「子育ては、『かわいい』『楽しい』…。その気持ちだけでは乗り越えられない大きな壁がある」真船佳奈が明かす“子育てのリアル”
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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テレビ東京の社員としてマーケティング局プロモーション部で働きながら、漫画家としても活動している真船佳奈さんが、育児エッセイ漫画『正しいお母さんってなんですか!?〜「ちゃんとしなきゃ」が止まらない!今日も子育て迷走中〜』(幻冬舎)を出版。
慣れない子育てに追われ、時に孤独を感じ葛藤を抱える中で、次第に自分らしい育児とは何か…その答えにたどり着くまでの過程をリアルに描いている。
「テレ東プラス」は、原作者の真船佳奈さんを取材。インタビュー後編では、真船さんが直面した育児における苦悩や葛藤、作品に込めた思いを語ってもらった。
※インタビュー前編はコチラ!
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子どもを持つことと自分の生き方を引き替えにするような“お母さん像”は、もうやめた方がいいと思っています
今作では、いつも元気で明るい真船さんが体験した育児における苦悩も描かれている。
産後、「子どもをしっかりと育てなくては」というプレッシャーや「自分は正しい親じゃない」と自責の念に駆られるあまり、次第に育児を楽しいとは思えず、ついにはうつに近い状態と診断されるまでが赤裸々に描かれている。

「あとがきにもありますが、普段私が描く漫画は面白テイストでワハハな印象だと思うので、これまで私の漫画を手に取ってくださった方がショックを受けないかというのはすごく考えました。
私は本名で顔も会社名も明かして漫画を書いています。そして、普段はギャグエッセイ漫画を出すことが多いので、“私は育児がつらかった”と発信するのはとても勇気がいることでした。本当に何度も原稿を書いては消し、書いては消し…迷い続けやっとの思いで書き上げたのですが、『ネガティブな話もありのままに書いてくれて本当にありがとうございます。実は私も同じような体験をしていて…』という感想をたくさんいただきました。
お母さんになりたくてなったはずなのに、子育ては想像以上に大変で、思いどおりにいかない。葛藤を抱える新米ママさんは一定層いるのかなと感じています」
勇気を持って表現したその根底には、真船さんのこんな思いが存在する。
「子どもを産む前は、お母さんってすごく神聖なイメージでした。子どもが全てで、子どものためならなんでも諦められる、そういう存在だと思っていました。だからこそ、育児で思いつめた時“どうして自分は正しいお母さんになれないんだろう”と自分を攻め続けました。他のお母さんたちはみんなちゃんとしていて、子どものために頑張れるのに、どうして私だけ…と何度も思いました。
だから私は、新しく親になった人たちが自分と同じような悩みや葛藤に直面した時、 “子育てがつらくなったり、お母さん“が苦しくなったりする時があってもダメじゃないんだよ、あなただけじゃないんだよ”ということを伝えたかったんです。
子育てでかわいくて楽しくてという瞬間はもちろん数え切れないほどあります。息子のことが大切で、とってもかわいい、でも“かわいい”だけでは乗り越えられない壁があることも事実。私自身がそういうリアルを出産前に知りたかったんですよね。事前に知った上で子どもを育てたかったし、自分がつらかった時、誰かに“私もあなたと同じだよ”と言ってほしかった」

「今回のエピソードの一部は、友達にも話してこなかったような内容でしたが、これが本になって誰かの手元に届いた時、“自分一人じゃなかったんだ”と思ってもらえたらいいなと。“普段陽気な漫画を書いている真船さんの発信だからこそ、すごく勇気づけられました”というお声をたくさんいただいたので、今は改めて“さらけ出して良かったな”と思っています」
子どもが生まれてすぐは眠れない日が続く、自由な時間も持てない…子育ては本当に大変だ。身軽で自由だった自分の羽根をもぎとられてしまったような…漫画を読んで、自分自身がそんな感覚になったことを、つい昨日のことのように思い出した。
さらに子育ては、我が子の成長のスピードや学習面、性格など、周囲と比べやすいという側面もあり、そこで悩みを抱える親も多い。
「人間がそれぞれみんな違うように、母もみんなタイプがそれぞれです。“子育て=100パーセント楽しい”と思えるお母さんもいるかもしれません。私のように、“そう思えない自分はダメなんだ”と悩んでしまうママもいると思います。でも、そう思えない自分を、どうかダメだと決めつけないでほしい。きっとそういうお母さんも、世の中にはたくさんいるはずなので」
子育てに正解はなく、親のカラーも十人十色。最近はママタレントが自分の時間を満喫しているSNSをアップしただけで、“親なのに…”“そんなことをする時間があるなら子どもの面倒を見るべき”などの声も上がる。本当に生きづらい世の中だ。
「私も少なからず“お母さんになったら自分のことは諦めなくてはいけない”そう思った時期がありました。お母さんになったら年貢の納め時じゃないけど、違う人生を歩まなければいけないという風潮。そんな中、“子どもを産むのが怖い。母親になったら自分が自分でいられなくなってしまうのではないか”そういう怖さを感じる人も多いのかなと思います。
昔は“子どもが生まれたら”お母さん“として生きる…”それが良くも悪くも当たり前でした。でも令和になった今、世の中が激変し、共働き家庭が大多数になっているにも関わらず、お母さんに求められる資質、期待値みたいなものは、子どもが少なくなった分、むしろ昔よりも上がっている気もします。
普段は頑張って子育てをしている親たちのちょっとした振る舞いや息抜きをたたいたりさらしたり…そういう感覚を持つ人は、結構いるなと感じます。
そんな世の中を見ていたら、“じゃあ子どもはいらない”と思う人が増えてもしかたがない。なので私は、子どもを持つことと自分の生き方を引き替えにするような“お母さん像”はもうやめた方がいいと思っています」

