日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男』をレビュー!
© 2023 Zeitsprung Pictures GmbH
ヨーゼフ・ゲッベルスはナチス時代のドイツで宣伝大臣を務めた、ルサンチマンとコンプレックスまみれのヘッポコ男である。
これは殊更にゲッベルスを貶めようという意図ではなくて、事実としてそうだ(もっとも、いくらゲッベルスのことを悪しざまに書いたところで、本人の悪行には到底追いつかないのだが)。
ゲッベルスはヒトラーの腹心として新聞、ラジオ、映画などメディアを駆使してプロパガンダ活動を展開、美辞麗句を並べ立ててナチスのイメージづくりに邁進し、戦争末期には「総力戦全国指導者」の地位を獲得、最終的には妻と6人の子供を道連れに自殺した。
本作はナチスの興亡をゲッベルスの視点からコンパクトにまとめたもので、彼の私生活もそれなりに描かれる。
しかし、権力をかさに女優に迫り、妻と不仲になるなど「本当にしょうもない男」としてのゲッベルス像はとりたてて目新しいものではなく(なぜなら事実だからだ)、また、予算の都合もあるのだろうが、大規模な撮影が必要な部分がことごとく記録映像なので、切り替えに忙しく散漫な印象を受ける。
中にはかなりショッキングな記録映像もあるが、「ゲッベルスの物語」とあまりうまく接続できていない。
STORY:1933年からナチスドイツの宣伝大臣を務めたゲッベルス。当初は平和を主張していたが、ユダヤ人排除や侵略戦争へと突き進むヒトラーから激しく批判される。ヒトラーからの信頼を取り戻すため、彼は次々にプロパガンダを実施する
監督・脚本:ヨアヒム・A・ラング
出演:ロベルト・シュタットローバー、フリッツ・カール、フランツィスカ・ワイズほか
上映時間:128分
全国公開中
記事提供元:週プレNEWS
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。