プロ野球「大化け」する投手&野手は誰だ!? "驚異の的中率"を誇るお股ニキが全力分析!! パ・リーグ有力株は日ハム勢が多数!
昨季、自身初の最多勝に輝いた日本ハム・伊藤大海。「日本ハム時代のダルビッシュ有クラスの存在になっています」(お股ニキ氏)
昨季と比べて、進化やレベルアップ、復活を遂げた選手について、現役選手からの支持も厚い野球評論家、お股ニキ氏が徹底分析! 過去に「大化け」した逸材を何人も言い当ててきた"目利き"が注目する選手とは?
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■チームの調子まで左右する絶対的存在開幕から3週間が経過したプロ野球。昨季と比べて進化やレベルアップ、劇的復活を遂げた選手は誰なのか?
「急に進化するケースは多くない。元から良かった選手が伸びたり、復活したりするケースがほとんどです」と語るのは、1年前にも船迫大雅(ふなばさま・ひろまさ/巨人)の飛躍、菅野智之(当時巨人、現オリオールズ)の復活など、数々の"予言"を的中させた本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏だ。
まずは、"元からいい選手"の中でも「今季キャリアハイの成績を残しそう」と期待を寄せる3選手をピックアップ。投手では昨季のパ・リーグ最多勝、伊藤大海(日本ハム)を挙げる。
「もともと球速以上に速く感じましたが、昨年7月にボールの握りを変え、物理的に5キロ近くも球速がアップ。打者は相当打ちにくいはずです」
象徴的だったのは4月8日の楽天戦での完投劇だ。
「最後の打者は3球三振。その最後のボール、この日の120球目でも152キロを計測。今の伊藤は軽く投げても150キロ超を計測でき、完投しても疲れない。究極の投手の領域に足を踏み入れました。
伊藤の出来がチームの調子まで左右するレベルで、この楽天戦の勝利からチームは4連勝。日本ハム時代のダルビッシュ有(パドレス)クラスの存在になっています」
来日1年目の昨季、25試合連続安打の球団新記録を樹立したレイエス。「打率.330、本塁打30本以上も狙えます」(お股ニキ氏)
パ・リーグの打者で今季の大活躍を予想するのは、日本ハムのフランミル・レイエス。来日1年目の昨季はシーズン途中から順応し、25試合連続安打の球団新記録を樹立。その勢いは今季も健在だ。
「足がないので何番で使うかが悩ましいものの、すさまじい打棒です。腕を伸ばしながら外のスライダーなどを引っ掛けて打つ技術に優れており、長打も打てて、打率も残せるスイング。打率.330、本塁打30本以上も狙えます」
打者ではもうひとり、一昨年の首位打者、頓宮裕真(とんぐう・ゆうま/オリックス)も高く評価。昨季、打率.197の大スランプから一転、今季は再び首位打者を狙える打棒を見せている。
「バットを構えた段階で打ちそうなのがわかるほど。昨季の反省を踏まえ、今年は打てる構え、スイング軌道を取り戻しています。2年前の飛ばないボールに対応して打率.307、16本塁打の数字を残した選手ですから、今の状態を維持できれば、打率.315、25本塁打は期待したいです」

一昨年の首位打者、頓宮。「構えた段階で打ちそうなのがわかるほど。打率.315、25本塁打は期待したいです」(お股ニキ氏)
■若手もベテランも! セの注目株
目玉として挙げた3人以外にも、今季のブレイクを期待する選手は多い。まずはセ・リーグ勢。DeNAからは昨季の日本一に貢献できなかったふたりの名前が挙がった。
ひとり目は5年目の入江大生(たいせい)。作新学院高校では今井達也(西武)と共に全国制覇を経験。明治大学を経て、ドラフト1位指名を受けた右腕だ。
「実績面、フィジカル面ではエリート中のエリート。入団時から球自体はいいものを持っていましたが、肩の故障で昨年5月に手術。本人も期するものがあるはず。
ケガから復帰した今季は、すさまじい強度のストレートとフォークを投げています。今は中継ぎでも投げていますが、抑えに抜擢(ばってき)される可能性も」
5年目の入江。「ケガから復帰した今季は、すさまじい強度のストレートとフォークを投げています」(お股ニキ氏)
DeNAの中継ぎで頭角を現しているのが育成出身、支配下4年目右腕の宮城滝太(だいた)だ。
