優勝争い中にボールが“浮気”? 珍事発生も…思うようなゴルフをした4日間【全米シニア女子2位の山本薫里と対談・原田香里のゴルフ未来会議】
ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。そろそろみなさん日常モードに戻った頃でしょうか。新年はゆっくり過ごせましたか?
山本薫里さんとの対談第2弾をお届けします。いよいよ全米シニア女子オープンの優勝争いの話が、佳境に入ります。同じ試合に出場して24位タイとなった親友の大竹エイカさんも一緒の楽しいトークを引き続きお楽しみください。
■二人で予選突破、現地キャディとのタッグで出場
原田:そろそろ試合そのもののお話を聞きましょうか(笑)。初日から1打差単独首位発進で、4日間ずっと優勝争い。キャディはどなたがしたのですか?
山本:(大竹)エイカさんと、どちらか1人しか予選を通らなかったら(本戦に出られなかったほうが)キャディをする。2人とも通ったら、頑張って現地で雇おう、って話していて、2人とも通ったから、大会に頼んだのです。メールアドレスを教えてもらって連絡したんやけど、行き違いで…。
原田:そんなことあるんだ…。
山本:連絡が取れたときには、もう他の選手が決まっちゃっていた。2人目に来たダニエルさんがキャディでした。私、英語ができないから本戦までの間にゴルフ用語を勉強したんやけど、いざ、しゃべろうとしても思い出さん(笑)。
大竹:グーグルトランスレーターは使ってもOKってルールも確認していたんだよね。
山本:でも、ゴルフ用語じゃないので『上り(のライン)ですか?』って聞くと『上り坂ですか?』ってまるで登山しているような感じになっちゃって(笑)。結局、私が日本語を考えて入力しないといけなくて。それでもコミュニケーションを取ろうとしてくれるいい人でした。
■つい、つられるほど…。米国はアマチュアゴルファーも“えげつない”
原田:ゴルフの調子自体は?予選のあとずっとアメリカにいたのかな?
山本:45日間、ロサンゼルスのおうちに泊めていただいていて。日本人がオーナーのエンジェルスナショナルGCで練習させてもらっていました。プチ合宿みたいにしているうちに球が変わってきたし、芝も違うのに慣れて…。それが長持ちしてくれてよかったですね。クラブがよく振れるようになっていました。
大竹:うらやましいくらいよく振れていましたね。
山本:同じところで練習しているアマチュアのおっちゃんらが、すごいパワーで“えげつない”音鳴らしていたから、つられて振れるようになりました(笑)。
原田:歳を取ると、だんだん振りたくても振れなくなるのにね~。
山本:(試合では)最大限、振ろうと思って振りました。1年の照準をそこ(全米シニア女子オープン)に合わせているので「キタキタ~!」って思いましたね。
■緊張の最終日で起きた“和らぐ”ハプニング「ボールに浮気されます」
原田:2位に5打差の単独首位で迎えた最終日はどうだったの?
山本:(久保)樹乃ちゃん(3日目を終えて5打差の2位タイ)と一緒だったんですよ。それまでは日本語しゃべってないから、逆に気を使う(笑)。ティーショットを打ってダニエルに「ボール、左ラフかな」って聞いてグーグルトランスレーターで返事を見たら、なぜか「あなたのボールに浮気されます」って出て大笑い。「樹乃ちゃん、これ見て見て」って見せたりして。
大竹(爆笑しながら)これは私の想像なんですけど、“アフェアー(affair)”という浮気の言い方があるから、ダニエルが「May:be:left:fariway(多分左のフェアウェー)」って言ったがそう聞こえて訳したんじゃないかな(笑)。
原田:あははははは。じゃ、緊張感なかった?
山本:緊張はしました。
原田:普段は?
山本:していますよ。QT(予選会)はイヤな緊張だし。
原田:全米シニア最終日の緊張は?
山本:3日目は耐えて、耐えて、だったんです。最終日は樹乃ちゃんと一緒だったのでどこか安心感もありましたけど…。優勝、というよりも「2桁アンダーを目指そう」と思ってプレーしたんです。
原田:3日目終わって、7アンダーで2位タイの4人と5打差。最終日に3アンダーで回れば10アンダーになる。
山本:3日目はショットが乱れてきて、最終日はパットがいまいちでした。
原田:キャディさんとは?
山本:練習ラウンドでは距離が7~8ヤード違っていたから“答え合わせ“していました。ただ、1ホールだけダニエルの言うこと聞いちゃったんですよね。そこだけは後悔しています。14番で奥行き34ヤードの大きなグリーンの手前から19ヤード、左から6ヤードのところにピンが切ってあってアゲンストだったんです。9ウッドで風に負けてもいいや、くらいの気持ちで前の組を待っている間に、ダニエルが7ウッドを持ってくる(笑)。それも2回も。「そんなに言うんやったら」って7ウッドで打ったら、ピンに向かって行ったけどキャリーがピンの奥でグリーンオーバー。スジってるからベタピンに見えたみたいやけど「絶対奥や」って行って見たら奥のバンカー。ダニエルは「Oh…」ってなっていたけど…。でも他はラインを読んでもらったおかげで入ったのあったし、自分が思うようなゴルフができました。
■全米シニア女子OPに出て改めて感じた“ゴルフへの想い”
原田:リーダーボードは?
山本:あまりないんですよ。もうちょっとあったらよかったな、とは思いますね。ある瞬間から前の組がギャラリーさんで賑やかになったんです。てっきりアニカ(ソレンスタム:2位タイでスタート)が来たと思ったんやけど違った。
原田:優勝できなくて当然、悔しいと思うけど、総合的な感想は?
山本:円安でアメリカに長期滞在するのは不安しかなかったけど、行ってよかった。成績がよかったからそう思うのかもしれないけど、お金では買えない、かけがえのない経験を本当に沢山させてもらいました。一生の思い出です。日本人として爪痕を残して帰って来れたなと思いますので、今後の50オーバーの日本のシニア、世界のシニアの発展に繋がればいいなぁ〜なんて、大それた事を願っています。
原田:本当にそうですね。他には?
山本:アメリカってしんど~、ってことですね(笑)。西から東まで9時間もかかるし、国内線なのに荷物はロストする。移動は大変。日本はいい国やなって。アメリカでやっている人はすごいですね。ゴルフについては『すげーなアメリカ、スケールが違う』と思うけど、そのほかは日本のほうが好きです。
原田:ゴルフの環境はねぇ…。
山本:ゴルフは最高です。だから行きたい。
大竹:ゴルフがやりたい、というアツい人達ばっかりなんです。日本では「まだやってんの?」みたいな目で見られることが多くて「やっていてよかった」ってあまり思えない。でも、去年(2023年)に全米シニアに出て初めて「やっていてよかった」って思えましたからね。ちゃんと敬意を表してくれる。
山本:うんうん。
原田:それはうれしいね。
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