【2月のBS松竹東急】映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! ――刑事の相棒、 年の離れた恋人、宿敵。 さまざまなコンビの形
映画にはさまざまなコンビが登場する。2月に放送される作品の中から、コンビに注目した3作品を紹介。「ラッシュアワー」(98)は、ジャッキー・チェン演じる香港警察のリーと、クリス・タッカー扮するロサンゼルス警察のカーターがコンビを組む、コメディアクション。二人はロス在駐の中国領事の娘が誘拐された事件を捜査するが、マシンガン・トークでしゃべりまくるカーターと、リーの真面目な性格のかみ合わなさが面白い。ジャッキー・チェンはこの作品の全米大ヒットによって、ハリウッド映画に次々と出演。「ラッシュアワー」も第2作(01)、第3作(07)とシリーズ化され、パリを舞台にした第3作には、真田広之がリーの幼馴染で最大の宿敵として現れる。エッフェル塔での二人の闘いは、互いのアクション俳優としての力量を発揮した、見応え充分の名場面だ。
その真田広之が初の悪役を演じた「必殺4 恨みはらします」(87)をはじめ、藤田まこと演じる中村主水が主役を務めた『必殺』シリーズの映画版6作品も、一挙に放送される。各作品の印象を言うと、第1作は殺し屋集団同士のバトルを豪華絢爛に描出し、第2作はコメディに走った異色作、第3作は工藤栄一監督の映像美が光るハードなサスペンス、第4作は深作欣二監督がJACの面々を使った一大アクションで、第5作はシリーズ初登板の舛田利雄監督による、他と肌合いが違う娯楽作といったところ。
コンビ映画としておススメしたいのが、第6作の「必殺! 主水死す」(96)。シリーズの〝顔〞、中村主水が死ぬということで話題を集めたが、主水の前に立ちはだかるのが津川雅彦演じる〝権の四郎〞。主水と四郎には過去の因縁があり、クライマックスで二人はお千代という女をめぐって対峙する。宿敵同士をコンビと呼ぶのは異例かもしれないが、津川雅彦は『必殺』シリーズに何度も悪役で出演し、第24作『必殺橋掛人』(85)では主演を務めた名優。その彼と藤田まこととの緊迫感溢れるやり取りは、この作品最大の見せ場だ。果たして主水は、どんな最期を遂げるのか。それは観てのお楽しみ。
「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」(71)は、アメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)が選ぶ『アメリカ喜劇映画ベスト100』で第45位にランクインした、カルト的な人気のあるラブコメディ。狂言自殺を趣味にしたり、高級車を霊柩車に改造してしまう少年ハロルドは19歳。どこか社会を斜に見ている彼は、ある日アナーキーな性格で行動的な79歳の老婆モードと出会い、たちまち恋に落ちる。ハロルドはモードにプロポーズして、二人はベッドインもしてしまう。年の差60歳の恋愛コンビを描きながら、決してキワモノになっていないのが、ハル・アシュビー監督の手腕。またモードにはナチスの強制収容所にいた過去があり、それを示す囚人番号の刺青が、彼女の経てきた人生の年輪を感じさせる。演じたルース・ゴードンは「ローズマリーの赤ちゃん」(68)でアカデミー助演女優賞を受賞し、60代から花開いた遅咲きの名女優。この映画の当時は75歳で、若いハロルドに今を生きる人生の楽しさと、愛を教える女性を見事に演じた。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2025年2月号より転載)
BS松竹東急
BS260ch/全国無料放送のBSチャンネル
※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。
■2/5[水] 夜8時
「ハロルドとモード 少年は虹を渡る」
監督:ハル・アシュビー
出演:ルース・ゴードン、バッド・コート、シリル・キューザック ほか
© 1971 Paramount Pictures
■2/22[土] 夜9時
『必殺! 主水死す』
監督:貞永方久
出演:藤田まこと、三田村邦彦、中条きよし、名取裕子、津川雅彦 ほか
© 1996 松竹/松竹撮影所
■2/26[水] 夜8時
「ラッシュアワー」
監督:ブレット・ラトナー
出演:ジャッキー・チェン、クリス・タッカー、トム・ウィルキンソン ほか
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記事提供元:キネマ旬報WEB
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