「もともと変化球のセンスが優れていましたが、球に強度がなかった。でも、今季はかなり力をつけてきて、1軍で通用するレベルに。カード1巡段階で防御率0.00。カーブとフォークがいいです」
昨オフ、DeNAから戦力外通告を受けた27歳の左腕・石川達也(巨人)の評価も高い。新天地で早くも先発し、プロ入り初白星を挙げた。
「DeNAでは登板数が少ないながらも2年連続で防御率1点台。投球能力やフォームは元から優れており、2軍監督時代に対戦した巨人・阿部慎之助監督が『チェンジアップがいいから打てない』と評価して獲得に至りました。
ただ、スタミナや投球術の観点で言えば、先発より中継ぎで力を発揮するタイプだと思います」
左腕では阪神の20歳、門別啓人(もんべつ・けいと)の名前が挙がった。開幕前のカブス戦では5回をわずか59球のパーフェクト投球で勝利投手に。そのまま開幕ローテの座を射止めると、2戦目でプロ初勝利を飾った。
「岡田彰布(あきのぶ)前監督も期待をかけ、私もドラフト時から注目していた投手です。フィジカルや技術的にいいものは持っているものの、球の強度が昨季はまだ足りなかった。
今季はそこも成長し、カブス相手にも実力を発揮しました。課題はまだありますが、先発で5~7勝は期待したいです」
ベテラン勢では2年前に左肘の遊離軟骨除去手術を受け、昨季わずか2勝の大野雄大(ゆうだい/中日)の復活に期待する。
「同学年の田中将大(巨人)に注目が集まりがちですが、状態でいえば大野のほうがいい。田中将と投げ合った試合では大野が負けましたが、自責点は2。バンテリンドームを中心に投げていけば、抑える試合は増えていきそうです」
田中将、大野と同学年の石山泰稚(ヤクルト)の名前も挙がった。4月5日の中日戦では史上21人目のイニング3者連続3球三振、通称「イマキュレート(欠点のない)イニング」を達成した。
「今年は球の強度、質がいい。ドラフト1位入団ですし、抑えで活躍した実績もある。フィジカルも実績もある投手が後年に復活する例はよくあるんです」
セ・リーグの打者では上林誠知(うえばやし・せいじ/中日)の名前を挙げる。
「スイングがだいぶ良くなり、オープン戦でも打率.341、3本塁打と活躍。開幕後はなかなか出番がもらえませんでしたが、久しぶりのスタメンでいきなり本塁打を放つなど結果を出しています」
■日本ハム勢多し! パの有力株パ・リーグ勢でまず名前が出たのは木村優人(ゆうと/ロッテ)。高卒2年目の19歳右腕だ。
「高校時代からフォームと球筋が良く、特にスラッターは抜群。肉体が未成熟でしたが、1年間プロで鍛え、いい球筋のまま150キロ台が出るように。防御率0.00だったオープン戦の勢いそのままに、シーズンに入れています」
高卒2年目、19歳の木村。「オープン戦では防御率0.00。その勢いのままシーズンに入れています」(お股ニキ氏)
ソフトバンクの24歳左腕コンビ、前田純と松本晴(はる)も注目株だ。
「前田純は『キャッチボールがいい』とスカウトが評する逸材。これは野球選手にとって最高のホメ言葉です。また、球は遅いのに縦の変化量が大きい"マジカルストレート"という特徴もあり、開幕ローテをつかみました。一方の松本晴も球に力があり、昨季からいい球を投げていました」
トミー・ジョン手術からの復活を目指すのは楽天の28歳右腕・西口直人。4月8日の日本ハム戦では3者連続三振の圧巻リリーフを見せた。
「もともと球の質は良く、空振りが取れるストレートを投げる投手です。日本の選手はトミー・ジョン手術を経験しても元の水準まで戻らないケースが多いですが、西口はしっかり戻した。あとはケガ明けでどこまで投げさせるか」
日本ハムからは杉浦稔大(としひろ)、田中正義、齋藤友貴哉(ゆきや)という3人のリリーバーをピックアップ。いずれも他球団から移籍し、日本ハムで再起を果たした投手たちだ。
「杉浦はドラフト1位でヤクルトへ入団し、ポテンシャルの評価は以前から高かった。日本ハム移籍後、2021年には守護神として活躍しましたが、その後は低迷。ただ、今季は球の強度も質も向上しています。155キロのライジングフォーシームや141キロのスプリットに加え、スラッターも理想的です」
新庄剛志監督が「ダブルストッパー構想」を掲げた田中と齋藤はどうか?
