55歳から始まった“米ツアー生活”に迫る「すごく楽しい、贅沢なおまけ」【藤田寛之の“人生付録記”】
昨年の「全米シニアオープン」で2位に入り、米シニア「PGAツアー・チャンピオンズ」のプレーオフシリーズに進出。2戦目で3位に入りポイントを上積みし、今季のフルシード権を得た藤田寛之。この第二の人生とも言える挑戦を『人生の付録』と表す。そんな米戦記を追っていく。(取材/構成・高木彩音)
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こんにちは、藤田寛之です。いまはアメリカを拠点に、PGAチャンピオンズツアーに挑戦する毎日を送っています。今年から本格的に渡米して、テキサス州のダラスに拠点を構え、家を1軒借りて、キャディの小沼泰成、マネージャー兼通訳の杉浦翔晟、この3人で共同生活をしています。2月の「ハッサン2世トロフィー」から参戦していますが、今回は私がどのような生活を送っているのかをお伝えしたいと思います。
■渡米の背景、生活の拠点
去年、アメリカツアーの出場権を得て、『せっかくなら一度どっぷりこの世界に浸かってみよう』と決意しました。今年の1月からダラスを拠点に、西へ東へと移動しながら転戦しています。アメリカはとにかく広い。月曜日はほぼ移動日で、飛行機を乗り継いで次の開催地へ向かうことが多いです。
選手用のホテルも2、3個準備してもらっているんですけど、いくら割引されたホテルでもやっぱり3人だと高くなってしまう。ホテルだと1人分で約200ドル(約2万9000円)だとすると、3人で約600ドル(約8万7000円)。これが月曜日から金曜日の7日間だと約4200ドル(約60万9000円)…。いや~、高い!
そのため、3000ドル(43万5000円)を目安にレンタルハウスを探します。場所によっては高いところもありますが、1000ドル(約14万5000円)ぐらいの“節約”になります。こっちは賞金も高いんですけど、経費も日本に比べて3~4倍かかるイメージで…。そんな理由もあって、杉浦がゴルフ場まで20分以内の場所で家を探してくれています。
■日々のルーティン、生活の工夫
食事もほぼ杉浦が担当してくれていて、外食は、行っても週に一度ぐらい。やっぱり、ずっと外食は、お財布的にもきついので、助かっています。日本食はもちろん、韓国料理やパスタ、煮魚など本当にバリエーション豊富で楽しい食卓にしてくれています。炊飯器と醤油、みりん、酒、いろいろな出汁(だし)系などの調味料は必須で、どこへ行くにも持って行っていますね。
彼は料理することが好きで、とても美味しいですよ。でも今まで人に毎日作ることはやったことないでしょうからね。そこは初めての体験だと思います。たまに私が「お腹が痛くならないようなものを頼むね」なんて言ったりしていますけど(笑)。また洗濯はそれぞれで行っています。食器の片付けなどは小沼がやってくれている。それなりに分担しながらやってくれています。
試合がある日のルーティンは、まず朝は家でストレッチをしてからゴルフ場に向かいます。スタート時間の約1時間40分前には到着して、ゴルフ場で朝食を摂り、1時間10分前から練習開始。スタート時間が遅いときは家でご飯を食べて、ゴルフ場に1時間20分前ぐらいに到着する感じかな。帰宅後は、とにかくストレッチです。
正直、こちらに来てから体力面がけっこうきつい…。なかなか体の疲れが抜けないんです。自分のセルフストレッチだと疲れが取れなくて厳しいので、最近は疲労回復のために、1キロ7分ペースで15分ほど走るようにしています。トレーニングというよりも、疲れを残さないように血液循環を良くしてというアプローチで疲労を取っていこうと。いつぐらいからかな? …ここ1カ月くらいはやっていますかね。
走り始めてから、違いも感じます。継続すれば、より違いを体感できると思っています。また、今年からWHOOP(フープ)という、睡眠や休養に特化したデバイスを使用しています。手首や上腕に着用するんですけど、これにリカバリーという項目があります。15分間走った翌日は、リカバリーの数値がすごくて、体の回復がいいんですよね。まあでもフープによると、ちょっと走るのもやめといたほうがいいぐらいの時もあるんですけど(笑)。連戦時は疲れすぎていて走らないほうがいいときもあります。
■55歳からの新生活、藤田寛之にとって?
意外とハプニングも少ないです。唯一あったのは、ニューバランスのシューズをレンタルハウスの外に干していたら、盗まれました(笑)。夜、暗くなってからは家も出ず、トラブルを防止してます…うん、絶対に出ない(笑)。なにが起こるかわかりませんからね。驚いたのは、フリーウェイ(高速道路)でも人が歩いていること。人が横断していたりとか、手を挙げて乗せてくれみたいな。そこはあまり理解ができないですね…(笑)。
ポジティブなことは…あったかな?(笑)。でも、この舞台に立てていること自体が、まず何よりも幸せです。チャンピオンズツアーに参戦しているという事実が、自分にとってはご褒美のようなもの。まるで日本シリーズ(国内男子ツアーでシーズンの賞金ランキング上位者しか出場できない最終戦)が1年間続いているような。日本シリーズって1年間頑張ってここに来られるのが素晴らしいみたいな感じじゃないですか。そんな気持ち。
アメリカにどっぷり浸かりながら生活してることもすごくいい。『大変でしょう?』と、言われたりもします。もちろん大変な面もあるけど、それよりもワクワク感のほうが多い。新しい世界、文化に触れるのは嫌いではない。アメリカの文化に触れることも、自分にとってはすごく新鮮で楽しいんです。地元に『H-E-B』というスーパーがあるんですけど、これが最高なんです。最初は物珍しさもあって楽しんでいたけど、今はもう馴染んできて、ちょっと飽きてきたかな(笑)。
そういえば我々3人が好きな『クロワッサンドーナツ』みたいなものがありまして。一回買ったら、これが美味しくてハマりましたね。夕方に行ったら、それだけが売り切れていることもあって人気なんだと思います。そんな感じでショッピングや私生活も楽しんでいます。
アメリカでの生活は、『第二の人生』というよりは、自分にとっては“人生の付録”みたいな感覚なんです。メインではないけれど、すごく楽しい贅沢な“おまけ”。人生の中でこんな時間が持てて、本当にありがたいなって思っています。何歳になっても、新しいことに挑戦するというのは、悪くない。そう思える毎日です。
<ゴルフ情報ALBA Net>
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