山登りで新しい自分に…初心者でも大丈夫!更年期を乗り切る“登山のススメ”
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イチオシスト:イチオシ編集部 旬ニュース担当
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▲鈴木みきさん
50代に入り、時間ができた今だからこそ、登山を始めたい! そんな願望を持つ一方、山々の景色を妄想しては、「体力的に無理だろう…」と諦めてしまう中高年はきっと多いはず。『知っている山からはじめよう! 大人の日帰り登山』(講談社)を出版したイラストレーターの鈴木みきさんは、「今からでも決して遅くはない」と話します。
登山歴28年で“山ガール”ブームを盛り上げた立役者の一人である鈴木さんも、50代に突入。山を愛する鈴木さんに、その魅力、年を重ねてからの登山の楽しみ方を聞きました。
【動画】最高齢登頂!98歳スーパーおばあさん!富士山密着ドキュメント!
――登山を趣味にしている人は多いと思いますが、未経験者の立場からすると、「肉体的にもきつい、不測の事態で命を落とす危険性もあるのに、なぜ人は山に登るのか?」という疑問を感じてしまいます。山の魅力とは何なのでしょう?
「皆さん、気分転換になっているんじゃないかなと思います。自己鍛錬のために登る人もいますが、山へ行くと、心がスッキリします。
たしかに、山登りって大変なんですよ。ゆっくり歩いても苦しいし、翌日は足に疲れも出ます。でも、大変だからいいんです。誰にでもできることではないので、“登れた自分、偉いな”“私でもあそこまで行けた”“今回も無事に歩ききった”と思える。おそらく登山中は、登ることだけしか考えてなくて、日常を振り払い、その状態になることが大切なのかなと。
また山の中では、楽しさの中に、“何か出てくるかもしれない”“無事に帰れるだろうか”“ケがしないかな”など、常に緊張感があるんですね。そういう緊張感が多い分、脳にもいい刺激になり、デトックスのように感じる人が多いんじゃないかなと思います」
――なるほど。たしかに登っている時は緊張感がありそうですし、日常や日頃のストレスとは無縁になるかもしれないですね。特に初心者は、そんな余裕は絶対にない。
「そうですね。登り始めたら“疲れちゃったから、もう進まない”というわけにはいかないですよね。何とかしなければいけない状況って普段の生活ではあまりないし、自分の限界を超えることもなかなかない。毎回心身の限界ギリギリまで登る感覚がいいというか、翌日の筋肉痛も、どこかお土産みたいに思えてうれしいんですよ。筋肉痛が癒えてくると、また行きたいなぁと思う。ちょっとMっ気のある人が登山にハマるのかもしれないですね(笑)。自分を追い込んでご褒美をあげたい。登山者は、その繰り返しをしていると思います。最初は無理をして頂上に行かなくてもいいのかなとも思います」
――見たことのない景色や、自分と出会えそうな気がしてきました。鈴木さんの中で印象に残っている登山や、山で人生観が変わったことがあれば教えてください。
「印象に残っているのは、やっぱり初めての登山ですね。私は24歳の頃、カナダに行ってアウトドアに目覚めたというか、“山っていいな”と思ったんです。その時は体力も知識もなかったんですけど、体当たりで登った感覚、突破した自分が忘れられません。
そんなことをするタイプじゃなかったのに、新しい世界が開けたという感覚って、初心者のうちしか味わえないと思うんですよね。その気持ちを味わいたくて、だんだん登る山が高くなったり、難しくなっていったりする。
自分の登山レベルが上がると、挑戦する山も険しくなっていくのが登山者あるあるだと思いますが、私はカナダの山を突破して日本に帰ってきて、今度は日本の山を登ろうと思って、山小屋で働いた時期もありました。そんな人生を歩むとは思っていなかったので、自分の中ではすべてが“突破”でした。
登山を続けていくうちに、3000m級の山に登る、一人でテントを持って登るというようなターニングポイントがあり、そういう登山はどれも印象深いですね」
――鈴木さんは、元々壁を乗り越えたい、積極的に何かに挑戦したいと考えるタイプだったのでしょうか。
「登山を始めるまでは、そうではありませんでした。私はいつも、何かしら言い訳をして物事をやめてしまうタイプで、10代の頃からそういう自分が嫌でした。“何かやりたい”と思っているだけで、何もアクションを起こせない自分にジレンマのようなものを感じていたんです。
カナダに1年ぐらい行ったことがそもそも突破だったんですけど、旅をして山と出会って変わったという意識はあります。日本に帰ってきてからは、ずっと山との人生。登り始めてからは、“自分も頑張れば突破できる”と分かってきたので、あらゆる場面でチャレンジすることが好きになったかもしれません」
――新たな自分を発見したんですね!
