WWEのスーパースター中邑真輔が、TVアニメ『キン肉マン 完璧超人始祖編』でウォーズマンのライバル役を熱演!?
3月23日(日)23時55分より放送のTVアニメ「キン肉マン 完璧超人始祖編」Season 2 第21話に声優としてWWEのスーパースター中邑真輔が参戦。アフレコ現場にはゆでたまご嶋田先生も登場!!
1月期よりスタートしているTVアニメ「キン肉マン 完璧超人始祖編」Season 2。3月23日(日)23時55分より放送の第21話、ウォーズマンVSポーラマン戦での回顧シーンに登場する、ウォーズマンのライバル・カマーンダス。悲しき人生を送るその重要な声優役になんと、アメリカWWEのスーパースター・中邑真輔が参戦! 早速アフレコを終えた中邑選手を直撃!!
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――今日は2024年7月26日なんですよね。
中邑 はい。このあと、夜は両国(国技館)ですけど、試合前にすでに1試合やったような充実感と心地よい疲労感がありますね(笑)。
――さすがの集中力でした。今回の声優のオファーが来たときは率直にどう思いましたか?
中邑 それは嬉しかったです。ふたつ返事でOKさせていただきました。
ウォーズマンのライバル・カマーンダス。一見、優しそうな笑顔を見せる彼を中邑真輔はどう演じる!?
――声優をやるのは初めてですよね?
中邑 そうですね。初めての体験だったので、スタジオに入って収録をしてみながら「こんな感じでやるんだ」「こういうふうに指示が飛ぶんだな」と、すべてが興味深かったです。ただ、普段から痛みに触れていますから、大声で叫んだり、『キン肉マン』的な世界の表現をすることは得意なほうだとは思うので、わりとすんなり録ることができたんじゃないかなと。
アフレコ収録を前に、台本を読み込む中邑
――さきほどの収録に立ち会われていた嶋田先生は「中邑選手にこんな長いシーンで多くのセリフが用意されていたとは知らなかった。でもさすがWWEスーパースター、まったく畑違いだとは感じなかったし、とても上手でした」と言ってました。
中邑 あー、それならよかったです。嶋田先生とお会いするのは10年以上ぶりでしたね。何度か食事をご一緒させていただいたり、よく格闘技の会場にもいらっしゃるのでそういう時にご挨拶させていただいたりとかしてました。それと、2013年にボクがまだ新日本プロレスにいた頃に、勝手に悪魔将軍のマスクを作って入場の時に被ったことがあって。その時は、嶋田先生も「ん?」となったでしょうけど、見なかったことにしてくれて。のちに、公式で悪魔将軍とのコラボTシャツが出た時はホッとした記憶がありますね。「これで公認だぜ!」って(笑)。
心優しきカマーンダスの悲しき心情の変化にも注目してほしい
――そして嶋田先生は「あの中邑真輔に声をやってもらうという想定で、カマーンダスを描いたことは一度もなかった」とも(笑)。
中邑 ハハハハッ。「"最強"の二文字を掴むためには情けなど無用!」というカマーンダスの名言を、何度も録り直ししてもらいましたけど、ボクもカマーンダスの肉声をイメージしながら読んだことはなかったですから(笑)。「こんな感じで大丈夫かな?」って手探りでやりましたね。でも、これがアニメで放送されることで、ボクは今後『キン肉マン』ファンからは「カマーンダスの声の人」という認識のされ方をしていただけるわけですよね。
そもそもカマーンダスは、JC37巻の読切傑作選「ウォーズマンビギンズ 仮面の告白!の巻」にのみ登場するウォーズマンのライバル。アニメオリジナルで『キン肉マン』本編にも登場することとなった
――WWEを視聴しながら「あれ、カマーンダスの声に似てるな?」と思う人が出てきます(笑)。
中邑 『キン肉マン』のアニメに自分が声優として参加させてもらえるなんて、とんでもねいことだよなってつくづく思いますね。ボクは1980年生まれで、やっぱりキンケシも集めてましたし、キンケシで遊ぶ用のキン肉コロシアムも持っていましたし、当たり前のようにテレビアニメも観てましたからね。あとファミコンもありましたよね?
――マッスルタッグマッチですね。
中邑 そうそう。なんか、すべてがキラキラした思い出です。
――プロレスと『キン肉マン』が好きだった中邑少年が、憧れた技はなんですか?
中邑 やっぱりキン肉バスターとか。ボクは「7人の悪魔超人編」あたりが一番強烈に記憶として残っていて、バッファローマンとウォーズマンの対決にアツくなっていたりしたので、バッファローマンのロングホーンはかっこいいなと。
――ということは、ハリケーン・ミキサー。
中邑 「俺もツノで人を刺してみたいなー」とか思ってましたけどね(笑)。あとはアパッチのおたけびも強烈に印象に残っています。
バッファローマンの角(ロングホーン)から繰り出されるハリケーン・ミキサー(JC11巻)
――以前から『キン肉マン』の好きなキャラクターは「ジェロニモ」だとおっしゃっていますよね。
中邑 そうですね。やっぱり彼は超人じゃなくて人間っていう部分に惹かれたんですよね。アイロニーというか悲しみを背負っているほうがボクは感情移入できるというか。
――今現在の自身のプロレス人生にも、ジェロニモにシンパシーを感じる部分がありますか?
