綾野剛 VS 柴咲コウ 同じ出来事なのにまったく供述が違う 「でっちあげ」本編映像
2025年6月27日より劇場公開される、第6回新潮ドキュメント賞を受賞した、福田ますみのルポルタージュ「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」の映画化作「でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男」から、殺人教師の疑惑を向けられることとなる薮下誠一(綾野剛)と、そのいじめの対象とされる児童・氷室拓翔の母・氷室律子(柴咲コウ)が対峙する家庭訪問を、それぞれの立場からの供述を基にした回想によって比較する本編映像が公開された。
映像は左右に二分割された画面から始まり、土砂降りのなか傘も持たずに氷室家のある高級マンションのエントランスへと歩いていく薮下の後ろ姿が映し出される。そして、律子目線の氷室律子の供述と、薮下目線の薮下誠一の供述による、異なる状況が描かれる。
氷室律子の供述による映像での、律子の目に映る薮下の振る舞いは横柄で傲慢。律子に迎えられ、扉が開くやいなや、薮下は「正直気分悪いです」と夜分の実施となった家庭訪問に不満をあらわにする。びしょびしょにぬれた靴下にもかかわらず、勧められたスリッパを履くことなくそのまま部屋に上がり込み、穏やかな口調ながらも児童である拓翔への憎悪すら感じさせる言動や、突然机をたたいて律子を困惑させる様子は危険人物そのもの。映像はその後、まったく同じシチュエーションの薮下目線に移りかわる。
薮下誠一の供述による映像では、雨にぬれた薮下を無表情で迎え入れる律子と恐縮しきりの薮下の姿が映し出される。告発された薮下の目に映る律子の振る舞いは、一般家庭のそれとはかけ離れた奇妙な雰囲気。じっと薮下を見つめたり、冷蔵庫を激しく閉めたりする瞬間など圧の強さが垣間見える律子は、自身も小学生まで過ごしたというアメリカの教育について延々と語り続ける。能面のような表情で「“アー、ブゥ、クゥッ、ドゥ”」と言い出した律子に合わせ、「“アー、ブゥ、クゥッ、ドゥ”」と繰り返す薮下はすでに何かに支配されたようにも見え、律子は冷たく奇妙な人物に映る。


綾野はこの2パターンの同じシーンの撮影について、「テストの時にとてつもない緊張と高揚が連鎖した。柴咲さんから出ている律子さんのムードを受け取れたので、あの薮下が生まれてきました」と語る一方、「すごく自由にやらせてもらった」「二人の世界に入っている」とも語っている。強烈でヒリヒリするような演技を見せた綾野と柴咲は、三池崇史監督から撮影直後に「二人とも狂ってる」という最大級の絶賛を得たという
「でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相」は、20年前に日本で初めて教師による児童へのいじめが認定された体罰事件を取り上げたルポルタージュ。報道をきっかけに、担当教輸は”史上最悪の殺人教師”と呼ばれ、停職処分になる。児童側を擁護する550人の大弁護団が結成され、民事裁判へと発展するが、法廷は担当教諭の完全否認から幕を開ける。
主人公の小学校教諭・薮下誠一を演じるのは綾野剛。薮下を児童・氷室拓翔への体罰で告発する保護者・氷室律子を柴咲コウが演じるほか、亀梨和也、木村文乃、大倉孝二、迫田孝也、光石研、北村一輝、小林薫も出演する。監督は三池崇史。実話をもとに人間の静かな恐ろしさを描いた、三池監督の作品群の中でも異色作となっている。
【作品情報】
でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男
2025年6月27日(金)全国公開
配給:東映
©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会
記事提供元:映画スクエア
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