緊迫シーンでも笑顔だった女王 “日本勢の躍進”を予感させた全米女子OPのクライマックス【記者が見たベストバウト2024】
2024年もギャラリーを魅了する熱戦の数々が繰り広げられたゴルフ界。そのなかで記者が現地で心を揺さぶられた一戦を「ベストバウト」として紹介する。今回は6月の海外メジャー「全米女子オープン」。
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米北東部に位置するペンシルベニア州。この地に1900年に創設された歴史あるプライベートコース『ランカスター・カントリークラブ』が、今年の全米女子オープンの舞台だった。2015年以来、9年ぶりの同大会開催。この名門コースは今年、日本ゴルフ界にとって特別な地になった。
ここに今年参加した日本勢は日・米ツアーを主戦場にする21人。昨年の22人には及ばなかったが、日の丸が一大勢力だったことに変わりはない。現地での取材を担当した記者だが、思い出すのは、一日中“あっちいったり、こっちいったり”と、とにかくバタバタしていた毎日だ。ただ、思い返してみると、今後の米国ツアーでの日本勢のさらなる活躍を予感させる大会だったような気がする。
もちろん、ここでは笹生優花選手が2021年に続き2度目の全米タイトルを制覇し、渋野日向子選手が2位と“日本勢ワンツーフィニッシュ”を達成。さらに6位に古江彩佳選手、9位に小祝さくら選手、竹田麗央選手と日本勢の活躍が顕著だったため、そんな“予感”を抱いてもなんら不思議ではない。
ただ、その“予感”は結果を見たうえで…というよりは、選手たちのコースでの表情や言葉、そこに至るプロセスを見て湧き上がってきた感情、と言ったほうがしっくりとくる。試合後に渋野選手は「自分にとってもうれしい。またこれで日本が盛り上がるんじゃないかなと思います」と話していたのだが、確かにここから開けていく未来への期待があった。
それを強く感じたシーンのひとつが、優勝争いも佳境に入った16番パー4のティイングエリアでの光景。ここは実測239ヤードに設定され、1オンも狙えるホールで、選手たちはティグラウンドで多少の待ち時間を強いられた。それは小祝選手と一緒に回っていた笹生選手も同じ。しかし、その時の2人は、まるでリラックスしたような表情で、この日何度目かの“おしゃべり”の時間を楽しんでいた。一瞬、今が緊迫した優勝争い真っただ中、しかもメジャー大会での…ということを忘れさせるようなシーンでもある。
これでいい意味で肩の力を抜いたかのように、プレー再開後、再び鋭い視線に戻った笹生選手は「ピンが前に出ていたし、レイアップは難しいので狙うしかない」と3番ウッドを一閃し、見事1オンに成功。バーディを奪い、リードを広げた。
最終的に後続に4打差で18番を迎えた笹生選手は、落ち着いた様子で勝利を決定づけるパーパットを沈めるとグッと拳を握る。スタンドやグリーンを囲むファンからは惜しみない拍手と歓声が送られ、仲間たちからのウォーターシャワーで喜びを分かち合った。
前述した“リラックスタイム”が、どのように結果に結びついたかを断言することはできない。ただ、笹生選手は翌週の「ショップライトLPGAクラシック」の会場で、こんな話をしている。
「(ラウンド中)ずっと集中していると疲れる。気を抜いているわけではないけど、4時間も5時間もだまってラウンドするのは寂しいじゃないですか」
気心知れた仲間との会話は、緊張感が続くなかでの一服の清涼剤にもなっている。そして来年以降、その時間がさらに増えていく可能性も高い。
来年は、日本ツアーから竹田選手、予選会を勝ち抜いた山下美夢有選手、岩井明愛・千怜選手が最高峰舞台に挑戦する。日本勢は実に13人。竹田プロがオフの取材で、「一緒に回っていた選手がたくさんいるのは安心する」と話していたように、特にルーキー達にとって“ホーム感”が増すことはきっと追い風になるはず。さらに日本には、まだまだ“海外志向”を口にする選手が多く存在する。
そしてなにより、この優勝劇にはこんな側面も。全米女子オープンのラウンド後、最後の優勝シーンを見届けた西村優菜選手が「すごいな。刺激的です、すごく」と語ったり、渋野選手も「また優花を目指して頑張ります」と、笹生選手の2度目の女王襲名は、大きな影響を与えた。海外参戦への意思がないことを何度も明言している小祝選手でさえ、「自分ももっともっとレベルアップしたいと思うきっかけになった。また(全米に)帰って来たい」と話したほどだ。
この後、古江選手が「アムンディ・エビアン選手権」を制覇。山下選手も、先日行われたJLPGAアワードの席で、はっきりと「メジャー優勝」を目標に掲げた。仲間でありライバルとの“切磋琢磨”。日本勢の強い関係性を感じる場面を、きっと来年は見る機会も増えるはず。その“胎動”を感じさせる大会だった。(文・間宮輝憲)
<ゴルフ情報ALBA Net>
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