「山に登るようになって、“こういう自分になりたい”というモヤモヤしたものが吹っ切れました。“自分はやればできる”と分かっているだけで、精神的にも楽になります」
――鈴木さんも50代だそうですが、中高年がこの先の人生を楽しむ上で、何かアドバイスはありますか?
「何かのきっかけで山に興味を持ってもらえたのであれば、ぜひその興味を止めずに挑戦していただきたいですし、山以外のことでもいいので、興味を持ったら始めてみてください。
何かを始める時のきっかけって、重なると思うんです。例えば、山に行ってみたいと思って友達と話していたら、お互いに山に興味があることが分かったとか。そういう偶然がいくつか重なったら、これはもう運命だと感じて行った方がいい。そういうタイミングって、その時につかまないと逃げてしまうから。
50代に入ると、急に忘れっぽくなって、やりたいと思ったことすら忘れてしまうので、どうか覚えているうちに(笑)。“もう50過ぎだし…”と年齢が気になるかもしれませんが、山の情報を調べるだけでもいいと思いますし、階段を上るようにするとか、一歩でも半歩でも踏み出してもらって、自分がこれからでも変われるという感覚を持っていただきたいですね。
あと、皆さんの居場所として家庭や仕事場があると思うのですが、もう一つ、サードプレイスを持つといいのではないでしょうか。しがらみがなく本音が言える場所が必要で、つまりはそれが“趣味”なんじゃないかと。
アイドルの推し活、よく飲みに行くバーでもいいので、そういう場所をいくつか持っておく。仕事を辞めても家庭だけにならず、他の世界を持っていたら、寂しくないですよね。その一つとして山を加えてもらえたら…というのが、私から皆さんへのお願いです」
――更年期に入ると気分が落ち込むことも。山登りで解消されることはあるのでしょうか。
「体を動かすと思考が前を向いて、体だけでなく心にもいいと思います。近くの小さな山でいいので、ぜひ始めてみてください。私は親の介護で東京に戻ってきて1年半ぐらいになりますが、1年前は親のことで手一杯で、山にも行けないし、運動もできませんでした。たまに知人がハイキングに連れて行ってくれるくらいで、本格的な登山に行ったのは1、2回なんですけど、その代わりに区民プールに通って水泳を始めたら、メンタルが前向きに変わったような気がします」
――最後に、これから登山を始めたいと思っている中高年に向けてメッセージをお願いします。
「もう50代と思うかもしれませんが、80代の人でも元気で登っています。1カ月に1回は山に行き、続けている人は、80代になっても登れます。半年ぐらい空くと、中高年は自信がなくなってしまうと思うので、3カ月に1回ぐらいは山登り、山歩きを続けていただければ、死ぬまで登れます。今からでも、まだ25年、30年で登れるわけですから…先は長いし、ずっと楽しめます。50代、まだまだ伸びしろありますよ! 皆さん、自分の突破力に気付いていないだけですから」
▲『知っている山からはじめよう! 大人の日帰り登山』(講談社)
【鈴木みき プロフィール】
1972年東京生まれ。イラストレーター、執筆家。山小屋のアルバイトや山雑誌での読者モデルを経てイラストレーターに。自らの登山経験を描いたコミックエッセイを発表し人気を集め、登山同行ツアーや講演など幅広く活躍している。2017年から北海道札幌市在住。2018年の北海道胆振東部地震での在宅避難経験を機に、防災士の資格を取得した。著書に『日帰り登山のススメ あした、山へ行こう!』『地図を読むと、山はもっとおもしろい!』(ともに講談社)、『中年女子、一人で移住してみました:仕事・家・暮らし 無理しすぎない田舎暮らしのコツ』(平凡社)、『キャンプ気分で始める おうち防災チャレンジBOOK』(エクスナレッジ)など多数。
(取材・文/伊沢晶子)
50代に入り、時間ができた今だからこそ、登山を始めたい! そんな願望を持つ一方、山々の景色を妄想しては、「体力的に無理だろう…」と諦めてしまう中高年はきっと多いはず。『知っている山からはじめよう! 大人の日帰り登山』(講談社)を出版したイラストレーターの鈴木みきさんは、「今からでも決して遅くはない」と話します。
登山歴28年で“山ガール”ブームを盛り上げた立役者の一人である鈴木さんも、50代に突入。山を愛する鈴木さんに、その魅力、年を重ねてからの登山の楽しみ方を聞きました。
【動画】最高齢登頂!98歳スーパーおばあさん!富士山密着ドキュメント!
