漫画家・小田原ドラゴンが語る「おやすみなさい」【連載第9回】
小田原ドラゴン(おだわら・どらごん) 1970年、兵庫県生まれ。唯一無二の天才すぎる漫画家。『コギャル寿司』で第47回文藝春秋漫画賞受賞。代表作に『おやすみなさい』、ドラマ化された『チェリーナイツ』など。最新作に『今夜は車内でおやすみなさい。』
24年9月から週プレNEWS(集英社)でスタートした小田原ドラゴン渾身の新作漫画『堀田エボリューション』。果たして小田原先生はどんな道のりを経て、本作品にたどり着いたのか。ジックリ語っていきます。
新連載第9回。ついにヤンマガで週刊連載が始まります。
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98年3月、ヤンマガ(週刊ヤングマガジン講談社)で『おやすみなさい』(全8巻)の週刊連載が始まりました。
"童貞漫画の金字塔"と言われる(笑)、拙作『おやすみなさい』の主人公は星野鉄郎です。ミラーボール製造工場で働く若者で、完全無欠の童貞です。
話的には、そんな鉄郎がモテるために右往左往します。童貞の仲間と"ドーテーズ"を結成したりとかするんですが......何をやってもモテません。いつまで経っても鉄郎は童貞のままです(笑)。
ちなみにデビュー作の『僕はスノーボードに行きたいのか?』、そしてヤンマガの増刊号などに掲載された数話の主人公も全員、星野鉄郎です。この初期作は『おやすみなさい』4巻に収録されています。
振り返ると、『おやすみなさい』は苦しかったですね。ヤンマガで週刊連載を始めた頃は、ネームを捻り出すだけでも大変でした。週刊連載は息つく暇もないですから。
ましてや僕は、ペン入れから300日で週刊連載に辿りついてしまった。そう言うと聞こえはいいかもしれませんが、要は完全な独学ですから。
苦しくても自分なりのやり方を見つけて、地道にコツコツと、腕と作品を磨き続けるしか生き残る術はなかったので......。
とはいえ、漫画家の駆け出し時代の風景は、今でも時々思い出します。
東京・江古田のワンルームで紙とペン(ロットリング)で原稿を描いて描いて描いて......週刊連載に立ち向かっていた自分。
たまに夜中に(スクリーン)トーン(漫画などに使う画材)がなくなり、明け方までやっている画材屋に買いに行く自分......。
できることなら、この時代の作品を描き直したい気持ちもありますが(笑)。
いずれにせよ、気鋭の漫画家が連載陣にズラリと名を連ねるヤンマガで、僕が週刊連載を続けられたのは公私共にお世話になった初代担当のMさんの存在抜きには語れません。
次回はMさんについてお話をしたいと思います。
《つづく》
『堀田エボリューション』(©小田原ドラゴン/集英社)は毎月第2/第4土曜日に更新。現在、全話無料配信中
記事提供元:週プレNEWS
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