「アマチュアに熱視線」は、どのツアー?【舩越園子コラム】
PGAツアーのプレーヤー・オブ・ザ・イヤーとルーキー・オブ・ザ・イヤーは、受賞候補者数人がノミネートされた上で、選手投票で選び出され、年末に発表される。先週、それぞれの候補者がノミネートされたのだが、ルーキー・オブ・ザ・イヤーの候補に挙がったのは、ニック・ダンラップ、マックス・グレイザーマン、ジェイク・ナップ、マシュー・パボンの4名だった。
グレイザーマンは29歳、ナップは30歳、パボンは32歳。「新人賞候補」としては、いずれも年を重ねているのだが、今季の実績という意味で、新人賞レースで頭一つ抜け出しているのは、最年少20歳のダンラップだ。
ダンラップは今年1月に「ザ・アメリカンエキスプレス」をアマチュアにして制覇し、初優勝。その直後にプロ転向し、PGAツアーの正式メンバーとして戦い始めると、7月の「バラクーダ選手権」で再び勝利し、プロ初優勝と今季2勝目を達成。プレーオフシリーズでも第2戦の「BMW選手権」まで進み、フェデックスカップ・ランキング49位で今シーズンを終えた。そんなめざましい成長と活躍は、彼がスポンサー推薦を得てザ・アメリカンエキスプレスに出場できたことから始まったと言っていい。
ところで、先週のDPワールド(欧州)ツアーは、オーストラリアのメルボルンで「ISPSハンダ・オーストラリアオープン」が開催され、初日はアマチュアの中野麟太朗(早大3年)がホールアウト時点でいきなり首位に浮上。周囲を大いに驚かせた。
2日目は12位タイに後退したものの、海外のプロの大会では自身初の予選通過を果たし、自信を高めたのではないだろうか。決勝2日間はオーストラリア独特の強風や大観衆の熱気に少々惑わされた様子で、65位で終了。首位から最下位まで4日間で「幅広い動き」を見せた中野だが、世界の舞台で揉まれながらも、しっかりローアマに輝いたことは、彼の今後に必ずや生きるはずである。
この大会には毎年、日本のナショナルチームから男女各1名が出場できることになっており、中野もそのプログラムの一環で出場した。アマチュア選手が世界に挑む道が日本にも「開通」されていることは、とても意義深く、ありがたいことである。
10月に日本で開催された「アジア・パシフィック・アマチュア選手権」も、アマチュアが世界へ羽ばたく大きなチャンスの1つであり、中野は優勝に迫ったが、残念ながら中国のディン・ウェンイーに敗れ、3位に甘んじた。
優勝したディンには、来年のマスターズなどへの出場資格が授けられることになっていた。しかし、彼は夢のような優勝特典を結局は辞退。その理由は、今年6月にDPワールドツアーが中心となって新設した「グローバル・アマチュア・パスウェイ」でランキング1位になり、その特典であるDPワールドツアーのメンバーシップを受け取るために、すぐさまプロ転向したからだった。
今回、中野が挑んだオーストラリアオープンには、そのディンがプロとして出場し、見事、5位タイに食い込んだ。
こうして眺めてみると、現在はPGAツアーにもDPワールドツアーにもアマチュアが挑む道が設けられており、だからこそ、ダンラップもディンもアマからプロへの道を早々に進むことができた。そして中野も、今はこうした道の恩恵を得つつ、プロ転向を見据えている。
しかし、2026年からはPGAツアーにおけるスポンサー推薦の枠が大幅に狭められるため、ダンラップのようなパターンでツアーデビューできる新人は、ほぼ皆無になる。
一方で、DPワールドツアーには、ディンが活用した「グローバル・アマチュア・パスウエイ」があり、久常涼や星野陸也が活用した「ポイントランキングでトップ10入りできたらPGAツアー」という道も維持されている。さらに言えば、今回の中野のように「日本のナショナルチームから毎年男女1名が出場できる大会」も維持されており、同ツアーでは、アマチュアのための門戸が広がりつつある。
折りしも、LIVゴルフは「私たちは世界のトップアマを、くまなく眺めている」と言い切っている。そのLIVゴルフをサポートしているPIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」とDPワールドツアーがパートナーシップを見据えて直接交渉を開始したことも見逃せない動きと言えそうである。
タイガー・ウッズに続くビッグスターが、なかなか登場しないPGAツアーでは、これからは、より一層の少数精鋭化が進むと見られているが、その一方でDPワールドツアーやLIVゴルフはアマチュアや若い選手にラブコールを送っていることが、とても興味深い。日本のプロ予備軍たちの視線も、今後は「まず欧州」が定番となりそうな気配である。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
<ゴルフ情報ALBA Net>
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