普段の生活では体験できない緊張感が、適度な刺激に
――登山を趣味にしている人は多いと思いますが、未経験者の立場からすると、「肉体的にもきつい、不測の事態で命を落とす危険性もあるのに、なぜ人は山に登るのか?」という疑問を感じてしまいます。山の魅力とは何なのでしょう?
「皆さん、気分転換になっているんじゃないかなと思います。自己鍛錬のために登る人もいますが、山へ行くと、心がスッキリします。
たしかに、山登りって大変なんですよ。ゆっくり歩いても苦しいし、翌日は足に疲れも出ます。でも、大変だからいいんです。誰にでもできることではないので、“登れた自分、偉いな”“私でもあそこまで行けた”“今回も無事に歩ききった”と思える。おそらく登山中は、登ることだけしか考えてなくて、日常を振り払い、その状態になることが大切なのかなと。
また山の中では、楽しさの中に、“何か出てくるかもしれない”“無事に帰れるだろうか”“ケがしないかな”など、常に緊張感があるんですね。そういう緊張感が多い分、脳にもいい刺激になり、デトックスのように感じる人が多いんじゃないかなと思います」
――なるほど。たしかに登っている時は緊張感がありそうですし、日常や日頃のストレスとは無縁になるかもしれないですね。特に初心者は、そんな余裕は絶対にない。
「そうですね。登り始めたら“疲れちゃったから、もう進まない”というわけにはいかないですよね。何とかしなければいけない状況って普段の生活ではあまりないし、自分の限界を超えることもなかなかない。毎回心身の限界ギリギリまで登る感覚がいいというか、翌日の筋肉痛も、どこかお土産みたいに思えてうれしいんですよ。筋肉痛が癒えてくると、また行きたいなぁと思う。ちょっとMっ気のある人が登山にハマるのかもしれないですね(笑)。自分を追い込んでご褒美をあげたい。登山者は、その繰り返しをしていると思います。最初は無理をして頂上に行かなくてもいいのかなとも思います」
山登りは自分を変えるチャンス
――見たことのない景色や、自分と出会えそうな気がしてきました。鈴木さんの中で印象に残っている登山や、山で人生観が変わったことがあれば教えてください。
「印象に残っているのは、やっぱり初めての登山ですね。私は24歳の頃、カナダに行ってアウトドアに目覚めたというか、“山っていいな”と思ったんです。その時は体力も知識もなかったんですけど、体当たりで登った感覚、突破した自分が忘れられません。
そんなことをするタイプじゃなかったのに、新しい世界が開けたという感覚って、初心者のうちしか味わえないと思うんですよね。その気持ちを味わいたくて、だんだん登る山が高くなったり、難しくなっていったりする。
自分の登山レベルが上がると、挑戦する山も険しくなっていくのが登山者あるあるだと思いますが、私はカナダの山を突破して日本に帰ってきて、今度は日本の山を登ろうと思って、山小屋で働いた時期もありました。そんな人生を歩むとは思っていなかったので、自分の中ではすべてが“突破”でした。
登山を続けていくうちに、3000m級の山に登る、一人でテントを持って登るというようなターニングポイントがあり、そういう登山はどれも印象深いですね」
――鈴木さんは、元々壁を乗り越えたい、積極的に何かに挑戦したいと考えるタイプだったのでしょうか。
「登山を始めるまでは、そうではありませんでした。私はいつも、何かしら言い訳をして物事をやめてしまうタイプで、10代の頃からそういう自分が嫌でした。“何かやりたい”と思っているだけで、何もアクションを起こせない自分にジレンマのようなものを感じていたんです。
カナダに1年ぐらい行ったことがそもそも突破だったんですけど、旅をして山と出会って変わったという意識はあります。日本に帰ってきてからは、ずっと山との人生。登り始めてからは、“自分も頑張れば突破できる”と分かってきたので、あらゆる場面でチャレンジすることが好きになったかもしれません」
――新たな自分を発見したんですね!
