大谷翔平選手の亜脱臼で蘇った苦い思い出【山本萩子の6-4-3を待ちわびて】第138回
選手のケガについて語った山本キャスター
まずはロサンゼルス・ドジャースとチームに関わるすべてのみなさま、ワールドシリーズ優勝、本当におめでとうございます。満身創痍とも言えるなか、総力戦とチーム力の高さで頂点に輝く姿に胸を打たれました。
大谷選手が海を渡ってから、もう7年が経ったんですね。チャンピオンリングを渇望してエンゼルスを出て、名門ドジャースの門を叩いたときは、すぐにここまで大活躍するとは思いませんでした。レギュラーシーズンで残した54本塁打59盗塁という偉大な記録も、しばらく破られることはないでしょう。
そんな大谷選手ですが、ヤンキースとのワールドシリーズ第3戦で、盗塁の際に左肩を亜脱臼するアクシデントに見舞われます。監督やチームメイトはもちろん、敵地のファンもその様子を見守りました。「大きなケガではない」という報道もあり、翌日も試合に出場するかどうか注目を集めました。
腕をかばいながら翌日の試合にフル出場した様子を見て、試合にかける並々ならぬ意気込みを感じたのは私だけではないでしょう。それ以降の試合では、本来の力を存分に発揮できたとは言えないかもしれませんが、最後までスタメンとして世界一に貢献しました。
私はその光景に感動すると同時に、実は「あまり無理してほしくないな」とも思いました。情熱を優先し、無理をして本当に致命的なことになったら......球界の大きな損失になってしまうのではないかと。
そう思ったのは、苦い思い出があるからです。
パドレスにタティスJr.という選手がいます。今年のポストシーズンでの活躍が記憶に新しいという方も多いでしょう。
もともとはリーグを代表する遊撃手でしたが、2021年の試合中、持ち前のフルスイングをした際に肩の亜脱臼を発症。その後も試合に出続けるものの、3度の再発を経て結局は2022年のオフに手術を行ないました。
チーム状況や守備負担の軽減を考慮し、外野にコンバートされます。オールMLBにも選出される輝かしい実績を持った遊撃手でしたから、もっとその守備を見たかった、というのが本音です。
今日はLAロゴのキャップを被って出かけようと思います。みなさんの思うMVP選手も教えてくださいね。
ケガは選手生命を縮める大きな要因です。ただ、メジャーリーグは選手の安全を第一に、ケガ防止に努めてきました。
有名なところでは、2014年に採用された(日本のプロ野球は2016年に採用)コリジョンルール。本塁での衝突を防止するための規則ですが、昔のプレー映像を見ると、明らかに走者が捕手にわざと当たりにいった場面もありますよね。今見ると「危ないな」と思います。ルールを改正するのは、アスリートは体が資本であることを理解しているからです。
日本のプロ野球では、かつて「鉄人」と呼ばれた選手がいました。連続試合出場世界記録を残した元広島の衣笠祥雄さんや、死球で左手首を骨折した数日後にホームランを打った金本知憲さんなどですね。
最近では医療技術も向上したので、ケガから復帰するまでの期間が短くなりました。たとえば、かつてトミー・ジョン手術は一世一代の大手術でしたが、現在では大学生でも受けるくらいの手術になっています。
それでもやはり、アスリートにとってのケガは失職につながる大きなものです。私たちには理解しづらい感覚もしれません。
近年では、昨年からメジャー導入されたピッチクロックが議論になっています。投手のヒジのケガが多く、それは投球間隔が短くなったのが原因のひとつかもしれない、と言われているのです。これは今後も協議されることでしょう。
あらためてドジャースの世界一をお祝いすると共に、この先もすべての選手がケガなく、最高のパフォーマンスを見せられることを願って、今日は筆をおきたいと思います。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作
記事提供元:週プレNEWS
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