真船さんがたどり着いた“正しいお母さん”の答えとは?
子育てに行きづまり、苦しくなった後、真船さんはどうやって“どん底”から復活したのか…。漫画には、具体的な改善策が綴られている。
「一人で抱え込むのをやめ、周りの人に助けを求めまくりました。当時夫は、仕事で土日もないほど多忙を極めていましたが、夫につらい気持ちをすべてさらけ出して、もう無理をしないと決めました。そのころから一時保育など、とにかく一人になれる時間を確保するようになりました。
最終的に現在は、週1でシッターさんに来てもらって、その時は存分に漫画制作や、たまった業務をこなしています。
母にもシッターさんとして手伝いに来てもらうこともあります。
今の時代、私のように産前と変わらない生活を送ろうとすると、シッターさん、病児保育、家事代行など、やっぱりお金がかかります。国の補助はあっても、まだまだ自己負担額が多い。もっと子育て支援制度が充実して、少ない子どもたちをみんなで育てる…そんな社会になっていったらいいのかなと。
そして、親も親で人生を楽しめる社会になること。
子育てに一極集中しすぎると、どうしても視野が狭くなり、イライラしたり過干渉になったりしてしまうことがありました。自分の夢を子どもに託しすぎる、期待しすぎることで、親子の距離感がバグってしまうこともある。それよりも、家族みんなが好きなことをやって、それぞれの人生を大切にする方がずっとハッピーだと、私は考えています」
社会で子育て、親も自分自身の時間を大切にできる世の中に変わっていかないと、今後は成立しなくなるのかもしれない。
「“子育てが一段落したらなんでもできるから、子育て中は子育てに専念する!”という考え方の人もいますが、私はどうしてもそうは思えなくて。働き盛りで仕事も楽しい30代は人生1度きり。10年後に『戻ってきました!』と言っても戻ってこない仕事もあります。人との縁もそうで、10年連絡を取らなかったら離れてしまう人もいるかもしれない。だから私は、無理をしてでも今やりたいんです。
そんな私の姿を見ていた後輩が『真船さんを見ていたら、お母さんになるのも悪くないなと思いました』と言ってくれたんですよね。だから子育ても楽しいし、自分の人生もめっちゃ楽しい、お母さんになるってそんなに悪くないよと発信してくれる人がもっと増えたらいいなって」

母として、テレビ局員として、漫画家として、1度きりの人生を楽しむ…そんな真船さんがたどり着いた“正しいお母さん”の答えとは?
「私はお母さんとしては半人前ですけど、仕事が終わって家に帰って、息子に『ママ、今日ものすごく失敗しちゃったんだ』と話すと、息子が『ママ~それは“まあいっか”だよね。まあいっかだよ』と(笑)。意味もよく分かってないかもしれないんですけど、そう言ってくれて。おそらく私が無意識で『まあいっか』と言ってるからなんですけど。
そう言われてみると子育てもそうで、大概のことは『まあいっか』だよなって思います。
これは先輩に言われた言葉なんですが、育児と仕事の両立がうまくいかなくて落ち込んでいた時、『子どものため、じゃなくて、今は真船がやりたいことをやりなよ。ママがやりたいことをやって笑顔になるのが、きっと子どもにとって一番いいことだから』とアドバイスしてもらいました。今もその言葉が、私の育児の指針になっています。だから私にとっての正しいお母さんは、“笑顔でいること”。お母さんだからっていろいろなことを諦めなくてすむ世の中になればいいなと思います」

【真船佳奈 プロフィール】
2012年にテレビ東京入社。現在はマーケティング局プロモーション部にて番組宣伝を担当。制作局でのバラエティ番組や音楽番組のAD、Dの経験談を描く「オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます」(朝日新聞出版)で、2017年に漫画家デビュー。以来、平日はテレビマン・週末は漫画家の兼業生活を送る。
著書に「オンエアできない!Deep」(朝日新聞出版社)、「今日もわたしをひとり占め」(サンマーク出版)、「令和妊婦、孤高のさけび!頼りになるのはスマホだけ?!」(はちみつコミックエッセイ)。ブログ「テレビマン漫画家 真船佳奈のトラブルDAYS」にて漫画を公開中。
Twitter:@mafune_kana
Instagram:@mafunekana
記事提供元:テレ東プラス
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