「山に登るようになって、“こういう自分になりたい”というモヤモヤしたものが吹っ切れました。“自分はやればできる”と分かっているだけで、精神的にも楽になります」
――鈴木さんも50代だそうですが、中高年がこの先の人生を楽しむ上で、何かアドバイスはありますか?
「何かのきっかけで山に興味を持ってもらえたのであれば、ぜひその興味を止めずに挑戦していただきたいですし、山以外のことでもいいので、興味を持ったら始めてみてください。
何かを始める時のきっかけって、重なると思うんです。例えば、山に行ってみたいと思って友達と話していたら、お互いに山に興味があることが分かったとか。そういう偶然がいくつか重なったら、これはもう運命だと感じて行った方がいい。そういうタイミングって、その時につかまないと逃げてしまうから。
50代に入ると、急に忘れっぽくなって、やりたいと思ったことすら忘れてしまうので、どうか覚えているうちに(笑)。“もう50過ぎだし…”と年齢が気になるかもしれませんが、山の情報を調べるだけでもいいと思いますし、階段を上るようにするとか、一歩でも半歩でも踏み出してもらって、自分がこれからでも変われるという感覚を持っていただきたいですね。
あと、皆さんの居場所として家庭や仕事場があると思うのですが、もう一つ、サードプレイスを持つといいのではないでしょうか。しがらみがなく本音が言える場所が必要で、つまりはそれが“趣味”なんじゃないかと。
アイドルの推し活、よく飲みに行くバーでもいいので、そういう場所をいくつか持っておく。仕事を辞めても家庭だけにならず、他の世界を持っていたら、寂しくないですよね。その一つとして山を加えてもらえたら…というのが、私から皆さんへのお願いです」
――更年期に入ると気分が落ち込むことも。山登りで解消されることはあるのでしょうか。
「体を動かすと思考が前を向いて、体だけでなく心にもいいと思います。近くの小さな山でいいので、ぜひ始めてみてください。私は親の介護で東京に戻ってきて1年半ぐらいになりますが、1年前は親のことで手一杯で、山にも行けないし、運動もできませんでした。たまに知人がハイキングに連れて行ってくれるくらいで、本格的な登山に行ったのは1、2回なんですけど、その代わりに区民プールに通って水泳を始めたら、メンタルが前向きに変わったような気がします」
――最後に、これから登山を始めたいと思っている中高年に向けてメッセージをお願いします。
「もう50代と思うかもしれませんが、80代の人でも元気で登っています。1カ月に1回は山に行き、続けている人は、80代になっても登れます。半年ぐらい空くと、中高年は自信がなくなってしまうと思うので、3カ月に1回ぐらいは山登り、山歩きを続けていただければ、死ぬまで登れます。今からでも、まだ25年、30年で登れるわけですから…先は長いし、ずっと楽しめます。50代、まだまだ伸びしろありますよ! 皆さん、自分の突破力に気付いていないだけですから」
▲『知っている山からはじめよう! 大人の日帰り登山』(講談社)
【鈴木みき プロフィール】
1972年東京生まれ。イラストレーター、執筆家。山小屋のアルバイトや山雑誌での読者モデルを経てイラストレーターに。自らの登山経験を描いたコミックエッセイを発表し人気を集め、登山同行ツアーや講演など幅広く活躍している。2017年から北海道札幌市在住。2018年の北海道胆振東部地震での在宅避難経験を機に、防災士の資格を取得した。著書に『日帰り登山のススメ あした、山へ行こう!』『地図を読むと、山はもっとおもしろい!』(ともに講談社)、『中年女子、一人で移住してみました:仕事・家・暮らし 無理しすぎない田舎暮らしのコツ』(平凡社)、『キャンプ気分で始める おうち防災チャレンジBOOK』(エクスナレッジ)など多数。
(取材・文/伊沢晶子)
記事提供元:テレ東プラス
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