政治とメディアは誰のために?「能登デモクラシー」予告編と著名人コメント公開
「はりぼて」「裸のムラ」の五百旗頭幸男監督が、能登半島の中央にある石川県穴水町で続けられる草の根新聞の営みを捉えつつ、政治とメディアのあり方を問うていくドキュメンタリー「能登デモクラシー」が、5月17日(土)よりポレポレ東中野ほか全国で順次公開される。予告編と著名人のコメントが到着した。
人口が7000人を下回り、若者と高齢者がともに減りゆく《人口減少の最終段階》に入った穴水町。限界集落に暮らす元中学校教師の滝井元之さんは、2020年から手書きの新聞〈紡ぐ〉を発行し、利益誘導型の政策や町の未来に警鐘を鳴らしてきた。「何もしなければ、何も変わらない」
石川テレビのクルーは市井の眼差しにローカルメディアの存在意義を重ねながら、惰性と忖度が蔓延る役場と町議会の関係を浮き彫りにしていく。
2024年1月1日、能登半島地震が発生。災難に見舞われた人々を捉えたテレビ映像は、穴水に風穴を開けた──。
配給収入の一部は、能登半島地震復興のために寄付される。寄付先および金額は後日、映画公式サイトで発表。
〈コメント〉
能登の物語を観ることで能登の人を応援できれば……なんて些か傲慢な意気込みで観始めたが、むしろこれは能登の外側にいる人々を奮い立たせるエンパワーメント・ドキュメンタリーだ。
衰退の一途を辿る民主主義を手繰り寄せ、自らの手で社会を操舵し始めた穴水の姿は希望そのもの。「なら我々も政治を変えられるのでは?」と鼓舞されずにはいられない。
この社会で市民が持つ力を思い出させてくれる、今この国に最も必要な映画ではないだろうか。
──ISO(ライター)
草の根新聞と、その活動を報じたテレビによって、民主主義の萌芽が見える。
間違いなく良作、だけど、なんだか五百旗頭さんらしくないな……と思っていたら、最後にすげぇのきた!
問い質すタイミングも含め、最高だ。
これぞ五百旗頭ワールド。民主主義は、やっぱり簡単じゃないよね。
──大島新(ドキュメンタリー監督)
手書きの闘いを、同じ想いで支える人たちがいる。
過疎の止まらない町の未来をあきらめない。あきらめさせない。
一通一通が紡いできた連帯の輪は、地震の後にこそ濃く広がっている。そのたしかな軌跡が残された。
滝井さん夫妻の記録は、能登の各地で地震の前から奮闘してきた人たちにも光を当てるものだ。
そして能登だけの問題ではないと、自分にも支える手があることに気づかせてくれる。
──小森はるか(映像作家)
ここは、能登半島のちいさなまち
──なあなあな部分の脱却は難しいよなあ、何十年も住んでいると
町長の率直な本音の通り、町政はぐずぐずと腐敗している
しかしこのまちには、自治のための技術を持つ、うつくしい高齢者たちがいる
田畑を耕し、生きものを育て、果実をもぎ、水を引く
発行部数500部の手書きの新聞は、町民たちが本音を共有するための重要なメディアだ
書く、刷る、手渡す / 読む、カンパする、語り出す
80歳の主人公と、穴水町にエールを
──瀬尾夏美(アーティスト、詩人)
究極のオールドメディアともいえる過疎地の手作り新聞。
震災後の号に「私たちは生きています」と書き入れるとき、その筆の逡巡が雄弁で、本物の言葉を見たという気がした。
滝井さんは住人や議会に声をかけ続け、妻の順子さんは何度も「ありがとう」と口にする。
そんな「言葉を手渡す」という切実な営みが、即席の引用やリポストでは届かない扉をノックし続ける。
──岨手由貴子(映画監督)
世界の極東に位置し、少子高齢化社会を迎えた島国、日本。能登デモクラシーはそのまま日本のデモクラシーを映し出している。
果たして僕らは慣例を抜け出し、自分たちで社会を再建することが出来るのか?
僕らに滝井さんのような在り方が出来るかどうか。人のために動く彼の背中には猫さえも安心して乗っかる。
──ダースレイダー(ラッパー)
税金を払っている。嫌々ながら。
ちゃんと使ってもらわないと困る。
チェックする。なんだこれ、と疑う。
これ、民主主義の基本だ。
今、折れそうになっている。
なぜなのか。図太い問いに貫かれている。
──武田砂鉄(ライター)
全てが見どころだが新聞マニアとしては「地元メディアとは何か?」を考えさせられた。
誰かが監視をしないとすぐに群れる。五百旗頭監督や滝井さんのような人がいてこそ緊張感を持つ。あの「手書き新聞」こそ、石川県で最高の地元紙ではないか?観ればわかります。
──プチ鹿島(時事芸人)
能登で最も小さな自治体、穴水町。穏やかな海とおおらかな人々、選挙をすれば投票率は70%超え…。
何ともうらやましい!と思いきや、一皮剥けば権力の濫用、惰性、波風立てず「なあなあに」が蔓延。
この国の等身大を見た。それに抗い続ける地元の小さな独立系メディアと、立ち上がり始めた町民たち。民主主義の芽を育てていくために大切なものは何かを教えてもらった。
──前田亜紀(映像ディレクター/プロデューサー)
「能登デモクラシー」
監督:五百旗頭幸男
撮影:和田光弘 音声:石倉信義 題字・美術:高倉園美 編集・撮影:西田豊和
音楽:岩本圭介 音楽プロデューサー:矢﨑裕行
テーマ音楽「穴水ラプソディー」(作曲:岩本圭介)
プロデューサー:木下敦子 製作:石川テレビ放送 配給:東風
2025年/日本/101分/DCP
©石川テレビ放送
公式サイト:https://notodemocracy.jp/
記事提供元:キネマ旬報WEB
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