中邑 そうですね。少年時代からプロレスラーになってからも、ずっと"超人あこがれ"がありますね。自分は"ザ・プロレスラー"ではないと思っているので。
――WWEスーパースターが、今もずっと超人やプロレスラーに憧れ続けていると。
中邑 自分は長州(力)さんみたいな圧倒的な強さを示すビジュアルでもないし、あんな喋り方、言葉遣いもできない。藤波(辰爾)さんにはもう何を言ってるのかもわからない凄みがある(笑)。アントニオ猪木さんも「これぞプロレスラー」というルックスをしていて、公私問わずどんな苦難や逆境をも物ともしない胆力の強さがある。そういう人間離れした方がプロレスの先輩方には多いので、それがない自分が悔しくてしょうがない。
――「だってオラは人間だから...」と。
中邑 生身の人間だから、自分にできるやり方でやっていくしかない。そんな気持ちで今もずっとプロレスをやっています。本当に自分はまだまだですけど、そう思うことがいいのか悪いのかはわかりません。こうやっていつまでもハンブル(謙虚)でいるっていうことが、逆に自分の殻を破れないところなのかもしれない。でもこれもボクの性分だから、そんな自分とも付き合いながら、やり続けていくしかない。
アントニオ猪木の最後の弟子でもあった中邑。猪木、長州、藤波の前では、WWEスターもジェロニモなのか......(JC15巻)
――『キン肉マン』がプロレス界に与えた影響はあると思いますか?
中邑 多分にあると思いますね。やっぱり決着のフォーマットがプロレスだから、『キン肉マン』きっかけでプロレスを見始めたという新規のお客さんの獲得にも貢献したでしょうし、そして実際に、プロレスラーがキン肉バスターとかを使用したりしてるくらいですからね。やっぱりキャラクター形成において、『キン肉マン』からヒントをいただいたというプロレスラーは多くいるんじゃないかなと思います。あとは"火事場のクソ力"という概念は、プロレスそのものですよね。窮地に陥(おちい)ったときに数値化できない強さを発揮すること、見せることがプロレスだよなって。
――最近、火事場のクソ力を発揮したなと思った出来事はありますか?
中邑 まさについ最近ありましたね。試合で地元のフロリダの空港からニューヨークに向かう時、その日は家族の車で空港まで送ってもらったんですけど、チェックインする時に「スマホがない」ってことに気づいて。
――これから遠出をするっていう時に、スマホがないのは絶望に近いですね(笑)。
中邑 それで空港にいた見知らぬお兄ちゃんに「ちょっとスマホ貸して!」ってお願いして、家族に電話して、家に忘れていたスマホをまた空港まで持ってきてもらったんですよ。もうカンカンですよ(笑)。それで搭乗時間が過ぎてたんで「ありがとう!」って言いながらものすごく走って、セキュリティチェックでカバンを預けて、なんとか飛行機に間に合って。そこから3時間くらいのフライトでニューヨークに着いたら今度は財布がないんですよ。
――えっ?(笑)。
中邑 フロリダの空港で服のポケットに財布を入れていたことは覚えてるんですよ。だけど家族に連絡して「また空港に行ってくれないか?」って言おうものなら、ボクはもう地獄に葬(ほうむ)られるなと思って(笑)。そのときに「これは火事場のクソ力しかない」と思ったんですよ。
――おっ!
中邑 ボクは財布にGPSをつけてるので、GPSで財布のある場所を確認してみたら、やはりフロリダの空港にあることがわかって、空港に電話をして確保することにまず成功したと。さあ、これから3日間のニューヨーク、とりあえずスマホはあるので支払いとかは大丈夫ですけど、IDがないからホテルとか飛行機のチェックインができない。レンタカーを借りることもできない。
そこで「どうしよう」と思って、仲間のプロレスラーに連絡して、ホテルをブッキングしてもらって一緒に泊まり、自分は運転免許証も財布の中で運転できないけど、車も同乗させてもらって移動も問題なし。そうしてなんやかんやありながらニューヨークで3日間過ごして、フロリダの空港に戻ってすぐに財布をピックアップして、何事もなかったような顔をして帰宅したという......これが火事場のクソ力です。
――アハハハハ! 地獄の断頭台をくらわずに済みましたね(笑)。
中邑 普通だったらパニクって、うろたえてしまうであろうピンチの場面を、相当な頭の回転の速さで切り抜けたという。あれは火事場のクソ力だったなあ(笑)。
――また、何か『キン肉マン』に関するオファーがきたらどうしますか?
中邑 ボクのほうはいつでも。そこは友情パワーです(笑)。
中邑真輔(SHINSUKE NAKAMURA)
1980年生まれ、京都府出身。2002年、新日本プロレス所属。03年には23歳9ヵ月の最年少でIWGP王座を奪還。16年、世界一のプロレス団体WWEに所属。18年にはロイヤルランブルに出場、ジョン・シナら強豪相手に優勝を飾っている。1月1日には両国国技館、NOAHの舞台に凱旋。中邑真輔vs佐々木憂流迦戦が行なわれ、勝利した
取材・文/井上崇宏 撮影/鈴木大喜 ©ゆでたまご/集英社・キン肉マン製作委員会 ©ゆでたまご/集英社
記事提供元:週プレNEWS
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