「ボールに当たらない」悩みは9番アイアンで解決! ゴルフ初心者のための“超”やさしいゴルフ講座【岸部華子のアイアンレッスンVOL.1】
「ゴルフを始めたいけど、覚えるのに時間がかかりそう」「そもそも何から覚えればいいか分からない」。そんな初心者ゴルファーのために、スイングの基本の“キ”を分かりやすく解説します。まだクラブを握ったことがないという人はもちろん、「少し練習をしたけど、なかなか上手くならない」という人も、これを読めば確実にボールが前に飛ぶようになるはず。今回は、9番アイアンを使って、アイアンの構え方と打ち方を紹介します。
1.構え(アドレス)の基本
ゴルフではボールを打とうとして構えることをアドレスといいます。
基本的にクラブでボールを打つスポーツなので、アドレスはそれほど重要ではないと思っている人もいるようですが、このアドレスで上手くいくかどうかがほぼ決まるといわれています。その証拠に、プロゴルファーたちは日々の練習で、常にアドレスをチェックしています。
上達するためにも、まずは正しいアドレスを身に付けましょう。
正しい姿勢
ゴルフでは、前傾姿勢といって、上体を少し前に傾けて構えます。まずはその姿勢の作り方から紹介しましょう。
真っ直ぐ立った状態で、股関節(足の付け根辺り)から上体を前に倒します。これが正しい前傾姿勢です。スイングでは、股関節に力が入っていなければいけないのですが、このようにして構えると股関節に力が入ります。
そのためにも股関節から前傾するというのは重要です。最初は股関節にクラブを当てがい、股関節を折ることを覚えましょう。
このとき、背中を真っすぐにしておくことも大事です。丸まったり、反るような形になるとケガをしやすくなるので注意しましょう。
なお、前傾の深さは、両手が鉛直方向に下りる深さが基準となります。
また、前傾姿勢を作ったあと、お尻を少し持ち上げるようにするのもポイント。お尻が後ろに落ちないようにしてください。そのためにも、体重を母指球辺りにかけるといいでしょう。前のめりになり過ぎるのは良くありませんが、カカト体重になるのは絶対に避けてください。
グリップとは、両手でクラブを握ること。ちなみにクラブを握る部分もグリップといいます。
グリップにはさまざまな種類がありますが、両手で握ったとき、右手の小指を左手の人差し指と中指の間に乗せる「オーバラッピング」と、右手の小指と左手の人差し指を絡める「インターロッキング」がその代表格です。
どちらで握るかはそれぞれの好みですが、最初は力が伝わりやすいインターロッキングで握ることをオススメします。
握る手順
前傾姿勢を作ったら、上体の力を抜いて両腕をダランと垂らします。そうすると、両ヒジが外側を向き、両手の手のひらが向き合う形になります。その向きをキープしたまま、まず左手でクラブを横から握ります。
握ったとき、左手の親指と人差し指とでできる「V」が右肩を向いていれば正しく握れている証拠。「V」の向きはしっかりチェックしてください。
そしてこのとき、正面から見て人差し指と中指のナックル(手の付け根の関節)が見えているのが理想です。
また、左手は中指、薬指、小指を強めに握ることが大事。インターロッキングでは、人差し指は浮いた状態になりますが、親指もあまり強く握らず、中指からの3本でしっかり握るようにしましょう。
一方、右手も左手同様、ダランとした状態で、横から握ります。そして、親指と人差し指でできる「V」が右肩を向くようにします。つまり両手とも「V」が右肩を向いていればOKです。
強く握るのは、中指と薬指。親指と人差し指は引っかける程度にします。
握る強さ
グリップは強く握らないというのも大きなポイントです。強く握り過ぎると体に力が入り、スムーズにスイングできなくなるからです。
力加減としては、ギュッと握るのが100パーセントだとしたら、30パーセント前後。ただ、左手はやや強めに(50パーセント)握り、右手は弱めに握りましょう。
クラブを握る位置
握る位置は、長過ぎず、短過ぎない長さがベスト。長く握り過ぎるとクラブを操作しにくくなるので、グリップエンドから指2本分くらい離して握るようにするといいでしょう。
