ヒップホップ業界が「常に新鮮な不良の供給に事欠かない」理由を呂布カルマが解説
『週刊プレイボーイ』でコラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」を連載している呂布カルマ
ラッパーとしてはもとより、グラビアディガー、テレビのコメンテーターなど、多岐にわたって異彩を放っている呂布(りょふ)カルマ。『週刊プレイボーイ』の連載コラム「呂布カルマのフリースタイル人生論」では『ヒップホップ業界』について語った。
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★今週のひと言「ヒップホップ業界はなんで不良が多い?」の質問に答える
俺のいるヒップホップの世界にはやたらと不良が多い。ヒップホップに詳しくなくて、定期的に報道されるラッパーの逮捕報道やSNSで散見されるもめ事だけを目にしていると、そう感じる人も多いだろう。
そういった印象を持つのは、まぁ半分正解だ。
確かにほかの音楽を含め、エンターテインメント業界の中でもこれほどまでに逮捕者の続出するジャンルはなかなか思いつかない。
海外のヒップホップ業界に至っては、死人も多く出ている。
それにはヒップホップという文化の持つさまざまな特性が作用しているのだけど、当たり前だが不良ではない、真面目なプレイヤーも多く存在するし、そちらのほうが数は多い。
ただ、悪目立ちというか、センセーショナルなニュースのほうが耳目を集めてしまうので、先述したように普段ヒップホップに興味を持っていない層からしたら、悪い評判ばかりが目に入ってしまうのはしょうがない。
しかし、勘違いをしてほしくないのは、決してヒップホップは不良がやる音楽ではないということだ。
正確には不良に対しても差別なく平等に門戸が開かれている、に過ぎない。
最近では徐々に変化しつつあるが、基本的にヒップホップの歌詞は自分語りだ。
ポップスのように絵空事や延々ラブソングばかり歌ったりすることは珍しい。
それゆえに他者と違った経験は歌詞になったときに興味を惹(ひ)くし、個性となる。
安直ではあるが、逮捕経験やさまざまな悪事、薬物使用時の心境など、他ジャンルでは歌詞にならないし、隠すべきようなことも積極的に歌詞になる。
そしてそれはヒップホップの主なターゲット層である若者にとって刺激的であり、歌われていることの是非にかかわらず、魅力的に映るのだろう。
普通であれば一発アウトで発言権を奪われてしまうようなことをしでかした人間でも、自分の経験をそのまま歌にし、その表現が優れていればスポットライトが当たって賛辞が贈られ、地位と富を得られるのだ。
そしてそんな不良出身のラップスターに憧れた若い不良が、不良の先のステップとしてラッパーを志したりするもんだから、常に新鮮な不良の供給に事欠かない。
ただし、そのような成功をつかむ者は、ほんのひと握りどころかひとつまみにも満たないのだが......。
もうひとつは大麻を含むドラッグカルチャーとの親和性の高さも、数多くの逮捕者を出してしまう原因となっている。
発祥地であるアメリカ本国のラップを見ても明らかなように、ヒップホップとドラッグは切っても切れない関係にある。
もちろん立場や個人的な好みによって一切薬物に手を染めずにラップをしている者も大勢いるのだが、だからと言って薬物を使用する同業者を責める権利はない。
必ず、100%と言っても過言ではないレベルで、どのプレイヤーもドラッグの恩恵を受けた偉大な先人たちの音楽に大いに影響を受けているからだ。
他ジャンルのように黙ってこっそりやっていればこれほどまでに目立つことはないのであろうが、そこはヒップホップ。
隠さずにありのまま歌ってしまうのだ。
それは青少年のリスナーたちに良くも悪くも影響を与えてしまうが、俺にその是非を問う資格はない。
撮影/田中智久
記事提供元:週プレNEWS
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