楽天・宗山 塁に続く逸材も!? 東京六大学リーグの有望選手たち
楽天のスーパールーキー・宗山 塁が連日、プロ野球界でセンセーショナルな話題を提供している。その宗山は昨年まで明治大の選手として、神宮球場で開催される東京六大学リーグで戦っていた。
伝統と人気を兼ね備えるリーグには、今年も逸材がそろっている。これほど優勝の行方が読みにくいシーズンも珍しいかもしれない。
昨年は清原和博(元西武ほか)の長男・清原正吾が慶應義塾大の主砲として話題を振りまいた。今季もリーグを席巻する可能性を秘めた〝2世選手〟がいる。4月12日に春季リーグ戦が開幕した東京六大学の有望選手を紹介しよう(成績はリーグ戦開幕前時点)。
高い打率と長打も期待できる、法政大の松下。内野の複数ポジションを守ってきた守備力も高く評価されている
まずは、ドラフト1位指名を狙える松下歩叶(法政大)と小島大河(明治大)の名前を挙げたい。松下はプロ側の需要が高い右投げ右打ちの内野手で、ひと言で言えば「上質な強打者」。桐蔭学園高の出身で、身長181㎝、体重85㎏と均整の取れた体格の持ち主だ。打撃フォームには変なクセがなく、素直にはじき返せる。
昨秋は打率.352、5本塁打、13打点と大暴れした。2年時は二塁、3年以降は三塁を守ったが、本来は遊撃を守れるだけの高い守備力もある。
今秋のドラフトでは、右打ちスラッガーの立石正広(創価大/東京新大学リーグ)が目玉格に挙がっている。だが、好不調の波が激しい立石に対して、松下はコンスタントに快打を飛ばせるタイプ。今季の活躍次第では、松下を買うスカウトもいるはずだ。
明治大の小島は、打撃力が高い捕手。通算打率はOBの宗山(楽天)に迫る.337。守備では強力投手陣をリードする
一方、小島は打撃力に優れた右投げ左打ちの捕手として、ドラフト上位指名が有力視されている。東海大相模高で2年冬に二塁手から捕手にコンバートされ、翌春のセンバツで優勝と快挙を成し遂げた。
右足を高々と上げるアクションの大きな打撃スタイルながら、コンタクト能力が高く左右に快打を打ち分ける。リーグ戦通算打率.337は、宗山が大学時代に残した通算打率.344に迫る数字だ。捕手としての守備力がさらに向上すれば、より高い評価を得られるはず。
明治大は歴代最長となる15年連続ドラフト指名選手を輩出してきたが、小島の存在によって記録が更新される確率は高いだろう。
明治大は投手陣も多士済々で、4年生投手の髙須大雅、大川慈英、毛利海大、久野悠斗の4人がドラフト候補に挙がる。
特に有望視されるのは、身長192㎝、体重94㎏の大型右腕の髙須。独特のスナップを利かせたフォームから、150キロ超の快速球と縦のカーブなどを操る。昨秋に右ヒジ痛で離脱したこともあり、リーグ通算3勝と実績は物足りないものの、そのスケール感は高く評価されるはずだ。
大川は勢いのあるストレートが光る右腕で、毛利はゲームメーク能力が高い左腕。さらに久野は、髙須に負けず劣らず将来性を評価される左腕だ。打者に向かって加速する感のあるストレートには夢がある。トミー・ジョン手術からの復帰途上とはいえ、万全な姿を見せられればドラフト戦線に浮上してくるだろう。
実績なら、伊藤 樹(早稲田大)、外丸東眞(慶應義塾大)の早慶エースが双璧。伊藤は3年秋に6勝1敗、防御率1.80の好成績で、チームを春秋リーグ連覇に導いている。打者の手元で伸びる速球と、小宮山 悟監督(元ロッテほか)から仕込まれた投球術を駆使する。
仙台育英秀光中時代から140キロ台の快速球とキレのある変化球を操り、「スーパー中学生」と話題だった。仙台育英高でも1年夏から甲子園を沸かせた、根っからのエリート。その顔立ちと投球のうまさは、往年の名投手・金子千尋(元オリックスほか)を彷彿とさせる。
慶應義塾大の外丸は、現役最多のリーグ通算14勝を挙げている右腕エース。昨年はケガもあり不振だったが復活なるか
一方、伊藤のリーグ通算13勝を上回る、現役最多の通算14勝を挙げているのが外丸だ。2年秋に6勝0敗、防御率1.54と無双し、明治神宮大会でも日本一の原動力に。
ただ、不振だった昨年は右肩痛に苦しみ、チームも低迷した。140キロ前後の球速でも両コーナーを丹念に突く正確なコントロールが戻ってくれば、上昇気流に乗りそうだ。
立教大は、エース右腕の小畠一心が右ヒジ痛から復活できるかがカギ。身長184㎝、体重90㎏と、いかにも剛腕のフォルムだが、本質的には技巧派投手。大事な場面では、小さく落ちるフォークを連投して打たせて取る。
また、甲子園の準優勝投手として知られる大越 基(元ダイエー)の長男・大越 怜も、好球質で巧みに打者を打ち取る。
東京大のアンダースロー・渡辺向輝は、ロッテで活躍した渡辺俊介の長男。今年の活躍次第でプロを目指す可能性も
最後に紹介したいのは、東京大が誇るアンダースロー・渡辺向輝だ。父・渡辺俊介(元ロッテ)はNPB通算87勝、WBCなど国際大会でも活躍した〝サブマリン〟だった。
向輝は東京の進学校・海城高を経て、東大理科二類に現役合格(農学部に進級)。東大で本格的にアンダースローに転向すると、昨秋にはエース格へとのし上がっていった。
腕を振る位置は父よりも上ながら、東大生らしく理詰めでアンダースローの技術を習得してきた。その技術論は野球選手というより、物理学者のようだ。本人のコメントの一部を紹介しよう。
「体重移動時に軸足に弾性エネルギーが蓄えられて、回転につながるんです」
「腱の伸張反射を使う量を最大化して、エネルギー伝達のロスを最小にすることにこだわっています」
昨秋は明治大戦で宗山を無安打に封じるなど、8回無失点の快投を披露。さらに法政大戦では、松下にソロ本塁打を浴びたものの、9回2失点の好投でリーグ戦初勝利を挙げた。今春の進化次第では、プロ志望届を提出する可能性を示唆している。
昨年に春夏連覇した早稲田大が3連覇を飾るのか、外丸が完全復活して慶應義塾大が3季ぶりに王座を奪還するのか。巨大戦力の明治大、長く優勝から遠ざかる法政大が栄冠をつかむのか。ダークホースの立教大、さらには東大が意地を見せるのか。今春は神宮から目が離せない。
取材・文・撮影/菊地高弘
記事提供元:週プレNEWS
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