スタンス
足幅(スタンス幅)は、肩幅が基準です。アイアンは基本的に同じスタンス幅で構えましょう。
ツマ先は、右足はほぼ真っすぐ。左足は体が回転しやすいように、少しだけ開きましょう。なお、体が硬くて、バックスイングで体が回らない人は、右ツマ先も少し開いても構いません。
体の向き
アドレスでは、ターゲット(目標)ライン(ボールを打ち出す方向の線)と平行に立つことも大事です。構えたら、肩、腰、足のラインがターゲットラインと平行になっているかどうかをチェックしましょう。
また、ボールが飛び出す方向はフェースの向きで決まるので、フェース面は目標に向けるようにしましょう。意外とこれができていない人が多いので、特に注意してください。
ボールは、アイアンの場合、ほぼ中央に置きます。クラブの種類によって、長いものは少し左足寄りに置くという考え方もありますが、最初は真ん中で固定しましょう。その方が位置のズレが起きにくくなります。
また、ボールは、メーカーのロゴが見えるようにセットするといいでしょう。これはスイングの話になりますが、そのロゴを見続けてスイングすると、頭の位置が動かず、軸もキープできるからです。
体とボールとの距離
ボールとの距離はクラブを握る位置で確認します。基本的に、グリップエンドと体との間に握りこぶしが1個入るくらい。クラブを握るとき、「両手をダラリと下ろしましょう」といいましたが、そうするとだいたいこの位置になります。ここが最も力が伝わる位置なので、手元が体に近づき過ぎたり、離れ過ぎたりしないようにしましょう。
左右の重量配分
左右の体重配分は、構えたとき、左右均等になっているのが基本です。クラブを振り上げたとき(トップ)、右7対左3になり、クラブを振り終わったとき(フィニッシュ)では右1対左9になりますが、最初は5対5で構えます。
初心者には最初から右足体重になっている人が多いのですが、そうするとインパクトで、アドレスの位置にヘッドが戻ってこなくなります。まずは5対5で立つことを覚えましょう。
スイングは、大きく「テークバック(バックスイング)」「トップ」「切り返し」「ダウンスイング」「インパクト」「フォロースルー」「フィニッシュ」という動きに分かれます。
すべて一連の流れの中で行われ、一つ一つが止まった動きではありませんが、各ポイントでどのような動きになっているのがいいかということを確認しておきましょう。
スイングを行う上で最も意識して欲しいのは、体と手の動きを合わせることです。ゴルフではこのことを「同調」といいますが、最初にこの動きを身に付けておけば、上達が早くなります。一方、最初にバラバラのスイングを覚えてしまうと、正しい動きに戻すのが難しくなります。スイング中は常に、同調を意識しながら体を動かすようにしてください。
アドレスの静止状態からクラブを動かし始める動きで、レッスンでは、「テークバックの始動」という言い方をします。
ここで大事なのは、さきほども話した同調です。始動の時点で体の動きが先行したり、手だけが先に上がって体と手の動きがバラバラになると、最後まで同調が生まれず、クラブの動きが安定しなくなります。少なくともクラブが、時計の針で8時くらいになるまでは、体と手の動きがズレないように意識しましょう。
それを実現するためには、お腹の力で始動することが大事です。そうすれば、それぞれが勝手な動きをしなくなります。くれぐれもヘッドを遠くに動かそうとしたり、手でヒョイと上げたりしないように。特に、ヘッドをヒョイと上げる動きが身に付いてしまうと、なかなか直りにくくなるので注意してください。
また、始動の時点でフェースを開かないようにすることも大事です。フェース面をボールに向けたままクラブを上げていきましょう。
トップ
スイング中、クラブが最も高く上がったときのことをトップといいます。
トップで大事なのは、無理に上げ過ぎないこと。軽くワキを締めて体を回すと、手元が肩の高さ辺りで止まります。トップはこの高さでOK。これ以上上げようとすると、手で動かすことになってしまい、元に戻すのが難しくなってしまうからです。
