【スーパー戦隊ヒロイン名鑑④】矢野優花(手裏剣戦隊ニンニンジャー)「当時高校生で兄と姉がいたので妹キャラはしっくりきました」
矢野優花
『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975~1977)の放送をきっかけにスタートしたスーパー戦隊シリーズが2025年に50周年を迎える。2月17日発売の『週刊プレイボーイ9・10号』の特集「素顔のスーパー戦隊ヒロイン大集結」では、歴代ヒロイン5名のインタビューを最新撮り下ろしカットとともに連続掲載した。
そちらの本誌特集では掲載しきれなかったインタビューの<完全版>を週プレNEWSで5日間に渡って配信。今回はシリーズ第39作『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015~2016)で、伊賀崎風花/シロニンジャーを演じた矢野優花さんが登場。
伊賀崎風花は、伊賀崎天晴/アカニンジャーの妹。破天荒な兄にツッコミを入れるしっかり者でありながら、敵のわなに引っかかるなどドジな一面も見せる魅力的な17歳のNJK(忍者女子高生)だ。当時の心境や秘蔵エピソードなどを通じて、作品の魅力を語る。
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――今年は『手裏剣戦隊ニンニンジャー』放送開始からちょうど10周年です。
矢野 昨年、そろそろ10周年だからとアオニンジャーの松本(岳)くんがYouTubeでお忍び同窓会を開いてくれたんです。久々にみんなで集まって、当時の思い出話をたくさんしました。みんなで話すと意外と覚えているものというか。今日も色々とお話しできたらと思っています。
――よろしくお願いします。まずは出演のキッカケからお聞きしたいのですが、そもそも矢野さんは9歳で芸能界デビューされているんですよね。
矢野 はい。スターダスト(事務所)に入所したのが9歳の頃でした。
――当時から女優になりたくて?
矢野 母親が勝手に応募したんです。当時は宮崎に住んでいたので、夏休みなどの長期休暇で東京に来てレッスンを受けたり、発表会に出たり。友達に会えるのが楽しくて、遠足気分で芸能活動をしていました。普段は宮崎で山の中を走り回っているような子供でした。
――まぁ、まだ子供ですもんね。17歳で出演された『ニンニンジャー』は矢野さんにとって初のレギュラードラマ作品です。
矢野 15歳、高校入学を機に上京しました。少しずつ広告やCMなどのお仕事をいただいたり、いろんなオーディションを受けたりするうちに、お芝居への意識がどんどん高まっていきました。
『ニンニンジャー』は上京から1年後にオーディションで決まったお仕事。ドラマの現場自体は経験がありましたが、本格的に役をいただいたのは初めてのこと。「もっとお芝居を頑張りたい」と本気で思いはじめたのは、この時期からでした。
――オーディションの手応えは?
矢野 最初は全く。ただ2回、3回と面接を受けるたびに緊張もほぐれ、手応えも感じるようになっていきました。3回目が最終面接だったのですが、10人残っていて。結果的に合格した実際の5人で質疑応答と、第一話の冒頭、お兄ちゃん(伊賀崎天晴/アカニンジャー・演:西川俊介)と再会するシーンを演じた記憶があります。恐らくもう1組の5人も同様のオーディションを受けたと思うのですが、もしかしたら5人まるごと違うキャストだった可能性があったかもしれません......。
――5人集まったときのバランスを見ていたのでしょうか。その時点でそれぞれの色は決まっていたんですか?
矢野 決まっていなかったです。てっきり自分は黄色だと思っていたので。まさか白色があるとは知りませんでした(笑)。その3回目のオーディションは、終わったあとに凄くやり切った感覚があって。だから合格を聞いたときは本当にうれしかったです。これからどんな1年間を過ごせるか、とても楽しみでした。
――本格的な女優人生の幕開け、という感じですね。
矢野 大泉学園にある東映撮影所の近くに引っ越しをするとか、高校2年生になっていたので大学受験はどうするかとか。クランクインまでに、当時のマネージャーさんと事務的な手続きをたくさん行なった記憶があります(笑)。かなりバタバタしていましたが、「人生が変わるな!」という感じで、流れに身を任せてとにかく楽しむことにしました。
――肝が据わっていますね。伝説の忍者の孫たちで構成された『ニンニンジャー』のなか、矢野さんが演じた伊賀崎風花/シロニンジャーは、天晴/アカニンジャーの妹で、女子高生という役でした。初めての役作りはどのようにして?