「田中は球の強度も質も良く、昨季終盤にスラッターを物にしてから安定感が増しました。齋藤も球の力はすごい。やや制球に不安はあるものの、真っスラ気味の不規則な回転で打者を制圧できています」
打者も日本ハム勢に注目。現役ドラフトでソフトバンクから移籍してきた24歳の吉田賢吾は、開幕早々に古巣からプロ初本塁打を放った。
「選球眼も含め、打席でのアプローチがいい。常時スタメンは難しくても、状況に応じていいスパイスになれる。それにしても、日本ハムは水谷瞬や郡司裕也など、他球団が使いこなせなかった潜在能力の高い打者をうまく覚醒させますね」
日本ハムの開幕4番に抜擢された野村佑希も気になる存在だ。新庄監督が「開幕から15試合は打席に立たせる」と明言したチャンスを生かし、開幕直後はチーム1位の本塁打数と打点数を稼ぎ出した。
「以前はドアスイングで、外にスライダーを投げられるとお手上げでしたが、左足の着地の仕方と角度を変えたことで、以前よりもだいぶ正面に向かって力が伝わるようになりました。フィジカル的素養は高いだけに、打率.260、16本塁打は期待したいです」
■想像以上の活躍も! 期待のニューカマー新人、新外国人選手はどうか? ルーキーではパ・リーグ打率1位を争う活躍を見せている西武のドラフト2位、渡部聖弥(わたなべ・せいや)がひときわ目を引く。
「手が伸びるというか、バットを長く使えるので、追い込まれてからの150キロ超のストレートでもカットできる。ドラフト時から『プロで通用するスイング』と言ってきましたが、ここまで打率を残せているのは素晴らしいです」
西武のドラ2、渡部聖。「バットを長く使え、追い込まれてからの150キロ超のストレートでもカットできる」(お股ニキ氏)
その渡部聖と広陵高校の同期で、5球団が競合指名した宗山塁(楽天)はどうか?
「非常に実戦的な選手です。クレバーで動きが良く、スイングもいい。守備も堅実なだけでなく、アジリティ(敏捷[びんしょう]性)もある。賢いし、顔も小さい。新人らしいイケイケのプレースタイルではなく、自分が打てる球が来るまで延々と待つことができるタイプです」
楽天のドラ1、宗山。「実戦的な選手。クレバーで動きが良く、スイングもいい。賢いし、顔も小さい」(お股ニキ氏)
その宗山と並ぶ目玉として、昨年のドラフトで4球団が競合した左腕・金丸夢斗(中日)はどうか? 腰のケガで出遅れたものの、「心配無用」とお股ニキ氏は語る。
「2軍戦での登板を映像で見ましたが、ストレートは151キロを計測。変化球も威力がありました。ケガさえ治れば確実に通用します。それくらい実力は抜けています」
中日のドラ1、金丸。「2軍戦で151キロを計測。ケガさえ治れば確実に通用します。実力は抜けています」(お股ニキ氏)
金丸のデビューが遅れる中、先に中日の先発マウンドを踏んだのは新外国人左腕のカイル・マラーだ。
「去年、アスレチックスで投げていたときよりも良くなりました。球が速く、スライダーとキックチェンジ気味のチェンジアップがいい。バンテリンドームが主戦場ということもあり、結果を出しそうです」
パ・リーグの投手では、日本ハムが獲得した昨季の台湾MVP右腕・古林睿煬(グーリン・ルェヤン)の名前が挙がる。
「球の強度やフォームは素晴らしい。当初は中継ぎで検討していたようですが、あまりにいいので先発起用することになりました」
新外国人ではないが、ロッテに3年ぶりの出戻りとなったのはタイロン・ゲレーロだ。
「滑らかなフォームから160キロを連発し、スライダーもフォークも速い。3年前はただ速いだけだったのに、現在は球の質が向上。ロッテもその進化を認めて再獲得したのでしょう。配球面での配慮は必要ですが、佐々木朗希(ドジャース)に代わる"幕張の速球王"になれる存在です」
野手では、巨人のトレイ・キャベッジが開幕から6試合連続安打といきなり順応性の高さを見せた。
「巨人は日本野球にアジャストできる外国人野手の傾向をつかんでいます。キャベッジもバットを寝かせ気味に構え、外に広い日本のストライクゾーンに対応できる。性格面も情熱的で、チームを勝たせるプレーができる選手です」
右脇腹を痛めて開幕に間に合わなかったジェイソン・ボスラー(中日)も注目株だ。
「キャンプで練習試合を見て、いい選手だなと思いました。打ち方の一連の動作がいいんです。期待していただけに出遅れは残念でしたが、その分、ここから期待したいです」
この中から何人のスターが生まれるのか? 各選手の飛躍に期待したい。
文/オグマナオト 写真/時事通信社
記事提供元:週プレNEWS
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