バウアー投手が日本球界に復帰。サイ・ヤング賞とはどれだけすごい?【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第151回
サイ・ヤング賞について語った山本キャスター
みなさんこんにちは、野球大好き山本萩子です。
今週、野球ファンを喜ばせたニュースのひとつといえば、トレバー・バウアー投手のDeNA復帰でしょう。
レッズ時代(2020年)にサイ・ヤング賞を受賞するなど輝かしい実績を残したものの、翌年に女性とのトラブルが問題となってMLBと契約できず。DeNAでプレーした2023年のオフもメジャー復帰を狙いましたが難しく、昨年はメキシカンリーグで過ごしました。
バウアー投手は、「今の目標は沢村賞を獲ること」と公言しているそうです。その年の日本最高の投手に贈られる沢村賞と比較されることも多いサイ・ヤング賞ですが、どれだけすごい賞なのでしょうか。
沢村栄治投手とサイ・ヤング投手。どちらも歴史的な投手の名を冠した賞です。サイ・ヤング賞は、世界最高峰のMLBにおいて最高の投手という栄誉、特別な権威がある賞という言い方もできます。
当然、過去の受賞投手は名投手ばかり。毎年両リーグからひとりずつ選ばれるのですが、勝利数や防御率、1イニングあたり何人に出塁を許したかを示す「WHIP」などの指標を基に、全米野球記者協会の記者の投票で決まります(1位票・7点、2位票・4点、3位票・3点、4位票・2点、5位票・1点の5種類の票を投票し、合計獲得点が最も高い選手が受賞)。
サイ・ヤング賞を受賞した時のバウアー投手がどれだけすごかったか、知らない方もいるかもしれませんね。コロナ禍の影響でレギュラーシーズンが60試合に短縮された2020年、存分に力を発揮したダルビッシュ有投手を上回ってバウアー投手が受賞した。そうお伝えしたら、すごさの一端がわかるのではないでしょうか。
同年、カブスに所属していたダルビッシュ投手は、リーグ最多の8勝、同2位の防御率2.10、WARはリーグトップと、ナ・リーグトップクラスの成績を残します。サイ・ヤング賞における下馬表もかなり高く、防御率1位だったバウアー投手との一騎打ちと見られていました。
投票の結果、バウアー投手が1位票を27票獲得して1位に。2位になったダルビッシュ投手は1位票が3票と差がつきましたが、日本人投手がこの賞にノミネートされ、1位票を得たのは初の快挙でした。
私はその年、シーズンを通してダルビッシュ投手の試合を追っていましたが、本当にすごかったです。世界屈指の投手のひとりであるダルビッシュ投手が、最高のパフォーマンスを見せたシーズンでも手が届かない。「サイ・ヤング賞とは、かくも遠いものなのか......」と感じたものです。
移籍情報を追いながら飲んでいた日。いよいよストーブリーグも大詰めですね
日本のプロ野球でプレーするサイ・ヤング賞投手は、バウアー投手が2人目です。1人目は、1962年に中日でプレーしたドン・ニューカム投手。初のサイ・ヤング賞受賞者で、1960年に引退したのちに日本球界から声がかかり、日本ではなんと打者としてプレーしました。
それ以降も、メジャーの大物選手がキャリアの終盤に日本でプレーすることはありましたが、バウアー投手のように現役バリバリのサイ・ヤング賞投手が加入するのは、前代未聞の出来事です。
バウアー投手の強みは能力だけでなく、研究熱心さにもあると思います。他球団の投手の球種を徹底的に研究し、時には自分とその投手の映像を合成して、トレーニングで自分のものにしてしまう。バウアー投手がメジャーを代表する投手になった陰には、その勤勉さがあってのことでしょう。
少し"オタク気質"な面も感じます。印象的だったのが、自身のYoutubeチャンネルでダルビッシュ投手と対戦した試合の映像を使い、ひたすら解説する動画です。ダルビッシュ投手を尊敬するバウアー投手が、まるで無邪気な少年のようで、「この人は本当に野球が好きなんだな」と胸が熱くなりました。
バウアー投手がサイ・ヤング賞を受賞前する前に来日した際、私がキャスターを務める番組にゲスト出演をしてくれたことがあります。モーションキャプチャーをつけて投球フォームを解説してもらったり、とても贅沢な時間を過ごしたのですが......収録後、スタッフのみなさんも一緒にお寿司を食べにいったんです。
バウアー投手は「お寿司が大好き」と笑顔で語り、器用に箸を使って召しあがっていました。そして言葉の端々に、ダルビッシュ投手をはじめ、偉大な投手をたくさん輩出する日本へのリスペクト、憧れを感じました。その時は、まさか日本でプレーしてくれる日がくるとは夢にも思いませんでした。
今年はDeNAの開幕投手を任されることもあり得るという報道もあり、バウアー投手への期待は高まります。彼が偉大な投手だということ、人柄も魅力的であることが少しでも伝わったなら嬉しいです。
だからこそ、声を大にして言わせてください。バウアー投手の投球を、球場に見に行こう!
それではまた来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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