“80cm”に泣いた全美貞 懐かしき最終組は「この3人で回れてうれしかった」
<ヤマハレディースオープン葛城 最終日◇6日◇葛城ゴルフ倶楽部 山名コース(静岡県)◇6475ヤード・パー72>
最終18番ホール。全美貞(韓国)が放った80センチのウィニングパットは、カップに嫌われた。
「思ったより(ラインが)切れた。はじかれたので、しょうがないなと思った」。淡々と振り返る言葉の奥には、悔しさとともに、どこか吹っ切れたような潔さもにじんでいた。
勝負どころとなった17番パー4では、6メートルの上りバーディパットを沈めて首位に並んだ。「気持ちよく打てました」と、ツアー通算25勝を誇る勝負師は、ここぞという場面でしっかりと決めてみせた。
そして迎えた最終18番、先に穴井はバーディパットを決められずにパー。残るは美貞のバーディパットのみ。80センチを沈めれば優勝だった。「緊張はしました。でも、(カップに)はじかれたら仕方ないですね」。ボールはカップを“クルリ”と回って、外れた。
ホールアウトして間もなく、勝負はプレーオフへ。「目の前の一打に集中するだけ」と、ベテランらしい落ち着きで気持ちを切り替えた。先に美貞がバーディチャンスに寄せるも、穴井はその内側に付けた。
美貞はバーディパットを決められず、穴井に軍配が上がった。「そこ(優勝)まで行けなかったのは運。しょうがないですね」。勝敗を分けた80センチのパットを引きずることなく、百戦錬磨のベテランは潔く結果を受け入れた。
オフのトレーニングは「これまでの20%ぐらい」に抑えた。42歳となった今、自身の体と相談しながらゴルフと向き合っている。2017年「ヨコハマタイヤPRGRレディス」以来、遠ざかっている勝利。それでも「楽しくやれば、またチャンスはあるのではないかと思います」と前向きな手応えも口にした。
最終日最終組を回った39歳の藤田さいき、37歳の穴井については、「2人は飛ぶので、疲れました(笑)。距離の差がすごかったです」と笑いながら話す。3人のラウンドは、年齢を重ねたからこそ生まれる心地よい空気感に包まれていた。
「2人とはすごく仲がいいし、いい選手たち。そこについて行けるように私も頑張ったから、いい結果になったと思います。長く一緒に戦ってきた選手たちで、すごく懐かしい組。この3人で回れてうれしかったです」
若手の台頭が著しい女子ツアーにおいて、この日は近年まれに見るベテラン勢による三つ巴の戦いとなった。かつて時代を彩った3人が再び優勝争いを演じ、確かな手応えを得た最終日。勝利こそ逃したが、全美貞のゴルフは、まだまだ進化を続けている。(文・齊藤啓介)
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