矢野 私も当時高校生で、実際の家族構成も兄と姉を持つ末っ子、共演者の中でも年下組だったので、妹キャラはしっくりきていました。具体的な役作りに関しては、シロニンジャーのスーツアクターを務められていた五味涼子さんのアクションを拝見しながら、一緒に考えていきました。
大きく足を開いてぴょんぴょん跳ねたり、上半身の上のほうでの身振り手振りを意識したり。後先考えずに突っ走るお兄ちゃんを制する真面目な役回りだったからこそ、嫌みにならないよう、風花としても愛されるキャラクターになるよう、ドジを踏むときは思いっきり。オーバーな動きは常に意識していましたね。
――全47話の本編のうち、風花を演じていて特に印象的だったエピソードを教えてください。
矢野 やっぱり初めてのメイン回(忍びの8「時をかけるネコマタ」)です。
ニンニンジャーとして修行に励む日々の中、普通の女子高生として学校生活を送りたい気持ちと葛藤するお話です。最終的に「兄を超える忍者になりたい」という子供の頃の夢を思い出し、NJK(忍者女子高生)として生きていく覚悟を決めるのですが、個性豊かな5人の中で風花はとりわけ普通の女のコなんだなと、彼女のことがよく理解できたのでスゴく印象に残っています。
――1年間、同じ役を演じる大変さもあったかと思います。
矢野 スーパー戦隊の現場は、物語の進行に合わせて台本をいただくシステムなので、その都度、役に統一感を持たせるのは確かに難しかったです。何より大変だったのはビジュアルの維持。当時は自分でメイクをすることが多かったのですが、無意識のうちにだんだん濃くなっているんですよ。みんなに指摘されて、少しずつ加減を調整するようになりましたけど......。現場に置いてあるお菓子の食べ過ぎでふっくらしていた時期もあります。自己管理も何も考えていなかった証拠ですね。未熟でした。
――最初に、10周年を前に同窓会をした話をお聞きしましたが、現場でも細かいことを指摘し合えるなど、メンバーの関係性の良さもうかがえます。仲が深まるきっかけは何だったんでしょう?
矢野 初めて顔合わせをしたときに、一番年上の松本くんが「みんなタメ口でいいよ」と言ってくれたんです。年下組からしたら、まずそこでスゴく気が楽になったというか。
カスミンティー(百地霞/モモニンジャー役の山谷花純)は、すでにいくつかドラマ出演の経験があって、お芝居の上では大先輩でしたが、役の関係性も相まって、全員が家族のような関係性でした。
追加戦士として途中参加した多和田秀弥くん(キンジ・タキガワ/スターニンジャー役の多和田秀弥。現・多和田任益)もコミュニケーション能力の高い方なのですぐに打ち解けていましたね。
――最初から仲が良かったんですね。
矢野 撮影所近くの定食屋「みゆき」でスタッフさんも交えゴハンを食べるのは、もはや定番でした。大阪に遠征した際、5人でUSJに行って、子供たちにバレたことも(笑)。
男子部屋、女子部屋と別れていたのですが、みんなで同じ部屋に集まって第一話の鑑賞会もしましたね。他のスーパー戦隊シリーズに比べて年の近いメンバーが集まっていたこともあり、自然と仲良くなっていました。
――唯一の女性メンバーである山谷さんとの親交は?
矢野 お互いの家に遊びに行ってお鍋をしたり、カフェに行ったり。カスミンティーにはプライベートで仲良くしてもらっただけではなく、役作りの姿勢も教わりました。気持ちを作るのは現場入りする前。自分ごとに落とし込んだ上で、撮影本番では全てを忘れ、自然と高ぶる気持ちでお芝居をする。他にも現場での立ち振る舞いを参考にしたり、相談をしたり、本当に頼りになるお姉ちゃんという存在でしたね。
――微笑ましいエピソードをたくさんありがとうございます。では改めて、風花という役、また『ニンニンジャー』という作品への想いを聞かせてください。
矢野 こうして話をして思うのですが、私にとって『ニンニンジャー』は、第二の故郷でもあるんです。女優としての基本を教わり、本物の家族のような仲間に出会えた。
『ニンニンジャー』でおじいちゃん役を演じていた笹野高史さんと、のちに別の作品で、またおじいちゃんと孫という設定でご一緒したんです。ちょうど私が20歳になる頃だったので、振袖を着て一緒に写真を撮っていただきました。特別な繋がりを感じるというか。『ニンニンジャー』で女優としてのキャリアを切れて、本当に良かったです。
――スーパー戦隊シリーズは今年で50周年を迎えます。長く続く魅力は何だと思いますか?
矢野 役者の成長と役の成長を、1年かけて見られるところが素敵だと思います。ヒーローではあるけど、最初から最強なわけでも完璧なわけでもない。だんだん強くなっていくからこそ、共感してもらえる部分もたくさんある。
中でも『ニンニンジャー』は、モチーフは忍者であるものの作品を通して描かれる大きなテーマは家族。心温まるエピソードが多いのも見どころです。これを機に、大人の方にも是非見ていただきたいです。
――10周年、成長した風花ちゃんは見られるのでしょうか?
矢野 どうでしょう。ただ先日久々にみんなで会ったとき、空気感は当時と変わらずでホッとしました。もしかしたら、あの頃から一番変化しているのは私かもしれないですね。当時はオカッパ女子高生でしたから(笑)。またみんなでお芝居できると嬉しいです。
●矢野優花(やの・ゆうか)
1998年1月6日生まれ 宮崎県出身
◯9歳で芸能界入りし、2014年「第1回制服女子&男子コンテスト」女子部門で準グランプリを受賞。2020年公開の映画『フィルムに宿る魂』でヒロインを演じたほか、CMやドラマ、舞台にバラエティなど多数出演
(衣装協力/アパートバイ/アダストリア)
取材・文/とり 撮影/荻原大志 Ⓒ東映
記事提供元:週プレNEWS
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