トップは最初から、肩の辺りで止めるぐらいの意識でいいでしょう。トップが大きいからといって飛距離が伸びるわけではありません。コンパクトなスイングにした方が、その分、ボールを芯で捉えられるようになり、飛距離が伸びる場合があります。
切り返し
トップからクラブを振り下ろす瞬間の動きを切り返しといいます。
切り返しで大事なのは、右ワキが空かないようにすることと、右手首の角度をキープすること。トップでの右手首の角度を保ったまま、右ヒジを右ワキ腹に付けるようなイメージで振り下ろします。
切り返し~インパクトまでの動きをダウンスイングといいます。
切り返しでは、右ワキの締めと右手首の角度のキープが大事だといいましたが、ダウンスイングでも意識するポイントは同じ。手首が早めに伸びないように注意しながら、右ヒジを右ワキ腹に付けたままクラブを振り下ろします。
クラブを振るというよりは、正しい形を保ったまま体を回していくようにしましょう。
インパクト
ヘッドがボールに当たる瞬間のことをインパクトといいます。
インパクトは、ボールの飛び出す方向が決まる大事なポイント。フェースが右を向いていたら(フェースが開く)、ボールは右に飛び出すし、左を向いていたら(フェースが閉じる)、ボールは左に飛び出します。
しかし、だからといってフェース面を真っすぐに当てようとする必要はありません。そもそもこの時点で、ヘッドのスピードも最高潮に達しているので、フェースの向きを操作するのは不可能です。
それよりも、ターゲットを意識して、体の回転とともに左側に振り抜くようにしましょう。その方が、ボールが真っすぐ飛ぶ確率は高くなります。ボールにフェース面を合わせる動きは厳禁です。
フォロースルー
インパクト以降の動きをフォロースルーといいます。
ここではインパクトの流れから、ターゲットに向かってボールを飛ばす意識で振り抜きましょう。
フォロースルーが小さいと飛距離が落ちるし、早めに手首を折ることによってフェースがかぶって左に曲がる危険性も出てくるので、とにかく大きく振り抜くことが大事です。
フィニッシュ
スイングの最後の形をフィニッシュといいます。
フィニッシュで大事なのは、体重が右に残らないことです。しっかり下半身を使って体重移動を行いましょう。フィニッシュでは右足の裏が見えるのが正しい形。左足1本で立てるくらい、左足に重心を移しましょう。
3.練習ドリル
最後に、スイングを作るための練習方法を紹介します。
タオルを両脇に挟んで、フルスイングの半分の振り幅(ハーフスイング。正面から見て、時計の針の9時~3時の振り幅)で、ターゲットに向かってボールを打つ練習です。ターゲットは、ハーフショットで着弾する距離でOK。これをすることによって、手と体とが同調したスイングが自然と身に付きます。
また、この練習をいつも同じテンポでやることも大事です。テンポの基準は、メトロノームで64~68BPMの速さになります。ですが、最初はゆっくりしたテンポで始め、自分のテンポをつかんだら、常にそれをキープして打ちましょう。
このドリルは、スイングの基本を作る練習なので、ドライバーやフェアウェイウッド、ユーティリティのスイング作りにも役立ちます。少しの時間でもいいので、毎練習ごとにやるようにしましょう。
4.まとめ
ゴルフに限らず、全てのことにおいて基礎は大事です。言い換えれば、基礎をしっかり身に付ければ、確実に上達するし、上達のスピードも早くなります。今回紹介したのは、全ての人に通じる基本中の基本です。まずは、しっかり基本を覚えることからスタートしてください。
指導・岸部華子
きしべ・はなこ/1995年生まれ、福島県出身。姉はツアープロの岸部桃子(2歳上)。6歳からゴルフを始め、07年に『東北ジュニアゴルフ選手権 女子11歳以下の部』で優勝。高校時代は、東日本国際大学付属昌平高ゴルフ部に所属。21年にLPGAティーチングA級を取得した。現在は、横田英治が主宰する『クラブハウス』に所属して、アマチュアゴルファーを指導。ときどき姉のツアーキャディも務める。
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