」
監督:井筒和幸
出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、尾上寛之、真木よう子 ほか
© 2004「パッチギ!」製作委員会
■6/20[金] 夜8時
「時をかける少女」
監督:大林宣彦
出演:原田知世、高柳良一、尾美としのり、上原謙、入江たか子 ほか
© KADOKAWA 1983
記事提供元:キネマ旬報WEB
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